Zoomy

100バガー株についての知見が得られる著書『100 Baggers』

今回はあまり話題になることがありませんが、データとして非常に面白い、クリス・メイヤーの著書『100 Baggers: Stocks That Return 100-to-1 and How To Find Them (100バガー:100対1のリターンをもたらす銘柄とその探し方)』をご紹介します。本書のレビューも多少評価が分かれているようですが、100倍株の特徴についてデータや期間などは示唆に富むものだと思います。

本書『100バガー』について

この本は100バガーについて書かれています。これらは、1ドルの投資に対して100ドルのリターンがある銘柄のことである。つまり、1万ドルの投資が100万ドルになるのだ。クリス・メイヤーがそれを見つける手助けをしてくれる。

それは、成功する可能性が極めて低い、とんでもない探求のように聞こえる。しかし、メイヤーが過去の100バガーを研究したところ、明確なパターンが浮かび上がってきたのです。100バガーでは、次のことを学びます。

100バガーの主な特徴、なぜ誰でもできるのか、これはまさにエブリマンサプローチです。MBAやファイナンスの学位は必要ありません。MBAやファイナンスの学位は不要で、いくつかの基本的な金融概念があればよい。

たとえ100バガーを手に入れることができなくても、本書は大きな勝者を生み出し、敗者やどこにも行けない眠たい株から遠ざけるのに役立つだろう。100バガーを読んだら、二度と同じように投資を見ることはできないだろう。100バガーを読んだら、もう二度と同じように投資を見ることはできないでしょう。

本書の内容

クリス・メイヤーの著書「100 Baggers: Stocks That Return 100-to-1 and How To Find Them」は、2015年に出版されました。これは、投資家が100対1のリターン、つまり1ドルの投資に対して100ドルのリターンを達成する方法についての洞察を提供する投資ガイドである。

メイヤーの分析は、1970年代に「100バガー」銘柄に関する同様の本「100 to 1 in the Stock Market」を書いたトーマス・フェルプスの研究に大きな影響を受けています。その前提は、ある銘柄が一定期間に100倍に値上がりすることであり、それこそが人の財産を作ることができる投資であるというものである。

メイヤーは、1962年〜2014年までのあらゆる100バガー銘柄の徹底的な分析に基づき、そうした銘柄に共通する特徴を本書の多くの時間を費やして詳述しています。その特徴には、高い成長力、低い負債、高い株主資本利益率、強いインサイダー所有、高い収益率で利益を再投資できることなどがあります。

高リターンの投資は、しばしば長い保有期間を必要とする

本書から得られる重要なポイントの1つは、こうした高リターンの投資は、しばしば長い保有期間を必要とするということです。このようなリターンを得るためには、市場での忍耐と時間が不可欠である。

優れた経営陣を持つ企業を見つけることの重要性を強調

また、本書では、優れた経営陣を持つ企業を見つけることの重要性を強調しています。これは、しばしば長期的な成功の強力な予測因子となるからです。メイヤーの著作は、投資家がこれらの銘柄の共通点を理解することによって、潜在的な高リターンの投資先を特定するための戦略を開発することを目的としています。

『100バガー』の手引き

本書『100 Baggers』について、Invest In Assets が Twitter スレッドで詳しく取り上げているのでご紹介します。

1. 100バガーの地位には時間がかかる

・100バガーになるまでの平均期間 : 26年
・分散 : 16年~45年
・成長+PE拡大+時間 = ハイリターン

2. 優れたビジネスモデルを探す

・すべての100バガーが高マージンであるとは限らない
・アマゾンは余剰資金をすべて研究開発に使っている
・これが投資家の目を見張るようなリターンにつながっている
・収益に固執しすぎると、見逃してしまう

3. 100バガーは資本収益率が高い

・高い資本収益率+事業への再投資能力により、必要な複利効果が得られる
・事業が配当を支払う場合、これは高い資本収益率で再投資されない資本である

100バガーを目指す企業にとって、高い資本収益率(ROIC: Return on Invested Capital)は非常に重要な要素です。資本収益率が高いということは、企業が投資した資本に対して高いリターンを生み出していることを意味します。この高いリターンを事業へ再投資することで、企業は複利の効果を最大化します。

