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個人投資家が知っておきたい相場のサイクルと経済のサイクル

個人投資家が知っておきたい相場のサイクルと経済のサイクル

こちらの記事では、個人投資家が知っておくべき「相場のサイクル」と「経済のサイクル」についてご紹介します。日本の季節や、ファッションのトレンドが時代によって移り変わる (サイクル) ように、相場にもサイクルが存在します。

相場のサイクル、経済のサイクルを知るには、実際に「相場」、「経済」、「金利」のサイクルを経験しながら学び理解し、その中で株式がどのように動くのかを観察する必要があります。

相場のサイクルを学ぶ本

まずは準備運動して「相場のサイクル」を捉えるために、ハワード・マークス著『市場サイクルを極める 勝率を高める王道の投資哲学』を一読下さい。まずはそこからスタートしましょう。

本を読むだけでは相場の上部しか分かりませんので、実際に相場に資金をベットし (身銭を切って)、日々の相場を観察することで得られる相場の経験値を積み上げていきましょう。

4つの相場のサイクル

株式相場のサイクル

相場のサイクルには、上記画像のように4つの相場のサイクルがあります。それぞれの相場のサイクルによって、どのセクターに妙味があり、どのセクターが売られる … など、相場の移り変わりによって変化します。

相場のサイクルを知る、理解するには、実際のその時々の相場のサイクルを身を持って体験するに限ると思います。相場のサイクルを学ぶには、相場を日々観察し、その移り変わり変化を観察し学び続けるしかありません。

相場と経済のサイクル

・金融相場

経済が景気後退 (リセッション) したことで、FRBが金融緩和を行います。すると金利が低下し、バリエーションの高いテクノロジー株が買われます。こうして金融相場が幕開けします。

・業績相場

業績相場では、FRBによる緩和マネーが実態経済に波及し、好景気により業績の良い企業が増えます。ある段階になっていくと実態経済から外れたような株価で取引される銘柄が増え始めます。バブルが形成されるとどこかで弾けます。

・逆金融相場

景気が過熱し過ぎると、FRBが金融引締めを開始します。すると金利は上昇し逆業績相場となります。これまで相場をリードしてきたテクノロジー株などが大きく売られます。

・逆業績相場

最終的に金利がズンドコ上昇し、消費や経済が鈍化すると企業業績も悪化し逆業績相場となり、ほとんどの株が売られます。金利はピークをつけ、経済も不景気になります。

このように相場は、「金融相場」→「業績相場」→「逆金融相場」→「逆業績相場」のように移り変わっていきます。ポイントとしては、金融相場では、押し目は買いであることが多いです。

金融相場後のベアマーケットでは、押し目だと思って買いに入ってもやられてしまうケースが多くなります。相場によって異なる動きをしますので注意しましょう。

海外で紹介されている相場のサイクル

1. アキュムレーション・フェーズ (買い集め)
2. マークアップ・フェーズ (値上げ)
3. ディストリビューション・フェーズ (売り抜け)
4. マークダウン・フェーズ (値下がり)

海外では上記のように相場の4つのサイクルが分けられています。最初に紹介した4つの相場と同じような意味合いで、「アキュムレーション・フェーズ (買い集め)」は、量的緩和による低金利で相場の1階目から買って入るタイミングです。

「マークアップ・フェーズ (値上げ)」では、景気回復による業績改善が成されます。「ディストリビューション・フェーズ (売り抜け)」では景気は天井を付け、テパーリング、利上げ行われます。「マークダウン・フェーズ (値下がり)」では、景気悪化、業績悪化で株は売られます。

経済と相場のサイクル

経済と相場のサイクルの画像

こちらは経済と相場のサイクルを表した画像です。見て頂くと分かる通り、経済と相場のサイクルにはタイムラグが発生していることがお分かり頂けると思います。

なぜこのようなタイムラグが発生するのか?というと、株式には先見性があり1年先を織り込むとも言われています。株式は実体経済よりも早く経済の滑った転んだを織り込むという特性があることを覚えておきましょう。

このようなことから、実態経済が良くなってから株を買うのではタイミング的に若干遅く、セクターによっては不景気 (リセッション) が訪れる少し前にポジションを取っておくと、お宝ポジションになりやすいです。

上記の画像では、経済のサイクルに合わせて妙味があるとされる投資セクターを表しています。一例としては、不況期にテクノロジーセクターを仕込み、景気が良くなってきたら利確するなどの戦略が考えられます。

