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日本も遂にインフレの再来、今こそ堅実な資産運用を身に付けよう

日本のインフレ率

日本もいよいよ慢性的なデフレからインフレの再来、金利上昇を迎えています。その一つの転換点となったのが、2022年12月20日、日銀の黒田総裁が、遂に重い腰を上げて市場との会話もなしに突然政策金利を0.5%に引き上げることを表明しました。しかしその頃、アメリカの中央銀行 (FRB) パウエル議長は、今後政策金利の引き上げ幅を縮小することを既に示唆しており、日銀の利上げは世界に周回遅れたタイミングで発表されました。

高齢化、労働人口の減少、インフレの再来、グローバル化の逆流

ヨーロッパに目を向けると、ロシアによるウクライナ侵略で、これまでロシアに大きくエネルギーを依存していたEU加盟国では激震が走りました。以降、ロシアから原油や天然ガスを買えなくなり、コストアップ、燃料不足になると製造業は大打撃を受け、その後のイギリスの失策などもあり、EU市場はボコボコに売られました。しかし2023年1月EUの株式指数を見てみると、9%くらい反発しています。

アメリカは2023年中に景気後退を迎え、金融市場は2023年1月現在、後数回の利上げが残されている状況です。労働市場に目を向けると、2022年後半から大手IT企業などホワイトカラーの本格的なレイオフが開始され、いよいよレイオフの波がブルーカラーの眼前に迫っている状況です。

このように地政学的にも日本とは大分異なるため、一概には言えませんが、2022年世界がインフレの再来で急激な物価上昇に晒されている時に、日本に目を向けるとインフレはマイルドに進行していました。

しかし日本にもいよいよ30年以上続いたデフレ&低金利の時代が終わりを告げ、今後世界のトレンドは、チャールズ・グッドハートとマノジ・プラダンの著書『人口大逆転 高齢化、インフレの再来、不平等の縮小』が示すように、高齢化、労働人口の減少、インフレの再来、高金利環境の到来、グローバル化の逆流という大きな転換を迎えようとしています。

低金利から高金利の時代へ、株式市場はどうなるのか?

インフレになると、これまでに買えたモノの価格が上昇しますので貯めたお金、資産が傷んでいく時代に突入します。日本人はこれまでの安くて美味い日本 (デフレ) に慣れ親しんでいると思いますが、今後もデフレ脳のままでは世界から取り残されてしまいます。

人口大逆転 高齢化、インフレの再来、不平等の縮小

グッドハートとプラダンは、人口動態の逆転と、COVID-19 に対抗するために実施された非常に拡張的な金融・財政政策は、遅かれ早かれ、貯蓄を減らし、投資を増やすことにつながると主張しています。それが自然利潤率を押し上げることになると。金融市場や政策立案者は、このような展開に対する備えをしていません。レバレッジの蓄積は金融の脆弱性を招き、中央銀行の引き締めを阻害するため、インフレ率は上昇することになると述べています。

実際に、2022年〜2023年1月現在までの米国金融市場を見れば、正にその通りにインフレは推移しています。FRBのひっちゃきな利上げによってインフレは低下してきましたが、問題はこのインフレが一過性で収まるのか?それとも1970年代のように第二波となって襲ってくるのか?、それは今後の展開にかかっています。

インフレ時代の敗者

インフレで最も損をするのは、労働者、サラリーマン、従業員、教師、年金生活者、債権者です。最も打撃を受けるのは、定収入を得ている人々で、中産階級と呼ばれています。なぜなら、賃金 (給料) は物価上昇程上がらないからです。

更にインフレ時代の敗者は、貯蓄者、固定金利や家賃で生活している人、年金生活者、年金基金、保険会社、そして金融資産を主に現金で持っている人々です。これらの人は収入が固定されているため、物価上昇期には苦しくなります。

この記事では、世界的なインフレ再来の背景について、インフレに負けずに堅実に資産を増やしていくにはどうすれば良いか?について考えてみたいと思います。

日本も40年来のインフレ

日本も世界に一周遅れること40年ぶりのインフレが再来しています。年が変わって2023年1月、日本国民も肌感覚で物価の上昇、電気代の値上げに次ぐ値上げと、家計を直撃していると思います。

ニュース番組でも街頭インタビューで主婦が、物価上昇を受けて「服を買うお金を節約する」だとか、「このままでは生活が立ち行かなくなる …」など庶民悲痛の声が聞こえてきます。Twitter を見ても、「どこの居酒屋もビールが100円以上高くなっている」というような物価上昇に反応した声が増えてきました。

