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日本の限界点、先回りして考えられない者は餌食に

日本の限界点、先回りして考えられない者は餌食に

2023年8月24日午後1時ごろ、東京電力による、福島第一原子力発電所にたまる放射性物質を含むALPS処理水の海洋放出を開始したことが国内外で大きな問題 (メディアが必要以上に騒いでいる) となり、中国もこれみよがしに反応を示しています。

ALPS処理水とは、東京電力福島第一原子力発電所の建屋内にある放射性物質を含む水について、トリチウム以外の放射性物質を、安全基準を満たすまで浄化した水のことです。

今回は少し視点を変えて、この問題が決定実行されるまでの、日本政府というか日本の意思決定の限界点について触れてみたいと思います。

日本の意思決定は、破綻確実になるまで放置される

コンサルタントの永江一石氏は、この件について日本の意思決定の限界点を次のように指摘しています。

処理水排出は政府与党にはポピュリズムが過ぎて、決断力、実行力がないということを浮き彫りにした。しかし、処理水はもうこれ以上は貯め込めないという限界があったからしぶしぶ決断したわけで、社会保障も同じように破綻確実になるまで放置されるかと思うとゾッとする。完全に行き詰まるまで放置か

正に今回の原発処理水は、ある意味もうひたひたで一杯、置き場もなく処理水を海に流す以外選択肢がなくなった … という限界突破したことで止む無く放出せざるえない状況に追い込まれたことを指摘しています。

同じような光景は何度も見てきていると思いますが、例えば日本の為替に対する日銀の何もしないポーズだけの反応は完全に物事を放置しており、割を食うのは日本円しか持っていない庶民でしょう。

このように、日本はいつからか、どん詰まるまで限界突破するまで、意思決定と実行力に欠けるという惨事が恒例となってきました。そして、永江氏が指定するように、次のビックイベントとして日本の社会保障の限界突破が懸念されます。

社会保障という次なる時限爆弾

社会保障については、日本だけではなく、先進国で既に先送りすることのできない問題となっています。先手を切ったフランスのマクロン大統領は、2023年4月に年金改革「2023年社会保障財政修正法」を公布し、年金の受給開始年齢を62歳から64歳へ引き上げました。

このマクロンによる年金改革の公布を受けてフランスの市民は立ち上がり、その後街を焼き尽くす暴動にまで発展します。著名な投資家のスタンレー・ドラッケンミラー氏は、2023年の投資会議で、米国は高い債務残高と急速な高齢化によって財政危機に直面していることを次のように警告しています。

高齢者への支出は現在の税金の40%を占め、25年以内に70%まで上昇すると予測している。何も変わらなければ、明日の年金は今の数分の一になり、医療費の半分以上は国が負担してくれなくなる。

20年後、30年後には、若い労働者が減り、支援を必要とする高齢者が増え … その出発点が、史上最高の国家債務なのです。だから、もしあなたが、現在の高齢者のように快適な老後を過ごせると信じているのなら、もう一度考えてみてください。

気候変動と戦うための資源があると信じているのなら、考え直したほうがいい。算数が成り立たないのです。

ドラッケンミラー氏は続けて、増税と福祉支出の削減以外に選択肢はないと考えている。

福祉を削減する必要はない、というのは嘘であり、幻想です。問題は、今削るか、後で削るかのどちらかである。そして、後になればなるほど、もっと事態は悪くなる。

日本の少子高齢化の本当の負担増はこれから、壮絶なことになる

これが米国の現状であり、世界で最も高齢化が急速に進んでいる日本では、これから壮絶なことになることが予想される。ある海外を拠点に活動する投資マスターは、日本の高齢化について次のように指摘している。

少子高齢化の本当の負担増はこれから。「やめてくれ、これはかなわない!!!」という悲鳴が聞こえてくる。実際の負担が増えるのはこれからで、今まで日本が経験したことは序の口だったこれから壮絶なことになると思う。これは日本だけではなく、韓国も中国も酷いと思う。人口動態的にもう終わっているから。

日本円のキャピタルフライト

「貯蓄から投資へ」というスローガンの元、新設された新NISAが、円のキャピタルフライトを招くとは。現実の新NISAは、「貯蓄から逃避へ」というのは鋭い洞察です。

日本のあらゆる深刻な問題は手遅れになるまで先送りされる

止めを刺すように、作家の藤沢数希氏は次のように鋭く切り込む。

日本のあらゆる深刻な問題は、もうどうしようもなくなるまで現状維持される。これは間違いないことです。だから、中途半端に日本を浮上させるようなものはすべて延命策であり悪手です。底を打つまでの衰退期間を伸ばす効果しかありません。

言い得て妙とはこのことで、日本のあらゆる深刻な問題は限界を迎えるまで維持され、先送りされ、延命され、時間稼ぎされ、更に事態が悪化します。日本が意思決定して実行する時には既に手遅れであり、庶民は問題を受け止めるしか術がありません。

これまで過去の経験や現状を見ると、深刻な問題が長期間放置され、緊急性が高まるまで対応が遅れる事態が永遠に繰り返されています。このような状況は、政治の意思決定の過程や官僚制度、さらには国民の意識や文化など、多くの要因が絡み合っているものと考えれます。

このことは非常に示唆的で、深刻な問題が先送りされ限界突破する前に、できるだけ早く、このことに気づいた日本の国民ひとりひとりが自分で対処する術を持つしかないのです。

例えば日本の年金システムを破綻している、将来自分が貰える年金はスズメの涙だろう … と気付いた次の瞬間に、新NISAの準備を始めるとか、iDeCo を始めるとか、所謂自分年金の積立を開始しなければいけません。