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通信衛星を利用した D2D 通信事業で競争する米宇宙衛星企業

通信衛星を利用した D2D 通信事業で競争する米宇宙衛星企業

2024年に入り、衛星直収型標準電話 (sat2phone) 通信プロバイダーの世界大手である Lynk Global (リンク・グローバル) がSPAC上場します。

現在この通信衛星を利用した D2D (Direct-to-Device) 通信事業を進めている企業には、一足早くSPAC上場し、2022年の9月に衛星 BlueWalker 3 (BW3) の打上げを行った AST SpaceMobile (ASTS)、第2世代の Starlink 衛星に T-Mobile の周波数帯を使用したD2Dシステムを搭載するようFCCに申請した SpaceX という3社が競合しています。

D2D通信で何ができる?

D2D通信で何ができる?

通信衛星を利用した D2D (Direct-to-Device) 通信で何ができるの?というと、上記の Lynk のスライド画像が示すように、携帯端末を使って、ネット環境のない地域にも、メッセージ通信、音声通信、IOT、データ通信などをできるようにします。

これらの会社は、地上のネットワークインフラが届かない地域でも、直接一般的な携帯電話やスマートデバイスにサービスを提供する技術を開発しています。それぞれの会社は、異なる段階で事業を進めており、独自のカバーエリア、対応するユーザー・デバイス、サービス、および技術的な特徴を持っています。

AST SpaceMobile

【ASTS】衛星通信会社 AST SpaceMobile とは?

AST SpaceMobile (ASTスペースモバイル / ASTS) のサービスは、SOS、双方向テキスト、音声、ブロードバンドを提供します。複数の MNO (Mobile Network Operator) と提携し、LEO で BlueWalker 3 衛星をテストし、10Mbps以上のダウンロード速度を実現しています。以下は AST SpaceMobile のサービス詳細です。

ステータス : デモ段階
地域 : グローバル、ヨーロッパ、アジア、アフリカの21カ国
ユーザーデバイス : 携帯端末

Lynk Global

【LYNK】衛星直収型標準電話通信プロバイダーの世界大手 Lynk Global が SPAC 上場

Lynk Global (リンク・グローバル / LYNK) のサービス内容は、SOS、双方向テキスト、IOTを提供します。モバイル・ブロードバンド・サービスへの拡大を計画しており、7大陸すべてでサービスを実証、50カ国以上をカバーする30以上の MNO とサービス契約を結んでいます。

ステータス : デモ段階
カバレッジ : 3基の衛星が稼動しているが、展開の初期段階ではカバー範囲は限定的
ユーザーデバイス : 携帯端末

SpaceX

SpaceX と T-Mobile の計画は衛星通信の新たな章の幕開けを告げる

SpaceX は Starlink と T-Mobile が協力して D2D を進めています。SpaceX のサービス内容は、SOS、双方向テキスト、IOT、位置追跡、音声、基本的なウェブ閲覧が中心となっています。

2022年12月、SpaceX は第2世代 Starlink 衛星に T-Mobile の周波数帯を使用したD2Dシステムを搭載することをFCCに申請しました。

ステータス : 2024年中にテキスト通信を、2025年には音声とデータ、IOTサービスを展開予定です。
カバレッジ : 緯度:+58°~-58°、米国本土、ハワイ、プエルトリコ、アラスカ南東部、コディアック、アリューシャン列島
ユーザーデバイス : 携帯端末

Lynk Global の優位性

Lynk Global の優位性

Lynk の投資家向けプレゼンのスライドによると、Lynk は D2D (Direct-to-Device) 通信市場における他のプレーヤー、SpaceX や AST SpaceMobile、WiFiバックホール衛星に比べると、競争上の優位性があると言います。

– コア衛星直収電話技術の特許
Lynk はこの特許を持っているが、SpaceX や AST SpaceMobile を含む他社はこの特許を持っていない。

– 費用対効果の高い衛星へのアクセス
Lynk は他の2社に対する優位性を示している。

– FCCからの商業規制承認
Lynk と AST SpaceMobile はこの認可を受けているが、SpaceX はまだ受けていない。

– 既存の MNO の UHF スペクトラムを活用
これは Lynk が他より優れていると主張する点である。

– 既知の商業契約
SpaceX と AST SpaceMobile が各1件であるのに対し、Lynk は35件以上であり、強力な商業的存在感を示している。

– 商業サービスを提供している国
SpaceX と AST SpaceMobile はまだサービスを提供していない。

まとめると、3社とも、携帯電話に直接接続する衛星通信サービスに取り組んでいます。AST SpaceMobile とLynk Global はデモ段階にあり、SpaceX は2024年中のサービス開始を目指してテスト中です。

カバレッジは地域的なものから世界的なものまで様々で、AST SpaceMobile と SpaceX がブロードバンド機能に言及しているのに対し、Lynk はモバイルブロードバンドへの拡大に重点を置いています。SpaceX のアプローチには、T-Mobile のインフラとの統合や、IoTデバイスへの特化などが含まれています。