既にインフレ傾向であることを皆さん肌感覚で感じていると思います。私も思い返すと、まずは電気代が大分値上がったな … ということを明細を見る度に実感しました。仕方なく、2022年の冬はヒーターは一切使わないようにして、エアコンの暖房、ホットカーペット、一人用コタツを上手く使いこなすことで電気代を抑えるよに努力しています。

今回の世界的なインフレの元を辿れば、COVID-19 のパンデミックで経済の停止を余儀なくされ、アメリカの中央銀行 (FRB) は過去に前例のない量的緩和 (金融緩和) を行い、人々に給付金を配りまくったのが原因です。他にも、COVID-19 による生活様式の変化、消費に対する労働者不足、ロシアによるウクライナ侵攻によるエネルギー価格の上昇など、様々な要素が複雑に絡み合っています。

話を日本に戻すと、2022年世界 (アメリカ、EU) に比べると日本のインフレはマイルドに推移していました。アメリカでは、量的緩和による急激なインフレ、EUではロシアによるウクライナ侵攻でエネルギー価格が急騰など、一概に世界と日本を比較することはできませんが、それでも2022年世界がものスゴいインフレになっている時期に、日本のインフレはマイルドに推移していました。

それでもエネルギー価格が上昇するに連れて、少しタイムラグはあったものの、2022年の年末〜2023年の年始にかけて日本でも庶民がインフレ傾向であることを実感するくらいには、物価上昇が起きています。

私も驚いたのが、コンビニに行くとよく買っていた明太子のおにぎりが、2022年は120円くらいだったと記憶しているのですが、年末年始に明太子のおにぎりを手に取ると値段が178円に値上がっていたのには驚きました。ざっと50円くらい値上がっている訳です。

取り残された日本

image by IMF (インフレ率、平均消費者物価)

日本のインフレ率は世界に比べるとマイルドに進行していると述べましたが、「IMFの世界インフレ率/平均消費者物価」を2023年1月頃見てみると、日本のインフレ率は「1.4%」で、世界に比べるとめちゃめちゃ低い数値です。

日本は40年くらい長いこと慢性的なデフレから抜け出せずにいましたが、またしても外的要因 (コロナのパンデミック) で遂にデフレから脱却することを余儀なくされ、庶民の期待インフレ率も上がってきました。

2023年1月11日に、ユニクロは新入社員の初任給を30万円に引き上げることが大きなニュースとなりましたが、果たしてこのような賃上げの動きが他の企業にも広がるのでしょうか?

上のグラフを見ると、日本は1990年頃より、アメリカなどの先進国に比べると、30年間モノ価格・サービス価格・賃金が横ばいに停滞する、所謂「失われた30年 (経済の低迷)」を過ごしてきました。今後インフレでモノ価格やサービス価格だけが上がり、賃金が上がらなければ、益々貧乏になってしまいます。

日本の賃上げ率

グラフ : 厚生労働省 / 日本の賃上げ率

上記は日本の賃上げ率のグラフです。直近1990年の「5.94%」をピークに以降横這いで推移しています。またデータによると、労働者の9割は今後も「賃金が上がらない」と考えています。ユニクロなどの世界的な大手企業は、今後賃上げの恩恵を受けるでしょうが、そうではない例えば、契約社員 (日本の労働者に占める 4.9%)、派遣社員 (2.5%) のような人たちとの格差がこれまで以上に広がる可能性があります。

このように日本の場合、賃金が上がらずインフレ傾向が続くのであれば、資産 (貯金) が目減りすることに他なりません。更に悪いニュースとして、2022年以降のハイテク株の値動きを見ていると、ドットコムバブルにそっくりであり、一方エネルギー株、コモディティー株は未だに底堅さを堅持しています。(2023年1月現在)

この相場が何を物語っているかというと、1970年代の第一次オイルショック、第二次オイルショックのようなインフレの再来、エネルギー価格ももしかしたらどこかでもう一段高する局面があるかもしれません。

とにかくマクロ経済を見渡してみても、今後も物価や電気代は上がりそうであり、上がればどこかでまた下がるだろう?と思うかもしれませんが、この流れは一過性のものではなく、上昇傾向であることが予想されます。いやいや、ロシアとウクライナの戦争させ終わればエネルギー価格も元に戻るのでは?と思うかもしれませんが、そのような認識では甘いと思います。

