2025年8月15日に開示されたバイオファンドの第2四半期(Q2)の13F報告を確認し、気づいた点や注目銘柄を整理しておきたいと思います。まずは、この時期のバイオセクターの相場観を振り返ります。
バイオセクターは「トランプ関税」で悲観が極まった
Q2 の最大のトピックは、やはり4月に発動された「トランプ関税」による急落でした。
特にバイオ・ヘルスケアセクターは、2024年11月のトランプ再選後から薬価引き上げ懸念が強まり、さらに保健福祉長官に就任したロバート・ケネディ・ジュニア(RFKジュニア)氏がどんな突飛な政策を打ち出すか分からないという不確実性から、最も売り込まれたセクターの一つでした。
実際、バイオ指数「XBI」は2024年11月中旬の高値105ドルから、2025年4月初旬の安値66ドルまで下落し、約33%の下落となりました。
この背景には、ユナイテッドヘルス・グループ(UNH)の事件や、肥満治療で先行していたノボノルディスク(NVO)の急落などもあり、セクター全体の重しとなっていました。
結果として2025年Q2は、バイオセクターにとって「とどめを刺された」ような厳しい相場で、臨床段階のバイオ銘柄も軒並み売り叩かれ、市場は深い悲壮感に包まれていました。
ただし、この流れは5月中旬頃から徐々に反転の兆しを見せ始め、5月下旬〜6月には安値となったバイオ株を買い戻したり、新規に仕込むファンドも見られるようになりました。
とはいえ、多くのバイオファンドのQ2成績は非常に厳しいものとなりました。
RA Capital 25Q2 13F の洞察
RA Capital の保有銘柄も例外ではなく、大きな打撃を受けました。特に Q2 にポジションを解消した URGN、ALEC、CRVO については、取得後の急落に耐えきれず、損切りや利益確定に踏み切らざるを得なかったのではないかと推測されます。
・URGN
2024年11月に約12ドルで買い増しましたが、FDA承認への不安から株価は3ドルまで下落。実に 1/4 にまで下がり、さすがに保有継続は難しかったと考えられます。皮肉にもその後 FDA 承認を得て株価は20ドルまで上昇しました。
・ALEC
2024年11月下旬に約2.5ドルで新規取得(約9.5%のシェア保有)しましたが、トランプ関税ショックで0.87ドルまで下落。取得後に株価が 1/3 以下になり、こちらも耐えきれず売却した可能性が高いです。
・CRVO
特殊なケースで、治験失敗で一度売り叩かれた後、延長試験で有効性が確認され株価は急騰。そのタイミングを利用し、不確実な相場環境を踏まえて一旦利益確定したのではないかと推測されます。
現在は Phase 3 の試験デザインを準備中であり、詳細が固まれば再び買い戻す可能性もあるでしょう。
総括
これらはあくまで推測ですが、他の多くのバイオファンドも同様に、不確実性の中で泣く泣くポジションをクローズせざるを得なかったと考えられます。2025年Q2は、ファンドにとってもバイオ市場全体にとっても、極めて試練の大きな四半期だったといえるでしょう。
開示された13F報告書で確認できる「新規ポジション」「増加ポジション」「減少ポジション」「削除ポジション」といった情報は、あくまで数字の結果であり、その背景や意図までは直接伝わってきません。
だからこそ、単に報告書を眺めるだけでなく、自分自身が観察してきた相場感や、市場全体の流れ、さらには個別銘柄ごとのストーリーや洞察と結びつけて考えることが重要です。
注目銘柄
以下は主要なバイオファンドのポジションを分析して、今後面白そうな銘柄をピックアップします。
・CTMX
・TSHA
・OMDA
・RAPP
・JADE
・EWTX
・AVTX
・RAPT
・LRMR
・CTNM
・VSTM
いわく付きの注目銘柄
・REPL
・GHRS
・IOBT
・SRPT
買収予想
以下は新薬がFDA承認され買収されやすいのではないか?という企業と、開発中の新薬の期待値が高く買収されるのではないか?という銘柄をピックアップします。
・CDTX
・ACLX
・LENZ
・CELC
・URGN
・ABVX