しかし、株式相場の難しいところは、必ずしも不景気 = ハイテク株を仕込む!が正解にならない時があります。それは、正に2023年1月のような相場で、眼前に不景気は迫っている (又は既に不景気入りしている) にも関わらず、ハイテク株は売られ続けるというようなことが起きました。

何故このようなことが起こったのか?というと、これまでの相場では景気が冷え込むとすぐにFRBが金融緩和 (利下げ) して救済してくれましたが、今回は1970年代のようにインフレが再燃してしまうことを恐れ、FRBはデータで明確に雇用が弱くなってきたことを確認できるまで、そう易々とは手出しすることができません。

するとこれから景気後退することで、ハイテク株の成長も鈍化しますのでバリエーション的にも手が出しにくく売られてしまいます。このように、経済と相場のサイクルを説明した画像を見る分には何となく理解できた気になりますが、実際に相場で身をもって経済と相場のサイクルを体験すると、この画像からは見えてこない部分を学ぶことができます。

金利のサイクル

金利のサイクル

こちらの画像は、アメリカのフェデラルファンド・レート (FF金利) を表しています。斜線の灰色部分が景気後退を表しており、アメリカは1955年以降、計11回の不況 (リセッション) を経験しています。そして不況の前には必ず中央銀行 (FRB) による金融引き締め (金利が上昇) のサイクルがあったことが分かります。

このように株式投資をするにあたり、金利が上がるのか?下がるのか?を読めないことには話になりません。というのも、株式と金利はシーソーの関係で、株式における金利 (アメリカの金利) がどれくらい重要かと言うと、金利が7割に対して業績は3割と言うプロの投資家もいます。

例えば、Apple (アップル) は今後、自動運転の自動車も開発し天下を取るんだから、長期投資でガチホだ!と凄んだところで、金利が上昇すれば Apple の株は売られます。現に、Apple の株は2022年の1月に付けた高値から2023年1月にはマイナス30%売られています。

(Apple の株が売られた背景には、金利の上昇による経済の鈍化、Apple 製品の多くを手掛ける中国工場のロックダウンによる製造ラインの停止などによる減産など、複雑な要因が絡み合い株価は下落しました。)

このように金利サイクルは、経済や貿易のサイクルと密接に関連しています。理論的には、金利の動きは経済サイクルを反映しており、景気が良すぎてインフレ圧力が高まると、中央銀行 (FRB) は経済を冷やすし、インフレを防ぐために金利を引き上げます。金利が上がると株式や債券は売られます。

金利と債券の関係

金利と債権の関係

同じように、金利が上昇すると、債券の価格は下落します。これは正に2022年の大きなベア相場がそうだったように、FRBがひっちゃきになって政策金利を上げている局面では、債券価格は大きく下落しました。

上記画像は、債権のETF TLT (iShares 20 Plus Year Treasury Bond ETF) の2022年〜2023年までのチャートです。FRB がひっちゃきになって政策金利を4会合連続で0.75ポイント引き上げを行っていた緑の線の期間、債権は下落を続けています。

債権価格が下落からバウンドしたオレンジの線では、FRBの利上げ幅が縮小され、これまでの0.75ポイントから0.5ポイントになったことで、今後利上げ幅が縮小されるのでは?という思惑から債権が買われ始めました。

FRB の金融政策

マーケットメイカーとしての FRB (中央銀行) に注目

金利のサイクルを知るには、FRBの金融政策を理解することが大切です。FRBは経済状況を観察しながら、不況になれば金融緩和を行い金利を引き下げます。逆に経済が過熱し過ぎると金融引締めを行い金利を引き上げます。このように金利をコントロールするマーケットメイカーの役割を持っています。金利を読めるようになるには、FRBの金融政策についても勉強しておきましょう。

景気循環と金利で見たセクターローテーション

出典:コンテクスチュアル・インベストメンツ

上記の画像は、景気の循環と金利で見たセクターローテーションの図です。株式投資をしていると、「セクター・ローテーション」というワードを聞くことがあると思います。セクター・ローテーションとは、投資家やトレーダーが景気循環の次の段階を予測し、株式に投資した資金をある産業から別の産業に移動させることです。

経済は、ある程度予測可能なサイクルで動いています。様々な産業とそれを支配する企業は、サイクルによって繁栄したり低迷したりします。このようなことから、セクターローテーションという投資戦略が生まれました。