2023年1月5日の日経の経済教室で、ケンブリッジ大教授のヘレン・トンプソンは「エネルギー、自国優先顕著に」ゼロコロナ政策による中国のガス需要減で今冬 (2022年) は乗り切れたが、今後中国の輸入量が増えれば「23年の冬は住宅の暖房すら困難になりかねない」と予想しています。政府が原発再稼働を急ぐのもこのような文脈があるからです。

新しい戦前

年明けから岸田文雄首相が、先進7カ国 (G7) 議長国と国連安全保障理事会の非常任理事国を担うことを踏まえ、閣僚が続々と外国を訪れていたのは、台湾有事が起こった際の安全保障の観点を急いで会談をしたに過ぎません。2022年の年末に徹子の部屋に出演したタモリが、「新しい戦前」と述べネットをざわつかせたのは、そういう意味だと思います。

日本の転換点

2023年1月現在、日本でもようやく期待インフレ率が上がってきており企業の価格転嫁の動きも加速しています。日本は今正に転換点を迎えており、今後は以下2つのシナリオが想定されます。

1つは、もしこのまま物価だけ上がり賃金が上がらなければ、日本人は更に貧しくなり景気後退からスタッグレーションに陥る可能性があります。

2つ目は、この外的要因を機に慢性デフレからの脱却を果たし、日本もその他の先進国と同じように賃金が上がっていくのか?

どちらに行き着くのか?は、ユニクロ以降の、企業の賃上げにかかってきそうです。と言っている間にも残念ながら富士通のCEOは賃上げにはネガティブなようです。更に忘れてはいけないのは、日本の企業の99.7%が個人事業主を含む中小企業ですので、賃上げが中小企業にまで波及することは望み薄かもしれません。

このパターンだと日本は、インフレからの物価高騰で庶民の消費も減り、景気後退からのスタッグレーションになるかもしれません。今からしっかりとシートベルトを締めておきましょう。

「節約」と「貯蓄」だけでは益々貧乏に

日本は欧米に比べると、「貯蓄」好きな反面「投資」を行なっていると割合はとても低いです。金融庁の調査では、NISAの口座数が増加傾向であることを伝えていますが、「投資」について知っている人と知らない人の差が激しいと思います。

先日、商店街の本屋さんに行くと、こんな見出しの本が目に入りました。帯には「年収300万円台にして、年間100万円の貯金を目標に、月々14万円で猫と一緒にひっそり楽しく生活中。」と書いてあり『ひっそり暮らし』という本が目に入りました。

調べてみると2021年2月に出版された本ですので出版から少し時間は経っていますが、所謂ゆるふわ系の節約本なのかな?と思いきや、ファイナンシャル・プランナーの人が書いた本とのことです。

日本人が好きそうな「節約/貯蓄」系の本かと思いますが、年収が少なくても「節約」と「貯蓄」でどうにかなる、というような思考は今後通用しなくなるかもしれません。もちろん「節約」と「貯蓄」は今後も必要かもしれませんが、もう一つ「投資」という観点が実に必要になります。

ちなみに著者のブログ「ひっそり暮らし」を拝見すると、積立投資をされているようです。(多分この本にはそのことは載っていないと思いますが …)

更にもう一つ目についたのが、『年収443万円 安すぎる国の絶望的な生活』という本です。本書は、平均年収で暮らす人々のリアルを取材した話題の書らしく、著者の小林美希さんは、「この30年、日本の賃金が上がっていない。物価高でよりそれが鮮明になって、皆さん気づいた。」と述べています。

本書は日本の衰退は止まらない … と締めくくられているようですが、読物としては訴えかけるものがあり面白いんだと思います。しかしこれらの本は、節約やら貯蓄、悲惨な現実については紹介しているものの、その解決策的なアンサーは一切載っていないのではないでしょうか。読んでもない本を取り上げるのは失礼な話ですが、日本人は貯蓄・節約の他に「投資」を学ばなければいけません。

何もしなければ、老後貧乏に

老後貧乏

田村正之氏の著書に『老後貧乏』という当時話題になった著書がありますが、この本が問題視していた、”迫る老後貧乏「長寿化」x「年金減額」x「インフレ」x「金利抑圧」のリスク” が今現実のものになっていると感じます。

日本は歴史的にも国の中から変わることができず、いつも外部的な要因によって大きな変化を余儀なくされてきました。今回図らずもコロナウイルスによって、慢性的なデフレ脱却となるのか?他の先進国と同じように賃金が上がるのか?観察が必要です。

今後デフレ脳から脱却できない人や、年金生活者にとっては世知辛い世の中になりそうです。先日、商店街の路地で1月の寒空の下、スマホ画面を見つめ大きな Uber Eats のリュックを背負った70代くらいのお爺さんを見ました。

どんな理由で Uber Eats をやっているのかは分かりません。しかしインフレで貯金や年金が目減りし、このお爺さんのように Uber Eats で日銭を稼がなければいけなくなるかもしれません。

インフレの何が問題なのか?

