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ソーシャルメディアの時代が FOMO を引き起こす

ソーシャルメディアの時代が FOMO を引き起こす

作家のモーガン・ハウゼル氏が Chance Finucane に出演し、新書『Same As Ever: A Guide To What Never Changes』に関するインタビューで、FOMO (Fear of missing out:投資機会を逃す恐れ、乗り遅れることの恐れ) の危険性、そのメカニズムについて触れていますのでご紹介します。

【選書】モーガン・ハウセルの新書『Same As Ever: A Guide To What Never Changes』

2020年のパンデミック以降、ソーシャルメディア (テクノロジー) の影響で FOMO(Fear of missing out:投資機会を逃す恐れ、乗り遅れることの恐れ)が高まっている。FRBの過去に前例のない大規模な金融緩和が誘発したバブルは、WEB3、NFT、暗号通貨、トークン (STEPN)、株式市場などを巻き込み、ソーシャルメディアで人々が FOMO を発動したことで、そのバブルは加速し弾け飛んだ。

典型的なバブルの例: STEPN

日本では特にポンジスキームと呼ばれ、歩くことで収益が得られた STEPN (ステップン) が話題になったが、既にそのバブルは弾け、忘れられた存在になっています。当時を思い返すと、ソーシャルメディアで「歩くことでお金が稼げる、会社辞めよう」、「消費者金融でお金を借りて STEPN 内の靴 (スニーカー) に投資してお金を稼ごう」など、いかにも FOMO 的な思考が横行していましたが、逃げられた人は僅かだったのではないかと思います。

STEPN に乗っかってしまった人は、正に FOMO と言われるもので、「歩くだけで収入が得られる!?だったら自分も参加したい」という非常に分かりやすいものだったと思います。しかし後から振り返れば、STEPN で儲かった人は、早い段階絵で STEPN に参加し、その面白さをソーシャルメディアで広め、早々に STEPN から降りた人です。

ハワード・マークスから学ぶ、相場のサイクルを極める

基本的にバブルの構造 (サイクル) はこのようなもので、ハワード・マークス氏が著書『市場サイクルを極める 勝率を高める王道の投資哲学』で述べるように音の振動のように上下に振れるわけです。STEPN のように人々は熱狂し、波形が上に振れる程、今度は同じくらい下に振れます。これが基本的なバブルの構造です。STEPN の場合は、残念ながら下に触れて終わってしまいました。

暗号通貨ビットコイン

そうではない例が暗号通貨ビットコインです。ビットコインも大規模な金融緩和の恩恵を受けて上昇しましたが、2022年の FTX の破綻によりビットコインに核弾頭のようなものが落ち、そのバブルは終焉を迎えました。2021年11月の高値から約60%以上下落しました。

しかし面白いのは、ビットコインに関しては早くも新たなサイクルに入り、新たなバブルが形成されようとしています。FTX の破綻後、投資家の間ではビットコインが復活するには最低でも2、3年ぐらいかかるだろう、という見方をされていましたが、FTX が破綻して1年も経たないうちにビットコインに再び注目が集まっています。

その背景には複数の要因が複雑に絡み合っていると思いますが、地政学リスク、基軸通貨ドルの凋落 (というような噂)、第二の通貨としての価値、混迷を極める世界情勢、FOMO、投機筋、etc

私が注目しているのは、金融業界の著名人がビットコインに注目していることです。例えばドラッケンミラー氏は、2023年10月中旬にポール・チューダー・ジョーンズ氏とのインタビューで、ビットコインについて次のように述べています。

私は70歳で、金を持っている。ビットコインが盛り上がったのには驚いた。若い人たちがビットコインを価値の貯蔵手段として見ているのは明らかだ。17歳の私にとっては、ブランドなんだ。

私は金が好きだし、5000年の歴史を持つブランドだ。でも、若い人たちはみんなお金を持っている。だから両方好きなんだ。ぶっちゃけ、ビットコインは持っていないけど、持つべきだね。金は持っている。

つまり、STEPN のようにすぐにバブルが崩壊して消えていくものも無数にありますが、ビットコインのように登場以来、上下しながらいくつかのサイクルを繰り返しているものもあります。

FOMO をするのであれば、バブル、サイクル、本物を見極める力・洞察力が必須です。

ソーシャルメディアの時代に求められるもの

モーガン・ハウゼル氏は、ソーシャルメディアの時代に人々に求められるリテラリーについて次のように語っている。

ソーシャルメディアの時代には、他の人が人生のある側面でより良いことをしているように見えることがあり、それがより多くを求める FOMO の原動力になっていることを理解しよう。

ソーシャルメディア上では、真実ではなく、ライフスタイルや様々なトピックに関する最も挑発的で、乱暴で、しばしば不正確な情報が好まれる傾向にある。

そのため、他人がこれらの描写を基準や真実として固定する傾向があり、それがこれまでになくソーシャルメディアが拡散装置として情報を広めている。

インスタグラムやツイッターで、家族がいかに美しいか、バケーションがいかに楽しいか、家がいかに素晴らしいか、といった人生のハイライトを投稿している人たちがその無邪気な例だ。投稿者を含め、誰もが良いところだけを投稿し、全体像は伝えない。

そのため、他の人が自分の生活をこれらのハイライトと比較することになり、同じような生活を送ることへの不安やプレッシャーが FOMO を引き起こす。

このカラクリをしっかりと認識し理解しないと、FOMO の餌食になってしまうだろう。あなたは自分に合ったゲームを理解し、他の人たちがやっていることに巻き込まれることなく、腰を落ち着けて、自分の人生を歩むことが求められる。

ソーシャルメディアの時代においてこのことは、人々が自分自身に言い聞かせ続ける必要のある教訓です。

FOMO を避けることの重要性

モーガン・ハウゼル氏は、FOMO を避けることの重要性について次のように語ります。

歴史的に見ても、ソーシャルメディア以前から、最も重要な経済的特徴は FOMO を避けることである。FOMO を避けることができれば、それが経済的に長期的に成功するために必要なことの大部分となる。

しかし、FOMO を避けなければ、成功する確率は事実上ゼロである。ソーシャルメディアでは、FOMO が加速している。この現象は、インスタグラムのようなプラットフォームによって、ここ5年から10年の間に著しく最適化された。

これは、私たちがまだ理解しようとしている意味を持つ新しい問題である。子供やティーンエイジャーを持つ人々にとって、ソーシャルメディアに影響された彼らの良い生活への期待は、ソーシャルメディアなしで育った人々とは大きく異なることは明らかだ。

それはすでに大きな影響を及ぼしており、金融市場における長年の問題をさらに悪化させている。

ソーシャルメディア、特に TikTok に犯された人々は踊り出し、その踊りは直感的に見た人にもダイレクトに伝わり踊り出す。踊ることが悪い訳ではなく、その動物的な原理、習性に目を向けるべきだろう。

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