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【レビュー】メガスレット -世界経済を破壊させる10の巨大な脅威-

本書『MEGATHREATS (メガスレット) 世界経済を破滅させる10の巨大な脅威』を紹介する前に、著書で経済学者の Nouriel Roubini (ヌリエル・ルービニ) 氏が、2023年3月31日にブルームバーグに出演し、経済・金融の “最終的な” 大暴落を予見しているのでご紹介しておこう。

ヌリエル・ルービニ氏は、今後、経済と金融において不況が起きると警告しています。彼は、過去と比べて現在は借金が多く、利率が5%または6%に上がることが『MEGATHREATS (メガスレット)』であると述べています。

70年代に比べて、今は負の供給ショックがあり、成長が鈍化し、インフレーションが引き起こされています。個人と公共の債務比率は、GFC危機後にも増加しています。

また、GFC危機時には住宅と抵当権の問題がありましたが、今回はインフレが原因で利率を引き上げる必要があるため、経済成長、物価安定、金融安定を同時に実現することはできなくなると述べています。最終的には、経済的にも金融的にもクラッシュが起こると予測されます。

『MEGATHREATS (メガスレット)』

下町の本屋で手に取ったのは、なかなかセンセーショナルなるなタイトル『MEGATHREATS (メガスレット) 世界経済を破滅させる10の巨大な脅威』の目立つ本。著者のヌリエル・ルービニ氏は、世界金融危機を予言した人物として知られています。

著名な専門家、『ブラック・スワン』でお馴染みのナシム・ニコラス・タレブ、経済学者で著書『国家は破綻する』で知られるケネス・ロゴフ、英ケンブリッジ大学クイーンズカレッジの学長モハメド・エラリアン、政治学者イアン・ブレマー等が賛辞を寄せており、これは!と購入しました。

この本は、今後20年にわたって人類の未来を脅かす巨大な脅威を中生的な視点で論じいます。ただし、これらの脅威は2022年の時点ですでにその姿をはっきり表しており、先進国ではインフレ率が急上昇すると同時に景気後退で債務が高まり、スタグフレーションの危険性が復活してきたと述べている。

このことからも本書は、個人投資家の危機管理マップとしても機能するのではないか?と思います。目先、そしてこの先の数十年どのような巨大な脅威が世界を待ち構えているのか?どのような脅威がどのように絡み合って崩れ落ちていくのか?そのような危機管理を脳内で今一度シミレーションするのに一役買ってくれそうです。

この本で取り上げている巨大な脅威の多くは、ある問題の解決だと思われた行動から応じている。つまりひとつひとつの脅威と言われるものは、独立しているようで複雑に絡み合っており、インフレのような脅威が今度はスタグフレーションに姿を変え脅威となるような、FRBがインフレ退治のために行った短期間での強力な利上げがスタグフレーションを齎すというように連動しているとも言える。

金融の規制緩和、非伝統的なマクロ経済政策、工業化の推進に伴う脱炭素、製造業の国外移転、AI開発、中国の国際競争力の強化、等々 … 既に製造業の国外移転はメキシコ経済に大きな利益をもたらしており、メキシコのモンテレー近郊のサンペドロに本社を置くメキシコの空港運営会社 Grupo Aeroportuario Centro Norte などの株価を見れば納得することができる。

破滅は目前だ。平和と繁栄の好循環は終わった――10の巨大な脅威に備えよ!

破滅は目前だ。平和と繁栄の好循環は終わった――10の巨大な脅威に備えよ!金融・財政の緩和に過剰債務が重なった現在、1970年代のスタグフレーションとは比較にならないレベルの「大スタグフレーション債務危機」が待っている。世界金融危機を予見した「破滅博士」が世界大混乱を警告。

10の巨大な脅威 (MEGATHREATS)

・過剰債務の罠とバブル
・過剰な財政出動
・国際準備通貨たる米ドルの信用失墜
・脱グローバル化
・人口の時限爆弾
・中国陣営と西側陣営の新冷戦
・不平等の深刻化
・気候変動による災害の激甚化
……など

本書に寄せられた賛辞

「事前警告があれば、事前準備ができる。本書を読み、備えよ」 – マーティン・ウルフ

「現在の経済状態に関する最も明快な解説」 – ナシム・ニコラス・タレブ

「間違いなく見事な分析」 – ケネス・ロゴフ

「楽観的な予想ではないが冷静な分析である。必読」 – バリー・アイケングリーン

「本書の警告を無視するなら、命がけの覚悟で」 – モハメド・エラリアン

「人類全体への警鐘」 – イアン・ブレマー

好むと好まざるとにかかわらず、危機は迫っている。人類が直面する巨大な脅威は世界を大きく変えてしまうだろう。生き延びたいなら、見ないふりをしてはいけない。備えることだ。

レビュー

この本は2022年11月現在、既に進行しており複雑に絡み合う10の脅威を、”メガスレット” として警告を鳴らしています。もしあなたが個人投資家であれば、2022年はインフレによる大きなベア相場を経験したことになると思いますが、この本で著者のヌリエル・ルービニ氏は、次のテーマとしてインフレからスタグフレーションに焦点を当てています。