ここで再び「インフレ」について学習しておきましょう。インフレとは、簡単に言えば、物価が上昇することを表す経済用語です。インフレは、同じ量の商品やサービスに対して、例えば1年前よりも多くの支出をするときに起こります。

つまり日本のコンビニで、2022年には、これまで120円で買えていた明太子おにぎりが、2023年には165円に値上げされいた。という実例のように、支出が前よりも増えていることを指します。

このようにインフレを図るインフレ率とは、ある一定期間の物価上昇率のことを指します。インフレはある期間 (通常は1年間) において、関連する商品やサービスがどれだけ高くなったかを示すものです。

インフレ環境では、物価の不均等な上昇は必然的に一部の消費者の購買力を低下させ、この実質所得の低下はインフレの最大のコストとなります。

インフレが消費者に与える影響

インフレは消費者にどのような影響を与えるのでしょうか?

1. 購買力の低下
インフレ前のように多くの商品やサービスを買えなくなれば、生活の質はいずれ低下します。

2. 貯蓄の減少
生活必需品の価格が上がれば、これまで買えた金額よりも払うお金が増えるため、貯蓄が減少します。

例えば、老後のために3,000万円を貯蓄したという老人がいたとします。インフレが起きると老後の支出はその分大きくなってしまいますので、65歳の時に3000万円あっても、毎年1%ずつインフレが進行すれば、モノの価格は高くなっていくので貯蓄金が減るスピードが速くなり、84歳くらいでなくなってしまう … ということが起こります。

つまりインフレによって貯めたお金が傷んでいく時代に突入したということなんです。

堅実な資産運用を始めよう

冒頭でも述べましたが、大事なことですので繰り返しますと、インフレ時代の敗者は貯蓄者、年金基金、保険会社、そして金融資産を主に現金で持っている人々です。

多くの日本人はこの30年間あまり、慢性的なデフレに慣れきってしまっていますので気付かない人もいるかもしれませんが、インフレで貯めたお金が傷んでいくのなら、これまでのように頑張って貯金したり節約しても報われず、インフレの敗者になってしまうかもしれません。

そこで2022年の年末に日本政府はタイミングを見計らったかのように、増税案と並行して、これまでのNISAを拡充した「新しいNISA」という制度を2024年から開始されます。まだ「投資」について知らない、知識がない、という方は今すぐ「積立投資」、「長期投資」について学んで下さい。

【関連記事】新NISAの投資戦略

「新NISA」の投資戦略を考える

新NISAでは新たに「つみたて投資枠」、「成長投資枠」という2つの投資枠が用意され内容も大分パワーアップしています。新NISAについては、上記の「新NISAの投資戦略」をご覧下さい。

本当であれば、今すぐに積立投資を開始するくらいのスタンスが必要ですが、投資についてちゃんと自分で理解してから行いという人は、2024年の「新NISA」から積立投資デビューをすべく、学びをスタートさせましょう。

今後は日本人ひとりひとりが堅実な資産運用を当たり前のこととして学ぶ必要があると思います。

参考図書

世界のインフレ、日本のインフレ、物価上昇についてもっと学びたければ、以下の本をおすすめ致します。特に、日本のインフレを調べていて知った、英国中央銀行のエコノミストを務めた一流のマクロ経済学者チャールズ・グッドハートの著書『人口大逆転 高齢化、インフレの再来、不平等の縮小』は、今後のマクロ経済の動向を捉える上でとても有益な本です。

この本では、コロナ前より世界がデフレ、低金利の時代がついに終わり、インフレと金利上昇の時代が到来することを告げています。そしてコロナウイルスによって、その流れが更に加速しています。

『世界インフレの謎』

世界インフレの謎

『人口大逆転 高齢化、インフレの再来、不平等の縮小』

人口大逆転 高齢化、インフレの再来、不平等の縮小

『物価とは何か (講談社選書メチエ)』

物価とは何か (講談社選書メチエ)