Zoomy では著名な投資家の動向を随時追っていますが、2023年に2人の伝説の投資家、スタンリードラッケンミラー、ハワード・マークスの両氏が投資の魅力・本質について語っているのでご紹介します。
ハワード・マークス: 投資は多くの変数を考慮し、多くの不確実性に対処しなければならない
まず市場サイクルについて著書やメモが、個人投資家に計り知れない影響を与えた伝説の投資家がハワード・マークスです。ハワード・マークスは最近、レイ・ダリオを抜いて世界最大の投資ファンド (オークツリー・キャピタル) となりまた。
ハワード・マークスのファンド、オークツリー・キャピタルのサイトを見ると、彼の資産運用会社オプティは180兆ドルを運用しており、これは多くの国のGDPよりも大きい。
ハワード・マークスは、2023年9月5日にニューヨークで行われたデビッド・ルーベンスタインとの対談で、次のような質問をマークスにしています。
この質問に対して、ハワード・マークスは次のように回答しています。
常に気を抜けない。その一方で、不正確であるがゆえに失敗も多い。ウォーレン・バフェットはいつも、400打席に立ったテッド・ウィリアムズの話をしている。偉大な投資家は60%、70%、もしかしたら80%の確率で的中する。
常に正しくなければならないような人は、投資の世界にいるべきではない。
投資は多くの変数を考慮し、多くの不確実性に対処しなければならない
ハワード・マークス氏の回答を読み解くと、例えばこの記事を書いている2023年10月中旬であれば、ハマスによるイスラエルへの奇襲攻撃により更なる地政学リスクから原油価格のボラリティが上昇しました。
また、ハマスがイスラエルに奇襲をかける前は、米国の金利がグングンと上昇しており手がつけられないくらいに上昇してしまいどうなることか?と固唾をのんで見ていましたが、ハマスの奇襲によって一時的に金利が天井を付けるかたちになりました。
このことは、上記でハワード・マークスが述べているように、”投資は多くの変数を考慮し、多くの不確実性に対処しなければならない”、ということです。
投資には絶対正解がなく、世界で起こる事象によってもたらされる変数を読み、相場を張る、資金をベットする必要があります。
昨日までの解決策が明日には通用しない
昨日の解決策が必ずしも明日には通用しないことを示唆しており、投資家は常に警戒を怠ることなく新しい情報に対応する必要があると強調しています。
それは常に入ってくる情報 = インカミングデータを判断し、世界の事象、振舞いに合わせて投資判断を下さなければいけません。
歴史のサイクルでは、危機を迎えている
もし今日と同じ明日がやってくると思っている人は、ニール・ハウの新書『The Fourth Turning Is Here』を読む必要がある。株式市場にもサイクルがあるのと同じようにも歴史にもサイクルがあり、今は丁度 “第4の転機 (The Fourth Turning)” を迎えている。
25年前、ニール・ハウと故ウィリアム・ストラウスは、挑発的なアメリカ史の新理論で世界を驚かせた。過去500年間を振り返って、彼らは明確なパターンを発見した。
現代の歴史は周期的に動き、それぞれの周期はおよそ80年から100年、人間の長い人生の長さに匹敵する。ニューディールや第二次世界大戦、南北戦争、アメリカ独立戦争のように、市民の激動と国家総動員の時代である。
そして今、予定通り、私たち自身の第4の転換期が到来した。そこでニール・ハウは、驚くべき新予測を携えて戻ってきた。私たちの周囲で見られる二極化、内紛や世界大戦の脅威の高まりは、2030年代初頭にはクライマックスを迎え、大きな危険をもたらす …
常に気を抜けない
つまり常に頭 (脳みそ) を動かしていないと務まらないとも言えます。だからこそ、投資家は失敗もします。偉大な投資家は60%、70%、もしかしたら80%の確率で的中すると言います。つまり100%の的中するという神のような人はいないのです。
常に正しくなければならない、と思っている人は投資には向いていないと言います。
ウォーレン・バフェットが学びを得た、テッド・ウィリアムズ
ウォーレン・バフェットはいつも、400打席に立ったテッド・ウィリアムズの話をしている。バフェットはテッド・ウィリアムズの野球の哲学から多くを学んだと言われています。特にバフェットは、ウィリアムズの「打撃の科学」のアプローチを投資に応用することで知られています。