4. 売上総利益率は、事業が付加する価値を測るものである

・100バガーは、粗利率が驚くほど弾力的であることを明らかにした
・売上総利益率の高いビジネスは、高い利益率を維持する傾向がある
・このような企業は、競合他社に対して持続的な優位性を持っていることが多い

売上総利益率は、売上高から売上原価を差し引いた後の利益が、売上高に占める割合を示します。この指標は、企業が製品やサービスからどれだけの付加価値を生み出しているかを測る重要な指標であり、企業の収益性と効率性を評価する上で役立ちます。

100バガーとなる企業は、しばしば売上総利益率が驚くほど弾力的であることが明らかにされています。これは、これらの企業が市場で独自の価値提案を持ち、その価値を維持し続けることができるためです。高い売上総利益率は、企業が市場の変化や競争の激化にも対応できる財務的な柔軟性を提供します。

5. 100バガーは私たちの身近にある

・100バガーを多く輩出する特定の産業は存在しない
・100バガーを生み出す企業は、さまざまな形態、さまざまな業種で見受けられた
・しかし、おすすめは、安定的で弾力性のある業界にこだわることだ

6. 自社株買いは100バガーを生む可能性がある

・事業が本源的価値を下回っているときに行う限り、自社株買いは余剰資金を活用する賢い方法となり得る

自社株買いは、企業の株価がその本来の価値(内在価値)を下回っていると判断された場合、企業の現金を効果的に使用する方法として広く認識されています。その理由は次のとおりです。

1. 株価上昇
株式の需給バランスに影響を与えることで株価を押し上げる可能性があります。市場から株式を取り除くと、需要が供給を上回る可能性が高まり、結果的に株価が上昇します。

2. EPS(一株当たり利益)の増大
全株式数が減少すると、一株当たりの利益は自動的に増大します。これは企業の収益性を向上させ、結果的に株価を押し上げる可能性があります。

3. 株主への信頼感の向上
企業が自社株買いを行うと、それは一般的に、企業自身が自分たちのビジネスと未来に自信を持っていると市場に伝えるメッセージとなります。

・NVRは、自社株買いを活用して100バガーを達成したビジネスモデルの一例である

100倍株 NVR

NVR Inc. はアメリカの主要な住宅建設会社で、一戸建て住宅、タウンハウス、コンドミニアムの建設と販売、住宅ローンの提供を行っています。NVRはその独特なビジネスモデルと賢明な資本配分戦略により、その成長を継続してきました。その一環として、自社株の買い戻しを積極的に行い、利益を株主に還元しています。

自社株買いは企業が市場から自社の株式を買い戻す行為で、一般的には企業の収益力やキャッシュフローの強さを示すとともに、自社株の需給バランスを変えることで株価を押し上げる効果があります。

NVRはその成長期間中に積極的な自社株買いを実施し、一株当たり利益(EPS)を増大させる一方で、株式の希少性を高めることで株価を押し上げました。その結果、NVRの株価は過去数十年で大幅に上昇し、投資家にとっては100バガー(つまり元本の100倍のリターン)の投資となりました。

7. オーナー・オペレーターのパフォーマンスが大きく向上する

・J.シュルマンの研究によると、創業者主導のビジネスは、毎年7%インデックスを上回っている
・スキン・イン・ザ・ゲームは、経営陣と株主との間に整合性を生み出します

例) LVMH、コンステレーション、バークシャー

つまり企業の創業者や主要な経営者が大きな株式を保有しているビジネスモデルは、一般的に優れたパフォーマンスを示すことが知られています。J.シュルマンの研究によると、創業者主導のビジネスは平均して毎年7%のインデックスを上回るパフォーマンスを達成しています。このような企業は、経営陣が「スキン・イン・ザ・ゲーム(自己投資)」を持っているため、経営陣と株主の間に強い整合性が生まれます。

スキン・イン・ザ・ゲームとは?

