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【2023】宇宙SPAC企業に冬到来

【2023】宇宙SPAC銘柄に冬到来

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2023年3月10日以降に続いた米銀行3行の破綻で、じわじわとFRBの利上げがチャラついた銀行やテック界隈にボディーブローのように効いていたことが明るみになりました。

特に破綻の口火を切ったシリコンバレー銀行 (SVB) は、近辺のスタートアップのエコシステムとも深い関わりがあり、以降これらのスタートアップ企業は融資を受けることができなくなると予想されます。

これにより、スタートアップが成長するための必要な資金調達が困難になり、成長が遅れたり資金繰りにどん詰まり倒産する企業が玉突き事故のごとく増えることが予想されます。

その震源地となりそうなのが、2020年の金融相場以降にSPAC上場した数々のSPAC企業です。Zoomy では過去記事でも、もし不況が来た際にどの宇宙SPAC企業が生残るのか?といった記事を紹介してきましたが、改めて現状を確認したいと思います。

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SPAC株に冬到来

まず今後起こることとして、投資管理会社ブリッジウォーターアソシエイツ創業者レイ・ダリオ氏は、シリコンバレー銀行の破綻の後に起こることについて触れています。

今はキャッシュフローがマイナスになっているようなベンチャー企業や非上場企業、そして商用不動産会社などの、高金利と金融引き締めが受け入れられないような企業だ。しかし自己強化的な債務縮小トレンドは同じである。

今回のシリコンバレー銀行の破綻は炭鉱のカナリアであり、この初期のイベントはドミノ倒しになってベンチャー業界とその外にまで波紋を広げるだろう。

つまり、シリコンバレー銀行の破綻によりスタートアップ企業の金回りが今後更に悪化するということです。それは何を意味するのか?というと、SPAC上場した企業のようなキャッシュフローがマイナスになっているベンチャー企業への風当たりは今後更に厳しくなり、倒産や上場廃止となる企業が出てくることが予想されます。

先日も、「Virgin Orbit の業務一時停止」などのニュースが報じられると、次はどの会社だ?という投資家の疑念から粗探しのごとく、1ドル近辺を彷徨う企業や1ドルを割った宇宙SPAC銘柄 (宇宙SPACに限らず、SPAC上場した企業であればそのリスクはある) が売られるというような悪循環が起こっています。

宇宙SPAC企業の現状確認

それでは2023年3月中旬現在、現時点で分かっている先行きが不透明な宇宙SPAC企業を確認していきましょう。

Astra (アストラ / ASTR)

まず Astra (アストラ) は目先ナスダックから上場廃止のリスクを抱えている。その期限は4月4日と迫っており、そんな中 Astra は一連の株価下落は「違法な空売りの可能性があったのではないか?」ということを調査するため、金融ソフトウェア会社 ShareIntel を採用したことを発表した。

CNBC の記事によると、ロケット打ち上げ会社の Astra は、ナスダックからの上場廃止期限が迫る中、同社株の違法な空売りの可能性を調査している。

同社は、投資家が株価の下落に賭ける空売りを数件発見したと報じられている。Astra の株価はここ数カ月で急落し、同社はナスダックの上場要件を満たすのに苦労している。

期限までに要件を満たせなかった場合、上場廃止になる可能性もある。Astra は財務状況の改善に取り組んでおり、最近では複数の商業打ち上げの契約を獲得している。

しかし、空売り行為は、同社の財務状況をさらに悪化させ、上場廃止を回避する努力を妨げる可能性がある。Astra は、違法な空売りに関与していることが判明した個人または団体に対し、法的措置を講じるとしています。

Virgin Orbit (ヴァージン・オービット / VORB)

CNBC の宇宙担当 Michael Sheetz 氏によるスクープで明らかになったのは、Virgin Orbit (ヴァージン・オービット / VORB) は業務を一時停止し、ほぼ全社的に無給の一時帰休を開始したことが伝えられている。

