Zoomy

臨床バイオ投資の失敗談

臨床バイオ投資の失敗談

今回は臨床バイオ企業への投資で失敗した実例をご紹介します。臨床バイオ投資とは、臨床段階の新薬を開発しているバイオ企業への株式投資のことです。

臨床バイオ投資はハイリスク・ハイリターンとして知られており、新薬がFDAから承認されたり、バイオ企業が買収されたりすると株価が底値から10倍になる可能性もありますが、臨床試験が失敗したり頓挫すれば、大暴落 (-50%は当たり前) することで知られています。

バイオテクノロジー株のライフサイクル投資について

バイオテクノロジー株のライフサイクル投資では、「バイオ株をいつまでもバイアンドホールドするな」と言われている通り、相場やリスクに応じてロングを続けるのか?という判断をしなければいけません。

このような前提に基づいて、臨床バイオ投資の失敗談を幾つかご紹介します。

臨床バイオにおいて特にリスクが高いのが、個人投資家の間で話題の銘柄です

臨床バイオ企業の中には、マイクロキャップの時価総額の小さい企業が多数存在します。それらの銘柄をインフルエンサーや投資家のコミュニティ (海外のバイオ投資コミュニティ) で持て囃し、「A という臨床バイオ企業の株価は今後10倍になる!」というような噂や、それにまつわるデータや理由を提示して、個人投資家に信じ込ませて株価を吊り上げるという昔からの手法があります。

彼らは自分のフォロー数、認知力を利用してマイクロキャップの臨床バイオ株を持て囃し、個人投資家がその銘柄を買うようにし向け株価を上昇させます。彼らにそのような印象操作する気がなかったとしても、ソーシャルメディアやプラットホームでは同じような事案は現象として起こるものです。

マイクロキャップの臨床バイオ株を推した張本人は株価が上昇したタイミングで売っていたり、カタリストとなるイベント前にはポジションをクローズしている可能性もあり、実際にどうなのか?というのはブラックボックスですので、憶測に過ぎませんが、もっと勘繰る必要があると思います。

2020年以降の金融相場でも、Reddit の WSB で注目の銘柄としてミーム株を取り上げて、個人投資家みんなで買いあがろう!というようなムーブメントが起こりました。このような事案は、投資家が新旧と入れ替わり毎回起こることですので、注意しなければいけません。

私の観察した感じですと、相場が良い時はバイオコミュニティで話題のマイクロキャップのバイオ銘柄も動きが良いようですが、相場の地合いが悪くなると、投資家のロングが続かないため株価が下落しやすく、期待値が高いと暴落につながります。

臨床段階のバイオ企業による薬のコンボ・併用療法には気をつけろ!

臨床段階のバイオ企業による薬のコンボ・併用療法には気をつけろ!

マイクロキャップのバイオ株は操作されやすい

あるバイオ投資家は、過去に起こった CBAY と PDSB の事案を取り上げて次のように語ります。

マイクロキャップのバイオはとても操作しやすい。数年前にCBAYがショートに荒らされたのを覚えている。「セレデルパール」がいかに破たんし、臨床保留になり、患者数が疑問視され、第3相のための資金がなく、アダムFが空売り列車に飛び乗り、会社を荒らした。

PDSB や CBAY のような小規模なマイクロキャップ・バイオテクノロジー企業は、取引量が少ないため操作されやすい。CBAY はその後、2ドル以下で取引されていたが、2年後に Gilead に約50億ドルで買収された。

この例が PDSB にも当てはまるのであれば、PDSB が第3フェーズの開始とパートナーシップを発表したら、もう後戻りはできないだろう。新薬品開発は不確実性が高く、頓挫するリスクは常に存在する。それまではジェットコースターに乗るしかない。

マイクロキャップ・バイオのバイナリーイベントでは保有しない

あるバイオ投資家は、臨床段階のバイオ株で爆死しないためには、時価総額が3億ドル以下のマイクロキャップ・バイオをホールドしている場合、バイナリーイベント時には保有してはいけないという。

