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SPAC (特別目的買収会社) 企業の倒産が増加傾向

SPAC (特別目的買収会社) 企業の倒産が増加傾向

2020年の COVID で始まった金融相場を背景に一大ブームとなった、SPAC (特別目的買収会社) は「白紙委任会社」とも呼ばれ、裏口上場的な手段で未公開企業の買収や合併を唯一の目的として、資本調達のために上場するものです。

低金利環境による SPAC ブーム

これにより、民間企業は従来の新規株式公開 (IPO) ではなく、逆合併によって株式を公開することができます。SPAC ブームの背景には、2020年、パンデミックによる景気後退に対抗するため、世界中の中央銀行が低金利政策を実施しました。このような環境下、投資家は代替的な投資機会を求めるようになり、SPAC は潜在的に有利な選択肢と見なされました。

2020年のSPACブームにより、SPAC上場件数や資金調達額は急増しました。しかし、上場する企業の質、過大な評価、SPACスポンサーの潜在的な利益相反に対する懸念から、規制当局の監視と批判を集めることにもなりました。

低金利の時は一大ブームとなった SPAC ですが、金融政策が変更となり高金利環境が到来すると、SPAC 上場した企業の倒産件数も増加傾向にあります。高金利環境が長く続くことで、SPAC 企業は倒産や財政難に陥る可能性が高くなります。

高金利環境で SPAC 企業は資金調達が難しくなる

FRBによる利上げにより高金利環境が続いたことで、スタートアップなどの企業が成長するための必要な資金調達が困難になり、成長が遅れたり資金繰りにどん詰まり倒産する企業が玉突き事故のごとく増えることが懸念されます。

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・資金調達が難しくなる

高金利環境は、投資家が資金を借り入れ、SPAC のような投機的な機会に投資することをより高価にします。このため、SPAC の株式に対する需要が減少し、買収や合併を完了するために必要な資金を調達することが難しくなります。

・資本コストの上昇

金利の上昇は、SPACとそのターゲット企業の双方にとって資本コストの上昇につながります。金利の上昇は、SPACとターゲット企業の双方にとって資本コストの上昇につながり、合併による潜在的な利益を上回るコスト増となるため、買収の魅力が半減する可能性があります。場合によっては、資本コストの上昇により、SPACが買収資金を調達することが困難になる可能性もあります。

・対象企業への圧力

高金利は、SPACが買収を検討している未公開企業にも財務的な圧力をかける可能性があります。これらの企業は、借入コストの上昇に直面し、収益性や成長見通しに影響を与える可能性があります。その結果、これらの企業は、SPACにとって魅力的なターゲットではなくなるか、合併の財務要件を満たすことができなくなる可能性があります。

・バリュエーションの低下

金利が上昇すると、資本コストの増加および将来キャッシュ・フローに適用される割引率の上昇により、株式市場における企業の評価にマイナスの影響を与える可能性があります。その結果、SPACとターゲット企業の両方の評価が下がり、合併の条件について相互に有益な合意に達することが難しくなる可能性があります。

高金利環境下では、SPAC とそのターゲット企業の双方にとって、債務不履行のリスクが増大します。このようなリスクの高まりは、SPACが買収のための資金を確保したり、既存の債務を借り換えたりすることを困難にし、倒産の可能性を高める可能性があります。現に、2021年〜2023年に破産申請した SPAC 企業は12社と増加傾向にあります。

破産したSPAC企業

Legacy Enjoy Inc (ENJY) ソフトウェア/テクノロジー
Kalera Public Limited Company (KAL) 農業関連
Fast Radius Inc (FSRD) ソフトウェア/テクノロジー
Quanergy Systems Inc (QNGY) IT/通信
Starry Group Holdings Inc (STRY) 通信
Core Scientific Inc (CORZ) ソフトウェア/テクノロジー
Latin Metals Inc (LMS) マテリアル
Clarus Therapeutics Holdings (CRXT) ヘルスケア
Virgin Orbit Holdings Inc (VORB) 宇宙関連
Boxed Inc (BOXD) 消費財
Pear Therapeutics Inc (PEAR) バイオ
Rockley Photonics Holdings (RKLY) テクノロジー

2023年に破産申請したデジタルセラピーデベロッパーの Pear Therapeutics は、SPACの合併後に急成長を予想していたが、期待に反して、成長率を達成できずに破産した。宇宙SPAC初の破産申請となった Virgin Orbit は、2022年1月のロケット打上げ失敗から回復するための資金調達に失敗したことが原因とされている。

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