このニュースを受けて、Virgin Orbit の株価は-48%急落している。

CNBCの記事によると、リチャード・ブランソン氏の宇宙開発会社 Virgin Orbit は、財政難を理由にロケット打ち上げを一時中断し、スタッフを一時解雇した。

同社は、長期的な持続可能性を確保するための決定であり、できるだけ早く打ち上げを再開する予定であると述べています。一時帰休したスタッフは、健康手当と給与の一部を引き続き受け取ることができる。

Virgin Orbit は、カスタマイズした飛行機から小型衛星を宇宙へ打ち上げることを専門としている。2020年にテスト飛行を成功させ、その後、いくつかの商業ミッションを打ち上げてきた。

しかし、パンデミックによる混乱や打ち上げシステムの高コストが、同社の財政難の一因になっていると報じられている。

Arqit Quantum (アーキット・クォンタム / ARQQ)

Arqit Quantum の株価がおかしくなったのは、2022年12月中旬に当初より予定していた量子衛星の計画を断念したことにあります。同社はこの日、量子衛星の建設計画を中止し、ソフトウェア技術が進歩し、自社の宇宙資産が不要になったことを発表しました。

Arqit Quantum は、量子鍵の作成と送信のために衛星のネットワークを立ち上げる計画を持っていましたが、この計画を断念したことにより宇宙ビジネスとは何の関係もなくなってしまいました。

私も当時このニュースを見て (?) と、一瞬フリーズしてしまったのですが、そうすると同社は、SPAC上場した只のセキュリティ企業なのか?何なのか良く分からなくなってしまいました。正にストーリー一発を地で行くSPAC銘柄に成り下がったのです。

1ドルを割って彷徨う宇宙SPAC銘柄

他にも2022年3月16日現在、観測衛星の Spire Global (スパイア・グローバル / SPIR)、宇宙インフラの Momentus (モメンタス / MNTS)、次世代衛星通信システムの SatixFy (サティクスフィー / SATX) などが1ドルを割って彷徨っている。

果たして2020年の宇宙SPAC勃興期を経て、ここから脱落していく企業はあるのだろうか?タイムリミット的にはナスダックから上場廃止を突きつけられて Astra (アストラ / ASTR) がピンチに見えるが、早いか遅いか?の問題で、SPAC銘柄には厳しい冬の時代が眼前に迫っている。

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ナスダックは上に行くか下に行くか?を迷っている

以下はチャートマスターの Traderstewie 氏のツイートです。

弱気相場からの底値形成には、何ヶ月もかけて、上昇に失敗し、ピークと谷の間で価格が揺れ動く長い期間が必要です。いくつかの銘柄がリーダーになる一方で、他の銘柄は道連れにされる。私は、ナスダックが今まさにそうなっていると信じています。

シルバーレイク銀行の破綻 → 界隈スタートアップ企業の資金繰りの悪化 → 銀行の貸し渋りでスタートアップの新規融資が枯渇 … という未来は見える現在、これ何度もバウンドしてきたナスダックに資金を入れるのは危険かもしれない。一方で、金利を見れば最後のバウンスを取りに行くトレーダーも散見されている。

宇宙ビジネスでブレイクスルーを起こる企業も

Varda Space、宇宙で薬を作る医薬品開発におけるブレークスルー

この流れで、宇宙ビジネスが終わったのか?というと、そうではなく、今株価がもたついている宇宙SPAC企業は、市場競争の激化に伴い淘汰の流れにさらされています。

例えばロケット打上げの Astra は、ロケットの打上げミスと、その後のロケットシステムの変更/開発に伴い、ロケットの打上げ会社なのにロケットの打上げができなくなるということが続いています。そうするとそりゃ資金繰りが悪くなりますし、その間に他の打上げ会社に仕事を持って行かれてしまいます。

そうじゃなくても、小型ロケットの打上げ市場は SpaceX の影響でどんどん価格が安くなり競争が激化しています。2020年の宇宙SPAC勃興期から数年が経ち、状況がめまぐるしく変化している中で、この変化に対応できない企業は淘汰されていくと考えられます。