一般的に、データの読み上げや規制決定のようなバイナリーイベントの前後では、マイクロキャップ・バイオ (小型株) には慎重になるのが賢明です。これらは非常に不透明でハイリスクです。

もし保有しても損出を被っても問題ない、痛い思いを経験することで次の教訓として活かすことができる。経験から学ぶことは重要である。

直近のマイクロキャップ・バイオ EFTR、VINC は共にバイナリーイベント後には -75%以上暴落しているので気をつけた方が良いだろう。

期待値だけが先行すると、暴落につながる

VINC は一時個人投資家の間で話題となり、2月下旬に株価が 1.5 ドルから3月11日までに 9.37 ドルにまで急騰した。しかし、個人投資家の期待値ばかりが先行してしまい、4月上旬のイベント AACR Annual Meeting 2024 で期待するデータが出てこないことから、4月9日のマーケットで最終的に -77% の暴落に見舞われ、結局 1.06 ドルまで暴落することとなった。

私も株価が上昇していた際には気になっていたが、調べると VINC は SPAC 上場していたことを知り、株価が上昇したタイミングで入るのは危険と判断した。

このような例から、バイオファンドが保有していない、個人投資家によって駆動されている銘柄に関しては、もしロングしている場合はどこかで脱出しなければいけないことを常に脳裏に描いておこう。

この記事を書いている私もそうなのだが、臨床バイオというとどうしても株価が10倍になる夢を描きがちだが、やはり一番は相場から退場しないことが第一であり、そのためにはリスク管理を徹底しないといけない。特に臨床バイオの世界は10倍か-10倍か!?の世界なので、リスクを取り過ぎると再起不能になってしまう。

臨床バイオ企業の過大なPR、殺文句には気をつけよう!

続いて以下も VINC で行われた投資家が間違った期待値を持ってしまった原因とされているので、ここで確認しておこう。

・「強力な安全性プロファイル」を喧伝する場合

臨床バイオ企業が「強力な安全性プロファイル」を喧伝する場合、多くの場合、有効性はゼロであることを意味する。薬が安全だからといって効くとは限らない。投資家はしばしば、成功する治療法として安全性と有効性の両方を重視する。

・「用量依存的臨床活性」のようなフレーズ

「用量依存的臨床活性」のようなフレーズは、ハードルを低く設定する。このフレーズは、薬に何らかの効果があることを示唆しているが、その効果の強さは不明確かもしれない。投資家はしばしば、重大な治療効果を示す明確な証拠を見たがる。

・「有望」は主観的である

「有望」は必ずしもSPを意味しない。この言葉はプレスリリースでしばしば緩く使われる。投資家は、医薬品の真の可能性を評価するために、より具体的なデータや結果を探すべきである。

まとめると、臨床バイオでは懐疑的であり続けよう。

HOOK をロングしていた投資家の失敗談

私は数年前に HOOK で同じ痛い教訓を学んだ (経営陣は ASCO を前に期待を膨らませ、回答を出せなかった)

この一件で、私は自分自身と自分の投資プロセスについてより多くを学んだと思う。経営陣が前立腺プログラムのINDを2022年第3四半期まで延期し、製造上の問題(供給)を指摘したとき、私はその時点で売るべきだった。

ASCO では、経営陣が患者の反応に期待を膨らませ、それを実現できなかったため、かなり売られた。私はもっとうまくリスク回避をすることができたと思う。

まとめ

以上のように、臨床バイオ企業への投資における最近の失敗例を振り返ると、銘柄選定に慎重になり、バイナリーイベント前にはリスク回避を徹底する必要があるだろう。

また、相場が良い時には個人投資家の間で話題の銘柄に入るのは有りかもしれないが、相場が暗転すると、”昨日の味方は今日の敵” のような字体が起こりやすいため、そのあたりの概念も念頭に入れてトレードしないと痛い目に合う可能性が高い。

【関連記事】臨床バイオ企業の株価はカタリストによって駆動される

臨床バイオ企業の株価はカタリストによって駆動される