Zoomy

バイオ株伝説の投資家ウェイン・ロスバウムとアイオワンス・バイオセラピューティクスの物語

バイオ株伝説の投資家ウェイン・ロスバウムとアイオワンス・バイオセラピューティクスの物語

今回はバイオテクノロジー分野で、伝説的な投資家として知られる Wayne Rothbaum (ウェイン・ロスバウム) 氏と、革新的ながん治療法の研究開発している Iovance Biotherapeutics (アイオワンス・バイオセラピューティクス / IOVA) についてご紹介します。

まずバイオ業界で伝説の投資家として知られるウェイン・ロスバウム氏について知るには、ネイサン・ヴァルディの著書『For Blood and Money: 億万長者、バイオテクノロジー、そしてブロックバスター・ドラッグの探求』を是非一読下さい。

【選書】『For Blood and Money』血と金のために億万長者、バイオテクノロジー、そしてブロックバスター薬の探求

ウェイン・ロスバウムは、最も成功したバイオテクノロジー株トレーダーの一人であり、がん治療法を開発する革新的な企業の創設者でもあります。つまり彼は、バイオに特化した投資家として、バイオ企業の創設者としての視点を併せ持った稀有な存在です。ウェイン・ロスバウムとは、一体どんな人物なのでしょうか?

ウェイン・ロスバウムとは?

ウェイン・ロスバウムは、中小規模のライフサイエンス企業への投資・支援に特化した一族経営のプライベート・エクイティ・ファンド、Quogue Capital の社長です。

ロスバウム氏は、戦略コンサルティング会社カーソン・グループでキャリアをスタートさせ、ライフサイエンス分野のプラクティスとブティック投資銀行 Evolution Capital を統括した。2001年にカーソン・グループがトムソン・ロイターに売却された後、ロスバウム氏は Quogue Capital を設立。

2012年には、後にアストラゼネカに売却した非公開ライフサイエンス企業 Acerta Pharma (アセルタ・ファーマ) を共同設立し、取締役会長を務めた。アセルタの主力医薬品である Calquence (カルエンス / アカラブルチニブ) は、2017年にマントル細胞リンパ腫、2020年に慢性リンパ性白血病の適応でFDAの承認を取得した。

2016年には、Amgen (アムジェン) からのMDM2阻害剤の導入に伴い、Kartos Therapeutics (カルトス・セラピューティクス) を共同設立した。さらに最近では、2019年に Merck KGaA から特定の血液がんおよび眼科疾患の治療を目的とした新規標的治療薬をライセンス供与された後、Telios Pharma (テリオス・ファーマ) を共同設立した。

さらに、ロスバウム氏は Iovance (アイオバンス) の変革において指導的役割を果たし、取締役会、上級管理職、全体的な臨床業務と戦略の再編成と再編成を行った。現在、ロスバウム氏は取締役兼筆頭株主である。

ロスバウム氏は1990年にビンガムトン大学を政治学と心理学を専攻して卒業し、ジョージ・ワシントン大学で国際経済学の修士号を取得した。多くの科学特許の発明者として登録されており、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン、ランセット、ジャーナル・オブ・クリニカル・オンコロジーなど多数の医学雑誌に掲載されている。

ウェイン・ロスバウム氏は、Iovance の取締役兼筆頭株主

そう、今回ご紹介する Iovance Biotherapeutics とウェイン・ロスバウム氏の関係は、アドバイザーであり取締役筆頭株主という立場ということです。ロスバウム氏は、その輝かしいバイオテクノロジー分野への経歴を活かし、Iovance に注ぐことでサポートし、Iovance の秘めた可能性を知っているからこそ、Iovance の株を買い続けたのではないか?と推測します。

ロスバウム氏がいつから Iovance への投資を開始したかは定かではありませんが、ざっくり調べたところ、2018年12月9日にロスバウム氏が、Iovance Biotherapeutics を1,221,053株購入したことが伝えられています。

その後、世界はパンデミックを迎え、FRBは大規模緩和したことで金融相場が開始、その後コロナワクチンがFDAに承認されたことで経済が再開し、2022年にFRBは一転して利上げを開始しました。そんな利上げ真っ最中の2022年6月にロスバウム氏は、1,000,000株を購入したことが伝えれます。

更に同年12月3日には、6500万ドルを投じて平均価格6.50ドルで合計10,000,000株を取得しました。そして2023年9月15日には、平均株価5.3ドルで2,700万ドルを投じて株式を購入し保有株を約28%増加させました。

まとめると、ロスバウム氏が2018年に買ったポジションは2020年以降の金融相場で一旦利確した?かもしれませんが、その後のFRBの利上げにより市場が暴落した、2022年利上げ中の6月と12月に買いを入れ、2023年いよいよ利上げも終盤に迫った9月に更にポジションを増加させています。

2024年2月 Iovance の AMTAGVI がFDAの迅速承認を取得

Iovance の AMTAGVI™ (lifileucel) が進行性黒色腫の適応で米国FDAの迅速承認を取得

みなさんご存知のように、Iovance Biotherapeutics は2024年2月16日の市場後にFDAが固形がんに対する初の細胞治療を承認し、株価はアフターで急騰しています。

がん患者に対する新規のポリクローナル腫瘍浸潤リンパ球(TIL)細胞療法の革新、開発、提供に注力するバイオテクノロジー企業である Iovance は2024年2月16日、米国食品医薬品局(FDA)が AMTAGVI™ (lifileucel) 静注用懸濁液を承認したと発表した。AMTAGVI は、PD-1阻害抗体による治療歴のある切除不能または転移性黒色腫の成人患者、および BRAF V600 遺伝子変異陽性の場合はMEK阻害剤併用または非併用の BRAF 阻害剤による治療を適応とする腫瘍由来自己T細胞免疫療法です。この適応症は、全奏効率(ORR)と奏効期間に基づいて加速承認されている。Iovance は、臨床的有用性を確認するための第3相試験である TILVANCE-301 も実施している。

ウェイン・ロスバウム氏による Iovance への投資が示すもの

ウェイン・ロスバウム氏による Iovance への投資が示す教訓としては、非常に普遍的なことですが、自分の知っている確信を持った銘柄を市場が痛んでいる時に果敢に買いに入り、大きく下げる度に挫けずに買い増し、忍耐強くロングし続けたことだと思います。

ロスバウム氏の場合は既に Iovance の価値、いずれFDAから承認されるであろうことを確信していたのではないか?と推測します。しかし、FDA承認までの時間軸は操作できませんので、割安になった時に拾い、辛抱強くロングするということだと思います。

バイオ投資には忍耐が必要であると言われています。バイオに限らず、投資とはそのようであることが多いと思いますが、バイオ投資は臨床試験やFDAの承認プロセスといった特殊な過程が必要であり、何より結果が結実するまでに非常に時間がかかります。

ダメなパイプラインのバイオ企業の株を長く持ってても何も良いことはないと思いますが、優れたデータ、優れた経営者、優れたパイプライン、アンメット・ニーズのある企業であれば、素晴らしい結果をもたらせてくれるかもしれません。

今回のウェイン・ロスバウム氏による Iovance への投資は、その時間軸、優れた投資家がかき集めている銘柄がどのような結果をもたらすのか?という点において、非常に示唆に富むものだと思います。