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Coinbase のCEOブライアンが共同創業するバイオテック企業 NewLimit とは?

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Coinbase のCEOブライアン・アームストロングが共同創業するバイオテック企業 NewLimit の老化を “巻き戻す” という挑戦について詳しくご紹介します。

NewLimit は、老化そのものに挑む革新的なバイオテック企業です。Coinbase の共同創業者ブライアン・アームストロング氏が設立に関わり、山中伸弥博士の発見した「山中因子(Yamanaka factors)」をベースにしつつも、より踏み込んだ細胞の “若返り” を目指しています。

同社のビジョンは明確です。それは「細胞の種類を変えることなく、“年齢” だけを若返らせる」こと。つまり、細胞の機能を維持したまま、健康な状態を再現することです。

山中因子とエピジェネティック・リプログラミング

2006年、山中伸弥教授はたった4つの転写因子 (Oct3/4、Sox2、Klf4、c-Myc) を使って成熟細胞を初期化(iPS細胞化)できることを示しました。この発見は「老化は可逆的である」ことを意味しており、NewLimit の思想的土台になっています。

しかし、完全に幹細胞に戻してしまうと、腫瘍化(テラトーマ)などのリスクが伴うため、NewLimit は細胞の種類は維持しながら、若い状態に戻すことに注力しています。

新たな転写因子の「当たり」を探す

人間の体内には約2,000種類の転写因子が存在します。NewLimit はその中から1〜5個の組み合わせを用いて、若返りを促す新たなパターンを探索しています。

理論的には 10の16乗通り以上の組み合わせが考えられるため、総当たりでは現実的ではありません。そこで同社はAI(機械学習)とシングルセル解析を組み合わせ、効果的な因子セットを見つける独自のスクリーニングプラットフォームを構築しています。

これはまさに「転写因子のギガファクトリー」ともいえる取り組みです。

バイオの2つの流派と NewLimit の立ち位置

バイオベンチャーには以下の2つのタイプが存在します。

・bio-insight driven(専門知識中心):論文や理論を重視し、仮説ベースで進める
・bio-naive(試行錯誤型):とにかく大量に試してから意味を理解する

NewLimit は両者の中間に位置しますが、実験主導の bio-naive 寄り。論文を参考にしつつも、大量の仮説を高速で検証し、新しい発見へとつなげています。

実験成果と現在のステータス

最近の進捗として、80代の高齢者から採取した肝臓細胞をリプログラムし、若い細胞と同等の機能を取り戻すことに成功しました。これは単なる細胞の初期化ではなく、「若返り」としての成果です。

これらの実験は、人間の細胞をマウスに移植するゼノグラフトモデルで行われており、人間の肝臓を一部持つマウスに対して、高脂肪食などを与えると、脂肪肝になるなどの人間と同様の反応が確認されました。

臨床応用への道のりとリスク

NewLimit の技術はまだ臨床試験段階には至っておらず、2027年ごろに初のヒト試験が予定されています。実際に商業利用されるにはまだ時間がかかるものの、すでに非常に有望な初期結果が得られています。

ただし、成功が保証されているわけではないことも明言されています。将来的な治療法としての確立には、今後も多くの研究と慎重な検証が必要です。

なぜ NewLimit が注目されるのか?

・老化という最大の課題に科学的に挑むという点
・ブライアン・アームストロング氏という実績ある起業家が関わっていること
・AIとバイオの融合による革新的なスクリーニング技術の確立
・高齢化社会における「健康寿命」への直接的なアプローチ

これらの要素が重なり、NewLimit は単なるバイオベンチャーではなく、「人間の寿命に対する根本的な再設計」という未来的ビジョンを体現する存在として注目を集めています。

まとめ:未来を変える「老化の可逆化」

NewLimit は、従来不可能とされていた「老化の可逆化」に科学的アプローチで挑戦しています。細胞の機能を維持したまま、年齢だけを若返らせるというその挑戦は、もし成功すれば、医療・福祉・経済に計り知れないインパクトを与えるでしょう。

まだ道半ばですが、世界中がこの「新しい限界(New Limit)」の行方に注目しています。