スタンレー・ドラッケンミラー氏は、2023年5月に行われた USC Marshall Center for Investment Studies の基調講演で、投資家は「謙虚さ」が欠かせないことについて述べている。
確かに成功している投資家の多くを見ていて思うのは、彼らは常に学ぶ姿勢を持っており、地に足が着いており、スマートで謙虚な姿勢が伺える。日本のモダンな映画『男はつらいよ』でも渥美清演じる寅さんが、最近どうよ?とふられると決まって、「地味な暮らしよ」と返すように、謙虚な姿勢・視座は注目に値する。
一方で、背中に羽が生えたと勘違いしている一部インフルエンサーや YouTuber、魔が差してしまった大谷翔平の元通訳、水谷一平氏からは、謙虚な姿勢を感じことはできないだろう。今回は、投資家に必要な “謙虚さ” について、ドラッケンミラー氏のスピーチを元に考えてみたいと思う。
この職業には謙虚さが欠かせない
謙虚さといえば、私が観察してきたことがある。私は30代や40代の頃ほど鋭い投資家ではない。予測能力は向上したかもしれないが、決断はそれほど早くはない。
私が20代の若手を雇う傾向があるのは、傷だらけになると意思決定が重荷になるからだ。この職業には謙虚さが欠かせない。私の成功について尋ねられると、オープンマインドであることを挙げることが多い。
私はポジションに執着しない。何年も保有するつもりだった投資を、状況の変化により1週間で売却したこともある。
己を知り、オープンマインドであるべし
この発言は、年齢とともに変わる自身の投資スタイルや意思決定のスピード、そして若い世代の雇用の理由などが述べられています。ドラッケンミラー氏は、30代や40代の頃の自分が持っていた鋭さや迅速な意思決定能力とは異なり、現在はより慎重になっていることを認識しています。
しかし、それは必ずしも悪いことではなく、予測能力が向上しているとも感じているようです。20代の若手を雇う理由として、彼らが持つフレッシュな視点 (ドラッケンミラー氏のジェネレーティブAIプレイ銘柄、NVIDIA、Microsoft についても、若手のAIに関する洞察が多く反映されているとのこと) や迅速な意思決定能力を評価していることが伺えます。
また、経験を積むことで傷を負い、それが意思決定の重荷となることを自身の経験から知っているため、若手の力を借りることでバランスを取ろうとしているのかもしれません。
最後に、ドラッケンミラー氏が投資家としての成功の要因として「オープンマインド」を挙げている点は興味深いです。固定観念にとらわれず、状況の変化に柔軟に対応する姿勢が、彼の成功の背景にあることがわかります。
状況が変わったら、素早く行動しなければならない
状況が変わったら、素早く行動しなければならない。これは20年前もそうだったが、インターネットが普及し、情報が即座に得られるようになった現在では、さらに当てはまる。
最近、ノルウェーのジャーナリストとのインタビューで、私は直感したら、かなりの投資をしてから研究すると話した。もし調査結果が一致しなければ、私はその投資を手放す。
ペースの速い現代社会では、躊躇していると乗り遅れてしまうかもしれない。私は常に、状況が変わったら迅速に動くべきだと考えてきた。
迅速な意思決定の重要性
現代の情報化社会における迅速な意思決定の重要性について述べています。特に、インターネットの普及により情報が瞬時に手に入るようになった現代において、迅速な行動がより一層求められます。
ドラッケンミラー氏は、自身の経験を通じて、直感に基づいて投資を行い、その後で詳細な研究や調査を行うという方法を採用していることを明らかにしています。これは、情報が溢れる現代において、先手を打つことの重要性を示していると言えるでしょう。(今回のAI銘柄、NVIDIA、Microsoft に関しても底付近で購入しています)
もちろん、その後の調査結果が直感と一致しなければ、ドラッケンミラー氏は投資を撤退すると述べており、冒険的な行動だけでなく、冷静な判断も併せ持っていることが伺えます。
ドラッケンミラー氏は「ペースの速い現代社会では、躊躇していると乗り遅れてしまうかもしれない」と述べており、迅速な行動の重要性を再度強調しています。これは、現代のビジネスや投資の世界において、迅速な意思決定と行動が成功の鍵であるとも言えます。
直感
私が直感で何かを理解したとしても、私がまだ分析段階にある間に、他の誰かが同じ結論に達するかもしれないと信じてきた。だからといって、下調べをしないわけではない。
確かにそうだ。しかし、何かについて強い直感があれば、まず投資し、それから調査する。調査結果が一致しなければ、撤退する。
直感と分析のバランス
直感と分析のバランスについてのドラッケンミラー氏の考えを示しています。ドラッケンミラー氏は、直感に基づいて行動することの重要性を認識している一方で、それだけに頼るわけではありません。
ドラッケンミラー氏が「他の誰かが同じ結論に達するかもしれない」という考えを持っていることから、競争の激しい投資の世界において、先手を打つことの重要性を感じていることが伺えます。
しかし、それによって無闇に行動するわけではなく、しっかりとした下調べや分析も行うことの重要性を認識しています。また、「何かについて強い直感があれば、まず投資し、それから調査する」と述べていることから、ドラッケンミラー氏はリスクを取ることの大切さと、その後の冷静な分析による判断のバランスをとることを重視していることがわかります。
これは、成功する投資家が持つべき資質とも言えるでしょう。