スキン・イン・ザ・ゲームとは、リスクと報酬に対する直接的な責任や影響力を持つ状況を指す表現です。これは、ビジネス、金融、政治、その他の分野で使用されます。この概念は、リスクを負っている個人や組織が、その結果に対して最も責任を持つべきだという考え方を表しています。

具体的な例としては、投資家が自分のお金を使って企業に投資するとき、彼らはその企業の成功または失敗に対して”スキン・イン・ザ・ゲーム”を持っていると言えます。つまり、企業が成功すれば利益を得るが、失敗すれば投資金を失う可能性がある。このため、投資家は企業の運営についてより注意深くなり、必要ならば積極的な役割を果たすことになります。

このフレーズは、経済学者であり哲学者でもあるナシーム・ニコラス・タレブによって広められました。彼はこの概念を使用して、リスクの評価と管理についての議論を行っています。彼の主張では、”スキン・イン・ザ・ゲーム”を持つことで、個々人や組織がリスクについて真剣に考え、それに対応するための適切な行動をとるようになるというものです。

成功例

・LVMH
ルイ・ヴィトン・モエ・ヘネシーは、ベルナール・アルノー氏とその家族が大きな影響力を持つ典型的なオーナー・オペレーター企業です。同社は、高級ブランドのポートフォリオを通じて世界的な成功を収めています。

・コンステレーション・ブランズ
アルコール飲料の大手であり、創業家の影響下にあるコンステレーションは、戦略的な買収とブランドの強化により業界での地位を確立しています。

・バークシャー・ハサウェイ
ウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイは、オーナー・オペレーターのモデルの成功例として広く知られています。同社は、多様な投資ポートフォリオと企業の買収を通じて、長期的な成長と株主価値の向上を実現しています。

8. コーヒー缶のアプローチ

・正しい買い方をし、じっと我慢する
・このアプローチは、最高の企業を購入し、厚かましくも保有することを提唱しています
・メイヤーは、リスクを十分に分散するために、10~20の優れたアイデアに集中することを提唱しています

コーヒー缶のアプローチとは?

コーヒー缶のアプローチとは、投資の戦略の一つで、特定の銘柄を購入し、長期間保持し続けるというものです。この名前は、投資家が購入した株式をコーヒー缶のようなものに入れて、何年も放置するという概念から来ています。このアプローチの主な目的は、資本の長期的な成長を最大化することです。

メイヤーはこのアプローチを推奨しており、その一部として、投資家は10から20の優れたアイデアに投資すべきだと提唱しています。これは、適切な分散を達成し、リスクを管理するための戦略です。

投資家がそのようなアイデアを見つけた場合、それらに投資をして、資本が成長するのを待つべきだとメイヤーは主張しています。このアプローチの利点の一つは、それが非常にパッシブであることです。つまり、一度購入したら、投資家はただ座って、その投資が成長するのを待つことができます。

ちなみに、2021年頃だったと思いますが Twitter で、SPAC 上場したばかりの Astra (アストラ / ASTR) の株式を8,000株購入して、答え合わせは10年後とか言っていた方がいました。この方が実際に8,000株購入したのか?途中で売ったのか?今もホールドしているのか?は分かりませんが、この時から株価は 30/1 ぐらいに暴落しています。もしまだコーヒー缶に入れたままなら頓死というか、まだ Astra が大逆転する可能性もあるかもしれませんが、やはり SPAC は難しいですね。

9. 小さな会社には成長の余地がある

・小型株には成長の余地がある
・大企業はいつかは「大数の法則」にぶつかる
・100バガーの調査に参加した企業の時価総額の中央値は5億ドルだった

小さな会社、特に小型株には、大企業に比べて成長の余地が大きくあります。これは、小型株が市場での存在感が小さく、未開拓の市場や新しいビジネスモデルを通じて急速に成長する機会を持っているためです。一方で、大企業はその規模の大きさから、同じ割合での成長を達成することが難しくなります。これは「大数の法則」として知られ、大きな基盤の上でさらに大きな成長を遂げることの難しさを示しています。

100バガーを生み出した企業の時価総額の中央値が5億ドルであったという事実は、小型株が巨大なリターンを生み出す潜在能力を持っていることを示しています。小さな基盤から始まり、革新的なアプローチや市場のニーズに応えることで、驚異的な成長を遂げることが可能です。

