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宇宙SPACの収益予測はどれ程間違っていたのか?

SpaceNews が取り上げた「2022年宇宙SPACsの予測 vs 実際の収益」を比べてみると、いかに宇宙SPACの収益予測が良いように鉛筆舐め舐め (広瀬さん曰く) されていたかが露わになってしまった。

Astra (アストラ / ASTR) については、連続した打上げの失敗以降、1年以上もロケットの打上げができていないので、投資家はある程度予想できたかもしれないが、Satellogic (サテラロジック / SALT)、Virgin Orbit (破産してしまった)、BlackSky (ブラックスカイ / BKSY) については散々な結果であり、株価もそのような流れを織り込んでいる。

また宇宙SPACの、Astra、Spire Global (スパイア・グローバル / SPIR)、Momentus (モメンタス / MNTS) に関しては2023年に米市場に残るために株式併合を余儀無くされており、それでも株価は低迷している。

何とか予想通りの収益を達成した Planet (プラネット / PL)、少し外した Virgin Orbit にしても、成長が弱いと決算後に売られており、1〜2ドルを彷徨うような状況です。また唯一、宇宙SPACの中で期待が膨らむ Rocket Lab (ロケット・ラボ / RKLB) にしても、先日の打上げミスにより第三四半期の収益予想を引き下げています。

Rocket Lab、41回目のミッションの打ち上げ中に問題が発生

全体として、宇宙SPACの収益予測は平均53%間違っていたことになる。これは大きな外れであり、宇宙SPACに対する投資家の信頼に悪影響を与える可能性が高い。

宇宙SPACの予測が大きく外れた理由はいくつかある。ひとつは、宇宙産業がまだ比較的新しく未成熟であり、宇宙製品やサービスに対する需要を予測するのが難しいことだ。

SPAC後のすべての宇宙企業は、2021年に立てた2023年の予測を下回っているようだ

宇宙経済学者のピエール・リオネ氏は、この件について次のように見解を示している。

これらのSPACのピッチデッキの分析からわかることは、ほとんどの場合、彼らは、大幅に誇張された、および/または彼らのビジネスとは無関係な TAM (ある市場で獲得できる可能性のある最大の市場規模のこと) の参照を使用していたということです(例えば、> 400Bと成長しているという BryceTech による通常の宇宙経済の数字)

もしあなたが打ち上げ会社なら、あなたのビジネスの TAM は、100億ドル未満の打ち上げサービス市場のアクセス可能な部分です。

もしあなたが衛星メーカーであれば、あなたの TAM は、政府がアクセス可能な需要(500億ドルから600億ドル)のほんの一部であり、そのうち約半分は中国である。また、政府以外の衛星需要(100億ドル未満)の何分の1かである。*

もしあなたが住宅用LEOブロードバンド事業者であれば、あなたの TAM はまだよく知られていないが、歴史的には年間2-4億ドルのオーダーである。

商業衛星のEOデータ・プロバイダーであれば、TAM は40億ドル以下であり、半分以上は米国政府からのものである。

あなたがLEOの生息地/観光/ISSサービスプロバイダーであれば、あなたの TAM は、(*) で述べた政府の需要を除いて、今日ほとんど存在しない。

もしあなたが月面でビジネスを展開しているのであれば、(*) に述べた政府需要を除けば、あなたの TAM は今日実質的に存在しない。

そして最後に、新しい新興サービスに関連する政府以外の需要のほとんどは、顧客の需要ではなく、投資家の資金によって支えられている。将来の予測モデルとしては不十分である。

免責事項:これらの数字はすべてROMであるが、IMO は、私が投資家のデッキ、プレゼンテーション、レポートでしばしば目にするものよりもはるかに現実に近い。

宇宙SPACが日の目を見る日はまだ遠く …

著名な投資家ハワード・マークスは、ポートフォリオの位置づけを変えおり、過去に金利情勢によって高いリスクを取らざるを得なかったセクターの例としては、SPAC、極端なバリュエーションのベンチャーキャピタル、有名なグロース株、その他の投機的資産などについて次のように言及している。

ハワード・マークスとデビッド・ルーベンスタインの対談

これらの資産の一部はまだ利益を生むかもしれないが、以前のように完全に市場原理で動くことはもはやないだろう。ワイン、時計、車のコレクションは常に高く評価されてきたが、近年のようなスピードではない。しかし、ハワード・マークス氏は、過去に業績は上がらなかったが、まだ利益を上げている資産こそが、今後際立つものになると考えているという。

続けて、利益があり、確固たる競争力を持ち、成長を遂げている企業を買うことである。企業が抱える赤字をファイナンスするために株式を発行しなければならないような成長ではなく、最終的には債券のフィクスト・インカムになると彼は言う。

総括すると、残念ながら今から買える宇宙SPACはないのかもしれない。筆者は宇宙SPACブームから数社の宇宙SPAC株をロングしているので、まだまだ長い旅が続きそうである。怖いのは、旅の途中で幾つの宇宙SPAC企業が生き残れるかである …