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宇宙 SPAC 企業に冬の時代を告げる兆候

SPAC に冬の時代を告げる兆候が出始めているので、SPACトレーダーはシートベルトの確認をお願いします。既にSPAC株のブームが終わったことは個人投資家ならお気づきだと思いますが、ここからは冬の時代 (SPAC 企業が淘汰される) が来るのかもしれません。

最初の兆候は、イタリア発の宇宙物流・輸送サービス業界のマーケットリーダー D-Orbit が金融市場の悪化を受けて Breeze Holdings Acquisition Corp との合併契約を終了し、SPAC上場を取り止めたというニュースでした。

イタリアの宇宙物流・輸送サービス D-Orbit、金融市場の悪化を受けて SPAC 上場を取り止め

そして2022年8月24日のニュースで、SPAC (特別目的買収会社) との合併を進めているイスラエルの衛星技術企業 SatixFy が今年度の収益予測を引き下げた、というニュースが報じられています。

同社は3月に合併後の評価額8億1300万ドルで合併を発表したが、今度はその半分以下のわずか3億6500万ドルの評価額で合併することになったと、問題の SPAC である Endurance Acquisition Corp. (Nasdaq: EDNC) は報じています。取引完了の最終期日は11月7日とのことですが、SPAC の環境もかなり悪化してきている兆候です。

収益予想を大幅に引き下げたその背景には、インフレ悪化による新規契約数、サプライチェーン状況の変容が影響しているようで、チップの原材料価格が上昇し、インフレ環境も不透明であることから、従来の利益予想を据え置くことにしたということだ。

このニュース記事では一部混乱があったようだが、正しい見解は以下とされている

Satixfy と SPAC の取引について、若干の混乱があるかもしれません。Reddit にそれについて記述した良いスレッドがある。株式価値は「55%も減少」したわけではない。サティクスファイの株式価値は、5億ドルから3億6500万ドルへと1億3500万ドル、つまり27%減少している

ASTR の株価が1ドル割れ …

またこの日、宇宙 SPAC の Astra Space (アストラ / ASTR) の株価が1ドル割れし meme 株と成り下がりました … ASTR は宇宙 SPAC 企業の中でも期待されていた銘柄だけに、まさか … と思う投資家も多いのではないでしょうか。私も SBI 証券で長期枠としてロングしていたので、SPAC 銘柄の長期投資が如何に難しいか、または SPAC 投資は長期投資に向かないのかもしれない … と改めて思う次第です。

今一度、SPAC 投資のストラテジーを確認しておきましょう。

SPAC 投資はストーリー、テーマ一発。さっさと愛してさっさと捨てる。そういうタイプの投資対象だと思います。特に不況下では、最も遠ざけられる。

話を ASTR に戻すと、ASTR は2022年8月4日に第二四半期の決算で財務結果をアナウンスし、同時に Rocket 3.0 での打ち上げを終了し、次のバージョンの打ち上げシステムに移行し、ロケットの打上げも2023年以降まで未定であることを発表しています。

Ars Technica のシニア・スペース・エディター、Eric Berger (エリック・バーガー) さんは以下のように指摘しています。

ASTR は2022年上半期に1億6800万ドルの純損失を出した。小さな打ち上げ会社としてはかなり大きな燃焼率だ。ASTR のクリス・ケンプCEOは、同社が2023年に商業打ち上げを再開するかどうかは定かでないと述べた。次世代ロケットシステムの開発とテストがどうなるかによる。それ以降になる可能性もある。

NASAは非現実的な顧客だ。ASTR は、トロピックス・ミッションの「打ち上げシステム2.0」を待ってもいいと言った。ASTR は現在、約2億ドルの現金と市場性のある有価証券を手元に置いている。明らかに、現在の消費率は持続可能ではない。おそらく、彼らは宇宙空間でのスラスター事業 (Astra Spacecraft Engine) から十分な収益を得るでしょう。私は知らない。財務はかなり厳しそうだ。

SPAC の冬があまりにひどいので、あるアドバイザーは清算事業を開始した

投資家の間でも一部話題になっていましたが、ブルームバーグが2022年8月25日のニュースで「SPACの冬があまりにひどいので、あるアドバイザーは清算事業を開始した。」事を報道しています。

SPAC の現状はどの程度悪いのだろうか?過去2年間のブームの間に100以上の白紙委任契約に取り組んだアドバイザリー会社ICRは、新しい事業を発表しました。それは、低迷するSPACの閉鎖を支援することです。

つまり SPAC のディールでぼろ儲けしていた会社が今度はその手仕舞いの支援を始めたということで、流石にそれはねえだろ!と投資家も憤慨しています。

ICRのパートナーであるフィル・デニングは、「スポンサーが唯一のSPACであろうと、複数のSPACのスポンサーであろうと、清算の決定を発表する際には、評判を考慮しなければならない」と声明の中で述べている。

こういったニュースが段々と増えているように感じます。

宇宙 SPAC、今後の展望

今後の宇宙 SPAC 銘柄がどうなるか?というと、FRBのパウエル議長は8月下旬に開催されたジャクソンホールでインフレとガチンコ勝負するというメッセージを話、FRBの John Williams 氏は、金利はしばらく高止まりすると発言している。

その内容は、まず政策金利は3.5%にもってゆき、そこで水平飛行に入り2023年はずっとその水準を維持するとのこと。これは何を意味するかというと、今後利下げは望めずしばらく金利が高い状態が続くことが示唆しています。

そうすると、2020年の金融相場で話題となったハイパーグロースやストーリーやテーマ一発の SPAC 株 (宇宙 SPAC を含む) が相場になることは考えられず、下手すると数年先まで低迷、資金がなくなる宇宙 SPAC 企業は倒産や買収される懸念も出てくるのではないか?と思います。

例えば、2022年8月下旬に1ドル割れになった Astra (アストラ / ASTR) は、その後「エアバス・ワンウェブ・サテライトと宇宙機用エンジン契約を締結」というニュースを出すも、株価は8月31日現在0.8ドルと更に下げ幅を加速させています。

SPAC 株は1ドル割れを起こすり、meme 株化が加速する傾向があります。中古車販売の SPAC 銘柄 CarLotz (カーロッツ / LOTZ) も1ドル割れが起きてから2度と1ドルには戻っておらず、現在0.4ぐらいで取引されています。

1ドルを割った ASTRA は上場廃止となるのか?

こういった銘柄がもし米国がリセッションを起こした際に、リセッションの深度にもよりますが生き残っている可能性は考えにくいです。つまりこれから SPAC 株、宇宙 SPAC 株が置かれる環境というのは、この中からどの企業が生き残るのか?という、また別のステージが始まることが予想されます。

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