10. 多角的な事業展開と成長が不可欠

・100バガーは、ほとんどの場合、その両方を必要とする
・メイヤー氏は、PE倍率の高さによる売却について述べている
・結論は、投資家は “Reluctant sellers (あまり喜んで物を売りたがらない人々)” であるべきだということです
・偉大なビジネスは、しばしばサプライズで上昇する

多角的な事業展開と成長は、100バガーを実現する企業にとって不可欠な要素です。これらの企業は、一つの分野に留まらず、新しい市場や製品での機会を追求し、持続可能な成長を達成することが多いです。メイヤー氏は、その著書で、PE(株価収益率)倍率の高さを理由に売却することについて議論しており、投資家は簡単には売りたがらない人々であるべきだと結論付けています。

多角的な事業展開は、特定の市場や製品に依存するリスクを減らします。これにより、一部の事業が不振でも他の事業が補うことができ、全体としての安定性が保たれます。新しい市場や製品への進出は、企業に新たな収益源を提供します。これにより、企業はより大きな成長を遂げることが可能になります。

PE倍率が高いということは、株価が収益に対して高く評価されている状態を意味します。一部の投資家は、この状態を売却のタイミングと見なすことがあります。しかし、メイヤー氏は、偉大なビジネスは時間をかけてその価値を発揮するため、短期的な評価指標に惑わされずに長期保有することの重要性を強調しています。

偉大なビジネスは予期せぬサプライズで価値が上昇することがあります。そのため、投資家は短期的な市場の変動に左右されず、長期的な視点で投資を続けるべきです。長期保有を成功させるためには、成長性、競争優位性、経営陣の質など、ビジネスの本質的な価値を見極めることが重要です。

本書は良い銘柄を見つけたらガチホ的なスタンスも含んでいると思いますが、例えば2021年11月以降から続くことになる劇下げ (ベア相場入り) でもロングし続けられるのか?というと何とも言えません。

個人的には (私のような貧乏人の場合)、相場を読んで相場に合わせて出たり入ったりした方が効率的なような気もしていますが、利上げが終わればある程度期待できる銘柄は持ち続けるというのが良いような気がしています。

私が見た知っている100倍株

最後に私が実際に見たことのある100倍株についてご紹介します。私が個別株投資を開始したのは2020年の金融相場からだったのですが、今振り返ると個人投資家が群になって、SNSや掲示板、チャットである銘柄を買い上げ GME なんかは2021年1月の数週間で株価が100倍以上になっていました。

本書『100 Baggers』(2014年までのデータ) では、100倍になるまでの平均期間が26年とされていますので、コロナで始まった金融相場が如何に異常なものであったのかが証明されていると思います。

【HKD】香港に拠点を置くメタバース企業 AMTD Digital とは?

もう一つ GME を超えたのが、HKD という香港のデジタル会社の株式です。これは本当に幻のような話なのですが、この銘柄は2022年7月に12ドルくらいで上場し、その数週間後の8月1日に株価は2,555ドルになりました。数週間で株価が200倍以上になった計算になります。

これらの銘柄は、当時 Reddit の掲示板 WallStreetBets などで取り上げられ、みんなで買い上がるというような行為でしたので、再現性はないように見えますが、2023年にも SPAC 銘柄が買い上げられるというような動きはありましたので、相場環境が金融緩和になった時に、同じような行為が出てくるかは観察する価値はありそうです。

【UNH】IPOから14年連続の陽線 +377,000% の成長株とは?

最後の最後に、私が知っている100倍株 (100倍以上) は、米国最大の民間医療保険会社 UnitedHealth Group (ユナイテッド・ヘルス・グループ / NYSE:UNH) と AutoZone (オートゾーン / AZO) です。こんな株を保有してみたいですね。

好調な自動車修理業界、AutoZone の長期的な株価の上昇の要因とは?

注意

なお、本書『100 Baggers』はガイドであり、参考になることもありますが、金銭的な成功を保証するものではありません。個人投資家は、投資判断を下す前に、自分で調査を行い、自分のリスク許容度を考慮する必要があることにご注意ください。

【関連記事】Amazon、NVIDIA にみる100バガー株の特徴について

Amazon、NVIDIA にみる100バガー株の特徴について