この図を見ると、景気が良く金利が低い場合は「ハイテク」株に妙味があり、景気が悪く金利が高い場合は「エネルギー」株に妙味ある、という風に見ることができます。

景気後退が来れば、景気に左右されないヘルスケア、消費安定株、公共株が買われる局面がやってきます。

ブル・マーケット/ベア・マーケットのサイクル

画像は長期のS&P500の株価のチャートを表しています。この画像では、株価が大きく上昇するブル (強気) 相場が数十年あった後にベア (弱気) 相場があり、そこから数年株価はボックス圏で推移し、再びブル相場を迎えるというようなブル・マーケット/ベア・マーケットのサイクルを読み取ることができます。

相場の格言に、「強気相場は悲観の中で生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で成熟し、陶酔の中で消えていく」というものがありますが、相場は何をもって強気相場と定義し、何をもって弱気相場と定義するのでしょうか?

一般的には、市場指数 (S&P500とか) が直近のピーク (天井) から20%下落すると弱気相場入りと言われます。直近の例では、2021年11月〜2022年1月で、このタイミングで相場は大きな弱気相場入りしました。

強気相場は、指数が直近の底値から20%上昇したときに発生します。直近で言えば、2020年のコロナショック後の金融相場で株価は右肩上がりの強気相場入りしました。

株価は4年周期で動くと考えられており、アナリストの Javed Mirza 氏は、2021年前半の残り期間ではS&P500は上昇を続けるが、後半から2022年にかけては4年間のサイクルがリセットされ、投資家はよりディフェンシブな銘柄にしばらく避難するのが賢明であると述べています。

強気相場の後には必ずプルバック、弱気相場がやってきて、株価は下落、調整しながらボックス圏で推移することを把握しておきましょう。ブル相場の最後の方で大きく買いに入ってしまい、その後ポジションが上手くいかなかった場合は早めに損切りするようにしましょう。

投資家にとって大事なことは、自分の誤りを認めすぐに君子豹変することです。自分の意見に拘ったり、君子豹変できない人ほど株式投資では負けています。

相場の大局観を手に入れよう

まずは長期的な相場のサイクルを捉えられるように訓練しましょう。それにはやはり、相場の経験値が物を言うと思います。2020年の金融相場では株式はどうだったのか?

2021年金融相場の終わりに何が起きたのか?何が要因で金融相場は天井を付けたのか?2022年の大きな弱気相場は何を意味 (リセッション) していたのか?その原因は何だったのか、どこで相場は何を理由に反転したのか?

など、実際に相場を経験しながら「株式」、「金利」、「債権」、「原油」、「為替」、「経済」、「地政学」、「企業の業績」はどうだったかを身を持って体験しながら、相場のサイクルを実際に経験することが大切です。

最後に長期、中期、短期で投資戦略を練る際のアドバイスをご紹介します。これはシリコンバレーの投資家キースさんが教えてくれた基本となる考えです。

長期投資をするなら : マクロ分析が必須

長期投資をするのであれば、マクロ分析ができないと話にならないかもしれません。金利、経済、地政学、金融政策など幅広い知識とトレンドを追った分析が必要です。

中期投資をするなら : 企業の決算などのファンダメンタルが読めないといけない

中期投資の場合は、企業の決算を見る目、ファンダメンタル (企業の財務的または経済的な健全性に寄与する基本的な定性的および定量的な情報と、その後の財務的な評価) を理解することが必要です。

短期投資をするなら : 日々のポジショニングと需給を読むこと

短期投資 (デイトレ) であれば、日々のポジショニングと需給とシンプルですが、需要と供給を見極める必要があります。投資における需要と供給の関係株価収益率が低ければ需要は増えるし、高ければその懸念から需要は減るが、これも需要と供給の関係です。

今の相場のサイクルは?

2020年コロナショックの無制限の金融緩和により始まった「金融相場」は、その後2021年11月に天井をつけました。その間好景気もあり少しだけ「業績相場」の期間もありました。

2022年は「逆金融相場」と共に始まり、FRBがひっちゃきになって金利を引き上げたことで株価は長い下り坂を転げ落ちました。現在はFRBの金利引き上げがそろそろ効いてきて、実体経済の眼前に不況が迫ってきていますので、そろそろ「逆業績相場」に突入するかもしれないという局面だと思います。

様々なサイクルを学ぼう

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