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ステーブルコインは、初めて登場した世界共通のお金のファイル形式

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ステーブルコインは、初めて登場した世界共通のお金のファイル形式

ステーブルコインとは、「価格が安定している暗号資産」の一種です。多くの場合、米ドルなどの法定通貨と価値を連動させていて、1枚=1ドルとして扱われます。代表的なものに USDC や USDT があります。

技術的には、初めて世界共通で使える “お金のファイル形式” です。これまで国ごとに異なる通貨や決済システムが存在していたなか、ステーブルコインは誰でも、どこでも、共通ルールで扱えるお金を実現したのです。

ナイジェリアやメキシコでのケース

・ナイジェリアのケース

ナイジェリアでは、日常の決済はスマホを使った携帯番号ベースの送金が主流です。しかし、国際送金となると問題だらけです。現地通貨ナイラは流通が不安定で、手数料や両替の制限も多く、「家族に仕送りしたくても、まともに届かない」ことが珍しくありません。

ステーブルコインを使うと、こういった障害を避けられます。たとえばアメリカに住む家族が、USDC をナイジェリアの家族に送り、現地でナイラに両替すれば、早く・安く・確実に資金を届けることができます。

・メキシコのケース

メキシコはアメリカからの送金受取額が世界トップクラスです。しかし、銀行経由では手数料が高く、1ドル送っても実際に届くのは60〜70セントというケースもあります。

ここでステーブルコインが登場します。米国側でドルをステーブルコインに変え、それをメキシコの家族へ送信。受け取った人はメキシコペソに換金する、という流れです。

これにより、99セント以上が届くようになった事例もあり、送金効率が一気に向上しました。

ステーブルコインが果たす “中継” の役割

国際送金というのは、実は「翻訳が大変なお金のやり取り」です。国ごとに使っている通貨の形式(ファイル形式)が違うので、それを変換して送るには、たくさんの銀行や中継機関が介入し、手数料や遅延が生まれます。

これを、ステーブルコインが「共通フォーマット」で中継してくれるのです。言い換えれば、「お金のPDF」のような存在。どこでも読めて、同じように扱えるのです。

実際のユースケース:誰がどう使っている?

・Scale AI のケース:数十円単位の報酬でもコストを抑えて支払い

人工知能開発を手がけるアメリカのテック企業 Scale AI は、世界中のクラウドワーカーに対して、タスクごとの報酬を支払っています。たとえば、画像にタグをつけるといった作業に対して、1件あたり10セントや50セントといった非常に小額の報酬が支払われます。

これらの作業者の多くは、ナイジェリアやインド、アルゼンチンなどに住んでいます。従来の銀行経由で送金しようとすると、国際送金手数料が高すぎて、報酬よりも手数料の方が高くなるという問題が発生していました。

しかし、Scale AIはステーブルコインを活用することで、手数料を最小限に抑えながら即時送金を実現。これにより、世界中の作業者に公平で効率的な支払いが可能となり、同社のオペレーションもグローバルにスケールしやすくなっています。

・アメリカ政府のケース:ラテンアメリカ向け援助金がより多く届く

アメリカ政府は、貧困層への支援や災害支援の一環として、ラテンアメリカ諸国に対して定期的に援助金を送っています。従来の仕組みでは、この送金プロセスに多くの中継銀行や仲介業者が関与しており、1ドル送っても最終的に現地の人が受け取るのは60セント程度という非効率な状況でした。

この問題を解決するために、ステーブルコインを用いた送金方式を採用。アメリカから支援金をUSDCなどのステーブルコインにして直接送ることで、99セント以上が確実に受け取られるようになりました。

結果として、援助のインパクトが飛躍的に高まり、現地の人々への実質的な支援が実現しています。

・SpaceX / Starlink のケース:現地売上をシームレスに米国へ送金

イーロン・マスク率いる宇宙企業 SpaceX は、通信サービス部門 Starlink を通じて、世界中の国々でインターネットサービスを展開しています。ユーザーは現地通貨でサービス料金を支払いますが、その売上をアメリカに戻す際、各国の通貨制度や資本規制に縛られるという課題がありました。

これに対し、SpaceX はステーブルコインを中継通貨として活用。たとえば、ナイジェリアで得た売上をナイラから USDC に変換し、それをアメリカに送金することで、為替コントロールや銀行の制限を回避しながらスムーズに資金を回収しています。

このように、ステーブルコインがグローバル企業の資金回収インフラとしても活躍しているのです。

ステーブルコインは「グローバル送金の標準語」

従来の国際送金は、各国バラバラのお金の言語を無理やり通訳していた世界です。そのなかでステーブルコインは、共通語として通じる初めての通貨フォーマットをもたらしました。

ナイジェリアでも、メキシコでも、そして世界中の人々にとって、より簡単で、早くて、安くて、安全な方法でお金を送れる手段が生まれたのです。未来の金融インフラは、こうした「共通言語の通貨」を中心に構築されていくかもしれません。