専門家の間ではインフレが一時的かそうでないか議論されているが、私の主張が違う。スタグフレーションを警戒せよと言うことだ。景気後退と失業率の上昇と子インフレが同時に置き、その後の雇用の伸びが期待できなくなるだろう。すでに条件は揃っている。 – ヌリエル・ルービニ

アメリカの元財務長官でマクロ経済学者のラリー・サマーズ氏も、2022年夏頃に Bloomberg のインタビューで、スタグフレーションについて言及している。

FED が引き締め政策を力強くやり遂げなければ、経済成長が落ち込みインフレは居座り続けるスタグフレーションに陥るだろう。 – ラリー・サマーズ

今一部の個人投資家は、希望的観測を持ってやられになったハイパーグロース株や半導体銘柄などを拾っている。また著名な投資家として知られるジョージ・ソロス氏やドラッケンミラー氏も先日 (第三四半期) 開示された Form 13F で Amazon (アマゾン) の株式を取得していることが報じられていますが、その後に事故とも言えるイーロンマスクによる Twitter 買収によって露わにされた、ハイテク企業の肥満体質 (多くのスタッフをレイオフ) が他のハイテク企業にも飛び火しており、このセクターが嫌気されている。

更に、世界最大のヘッジファンド Bridgewater 創業者のレイ・ダリオ氏も先日 Business Today のインタビューで以下のように述べている。

中央銀行は今やインフレと経済成長のトレードオフを迫られている。残念ながらこの困難な状況はスタグフレーションを引き起こすだろう。 – レイ・ダリオ

つまり、スタグフレーションを警戒する専門家や著名な投資家が増えており、この本で紹介している10のメガスレットのうちいくつかは既に動き出しています。2022年後半はバブル資産の終焉というか、FTXの破綻から仮想通貨の長い冬の時代突入、2021年から続くピークデジタルと、ネット企業の広告ゼロ成長、イーロン・マスクが露わにしたハイテク企業のメタボ体質など … バブル資産の崩壊が始まっています。

もしあなたが個人投資家であれば、今はもしかすると嵐の前の静けさなのかもしれません。2022年11月下旬現在、相場は「逆業績相場」へと移るタイミングであり、相場のサイクル的には、いよいよ2023年以降、相場は振り出しに戻り、相場の一階部分から投資できるのではないか?と、捉えることができると思いますが、この本『メガスレット』を危機管理マップとして広げ、これから起こりうる脅威的な危機に備える必要があるかもしれません。

過剰債務の罠とバブル

本書でも扱っている「過剰債務の罠とバブル」という項目がありますが、金融市場ストラテジスト Sven Henrich 氏は、FRED 最新の「連邦政府経常支出 : 利子の支払い」を見て以下のように述べています。

借金の利息が行く。ウィィィィーッ…。今のアメリカの年間軍事予算全体より大きい。しかし、ソフトランディングの物語を売り込みながら、金利を上げ続けよう。債務上限に関する議論がうまくいくことを祈る。

ちなみに、天井の「議論」はどうせ茶番で、周囲で燃え盛るこの資金調達の火に追いつくほど削減することはできない。不況になる前に赤字が大幅に増え、さらに高い金利で借金をする必要がある。

これは、14年間にわたる両党による安上がりな資金調達と無謀な支出によってもたらされた、数学的破滅のループである。

そして、これらの利子負債を考えるために、アメリカ政府の2022年の裁量支出予算と、アメリカの軍事予算が他の全てとどう関係しているかを見てみよう。教育、健康 (笑)

第二次世界大戦後とは異なり、必要な成長をもたらす人口統計のトレンドはない。人口増加はどこでも減速しているので、実際には全く逆である。

しかし注意したいのは脅威が収まるまで待っていたのでは相場でパフォーマンスを上げることはできないということです。ロスチャイルドは、「街に血が流れているときに買え」という名言を残しているように、その時 (サイクルやチャンス) を見極め出動する投資家としての度量が試される訳です … モルガン・スタンレーのマイク・ウィルソン氏は、CNBCの記事で以下のように述べています。

S&P500は来年 (2023年) の第1四半期のいつか「新安値をつけるだろう」と述べ、「3000ドル台前半は、この弱気相場の安値を考えるのに実に良いレンジだ」と付け加えました。

「来年末までに、収益が再び加速する2024年を視野に入れることになるからだ」と彼は言った。同行の来年の米国株見通しで、ウィルソン氏は、来年の米国株の見通しについて、S&P500種指数が年初の3カ月間に3,000~3,300ドルまで下落すると予想している。

投資銀行の言うことなんて信じられるかよ、という気もしますが、このような見通しと本書『MEGATHREATS (メガスレット)』を手に、ああだこうだ思考するのも面白いのではないかと思います。クーリエ・ジャポンでも特集が組まれていますので、こちらもチェックしてみて下さい。

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