ウィリアムズは、打者として成功するためには、ストライクゾーン内でのみスイングし、それ以外の場合はスイングを避けることが重要であると説いていました。
バフェットはこの哲学を投資に適用し、彼の「投資のサークル・オブ・コンピテンス」の概念に結び付けました。これは、投資家が自分の知識と理解の範囲内でのみ投資するべきであり、それ以外の場合は投資を避けるべきであるという考え方です。
常に学ぶ姿勢
ハワード・マークスのアドバイスをまとめると、投資において必要なことは、常に学ぶ姿勢、世界の出来事がどのように市場に影響するのか?読み解く力が求められます。これらに対処するには、スポンジのように学ぶ姿勢、経験値を積むこと、自信過剰にならず常に謙虚に、自分は間違っているのではないか?と客観的に自問自答できるくらいのレベルに達している必要があるかもしれません。
スタンレー・ドラッケンミラー: 世界の出来事がどう影響を与えるか?そのパズルを解き明かす
伝説の投資家スタンレー・ドラッケンミラー氏は、2023年5月に開催された Sohn Investment Conference 2023 で、自身の成功を可能にした投資哲学について語っています。
という質問に対して、ドラッケンミラー氏は次のように回答しています。
なぜか、複利計算が得意なんだ。このビジネスが好きだし、世の中のあらゆる出来事がどこかの証券価格に影響を与えることを知り、そのパズルを解き明かそうとする知的刺激も好きです。
少し短いですが、とても深く鋭いことを語っています。ドラッケンミラー氏に言わせてみれば、投資とは、世界中のあらゆる出来事が、どこの証券価格に影響を与えるのか?を知り、そのパズルを解き明かそうとするもの、だということです。
投資家たる者、常にこのような視点を持っていなければいけません。日本に住んでいて、世界の出来事だから私には僕には関係ない、というような思考は論外です。
日頃から常に起こった出来事に対して観察し、推論し、オッズを組み、相場を張るというような訓練をしておいた方が良いと思います。これは投資に限らず、私生活やプライベートでも効果的です。
ハワード・マークス: 予測者には2種類ある
ここで再びハワード・マークスに登場してもらおう。マークス氏は、2023年9月に行われたデビッド・ルーベンスタインとの対談で、最後に全投資家必見な非常に重要なアドバイスを述べています。
デビッド・ルーベンスタインのこの質問に対して、マークス氏は次のように答えている。
平均的な人々は、自分も他の誰も未来がどうなるかわからないということを学ばなければならないと思う。もうひとつは、人々は直接的かつ機械的なつながりがあると信じていることだ。企業が良いイベントを起こせば、証券は良くなる。
決算のような悪いイベントがあれば、証券は悪くなる。しかしそうではなく、人々の反応という中間段階があるからだ。そのイベントがポジティブかどうかだけでなく、人々がそのイベントにどう反応したかが、証券価格への影響を決定するのです。これは2つの異なることなのです。だから、心理的要因や人的要因を忘れてはいけないんだ。
未来予測の過信
人々はしばしば、自分自身や他の専門家が未来の市場動向や個々の証券の動きを予測する能力を持っていると信じがちです。しかしマークス氏は、予測は困難であり、しばしば誤っている可能性が高いと指摘しています。
直接的な原因と結果の誤解
投資家はしばしば、企業の良いまたは悪いイベントが直接的にその証券価格に影響を与えると考えます。しかし、実際には人々の反応が価格に影響を与えると指摘し、これは企業のイベント自体とは異なる要因であると強調しています。
マークス氏の観察は、投資家が市場の不確実性と人間の心理的要因を理解し、それに対処することの重要性を強調しています。投資家が未来を予測する能力を過信すると、リスクの評価を誤り、不適切な投資決定を下す可能性があります。
また、企業のイベントと証券価格の間の直接的な関係を誤解すると、市場の反応を過小評価し、予期しない損失を被る可能性があります。
これらの誤解とバイアスは、投資家がリスクを適切に評価し、賢明な投資決定を下すことを困難にする可能性があります。これらの点を理解し、心に留めておくことで、投資家はより知識を持って市場に参入し、可能なリスクを避けることができます。