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2023年、中国経済の見通し

2023年、中国経済の見通し

中国は3月5日、第14期全国人民代表大会 (全人代) が北京で開幕し、23年成長率目標を「5%前後」の低い水準で設定しました。ちなみにまだロックダウンをしていた、昨年の中国の成長率は「3%」でした。

このニュースに対して、一部の投資家の間では、「今まで高過ぎる目標に対して統計に怪しさがありそれを払拭する誠実さが垣間見えて逆に市場には好感されそうな予感…」と受け取るなど賛否両論で、

殿がレスポンスしているように、「いやそれでも本当に5%で成長してるの?鉛筆舐め舐めし続けとるとしか言いようがない …」というような意見に一票入れたいと思います。この件について、北京大学光華管理院の財務教授の Michael Pettis 氏が Twitter スレッドで触れていますのでご紹介します。

中国経済の見通し

ブルームバーグが中国経済の見通しについて解説している。より政治的で、より技術的でない新しい政策立案者たちが、多くのアナリストが想定しているほど中国にとって悪いことではないかもしれないという点には同意するが、中国経済に対する彼らの評価には同意できない。

前者については、こう言っている。「経済学の教科書に忠実であることよりも、トップからの信頼や、中国の激しい政治体制に耐えてきた経験、政策決定への現実的なアプローチの方が重要なのかもしれません。」

「もしそうなら、新しいチームは、中国が今必要としている痛みを伴う改革を推進するために、前任者よりも良い立場にあることが判明するかもしれない」と彼らは続けている。私はこれまでずっと、同じような主張を (特に静かにではなく) してきた。

中国経済の不均衡を解消できるのか?

というのも、数十年にわたって経済史上最も深刻な不均衡を引き起こしてきた中国の見通しは、主にこの不均衡を解消できるかどうかにかかっているからです。必要な政策は明白だが、政治的に実行するのは非常に難しい。

しかし、北京が「労働者の生産性を高め、貿易と技術の関係を安定させ、急速に進む高齢化を相殺する改革を実施すれば、中国は2030年まで平均5%に遠く及ばない年間成長率を記録できる」という意見には、それこそ同意しかねるのです。

彼らの主張の一部は矛盾している。もちろん、労働者の生産性が十分に高まれば、中国のGDP成長率は5%、6%、あるいは10%に上昇する可能性があります。それは定義上正しいことだ。しかし、彼らの主張は、過去の間違いは、過去と未来の生産性指標とは無関係であることを前提としている。

持続不可能なインフラ投資の果てに

この暗黙の前提は、適切な改革を行えば、中国をクリーンな状態でスタートさせることができるというもので、10年以上にわたる誤ったインフラ投資、膨大に拡大した不動産部門、世界で最も高い債務水準がなかったかのようなものです。

つまり、持続不可能な債務の増加によって、経済にとって実質的な価値が疑わしい経済活動を生み出しているのです。

言い換えれば、過去10年間のソフトな予算の「成長」の多くは、逆転しなければならない。あらゆる歴史的先例が思い起こさせるように、中国がバランスシートに埋め込まれた隠れた損失を転嫁できるほど速く債務を増やすことができなくなれば、すぐに逆転するのである。

この成長モデルに従ってきたすべての国で、健全な成長の時期があり、その後、債務の急増によって非常に不健全な成長の時期があり、その後、非常に困難な (そして一見青天の霹靂のような) 調整が行われたのには理由があるのである。

重要なのは、世界中のあらゆる改革が、長年にわたる投資のミスアロケーションを突然消滅させることはできないということです。過去10年間の成長に問題がなかったのであれば、心配する必要はない。もしあったのであれば、最終的にはそれを説明しなければならない。

— 翻訳ここまで —

以上のように、北京大学光華管理院の財務教授の Michael Pettis 氏は疑問を投げかけている。ここ数年中国の不動産バブルが騒がれて久しいが、毎回その後どうなったのか?というのが闇に葬られてしまっている。中国経済はコロナ以降、正しい経済の数字を把握するのが極めて難しくなっている。

中国株は1月から2月にかけてデットキャットバウンスのような様いで反発しているが、ここからは中々買いにくいのではないか?と思っている。人口動態では遅れてきた日本のように少子高齢化が叫ばれており、全人代で国防費を「7.2%増」したことからも、不況部分を軍事生産を活発化してくるのではないか?という懸念を抱かずにはいられない。

ちなみに全人代後の中国マーケットでは、インフラ関連株、ドライバルク、不動産株が下落している。

米中半導体戦争

もう一つポイントとして、今回の全人代では、テンセント創業者ポニー・マー、バイドゥのCEOロビン・リーなどのネット企業の代表が外され、代わりにハードウェアの会社SMICなどの企業が含められていることが注目されています。

【選書】半導体戦争 : 世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防

この背景にあるメッセージとしては、中国は半導体開発に力を入れていくというメッセージが発せられていると思います。この件については、正にオンタイムな本として、クリス・ミラーの著書『半導体戦争 : 世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防』が描くような米中半導体戦争の火蓋が正に切って落とされたのではないかと思います。