Zoomy

天才バリュー投資家が教える、コモディティー・サイクル投資

天才バリュー投資家が教える豚肉価格のサイクル

天才バリュー投資家が、豚肉と飼料(トウモロコシ)価格のサイクル性を利用して投資判断を行っている深い洞察と、コモディティ投資におけるサイクル思考についてご紹介します。

ハムや飼料関連銘柄に投資するあるバリュー投資家は、現在のポートフォリオが本格的に回復するためには、円建ての豚肉価格下落が不可欠なピースだと考えている。その根拠には、飼料価格の変動が豚肉価格に時間差で影響を与えるという独自のサイクル観がある。

天才バリュー投資家によれば、円建てのトウモロコシ価格が下落してから約1年後に、円建ての豚肉価格も下落する傾向が見られるという。

これは、飼料の主要なコストであるトウモロコシ価格が下がると、養豚農家の採算が改善し、生産拡大への経済的合理性が生まれるためだ。

しかし、豚が成育して出荷できるまでにはおよそ半年程度のリードタイムがあるため、飼料価格下落から供給増、そして価格下落へとつながるまでには時間差が生じる。

この豚肉の価格サイクルは、過去のエッグサイクルなどと同様に比較的再現性が高いと指摘する。現在の状況を、「悪いことが沢山起こった後の、良いことの連続」が到来する前の段階と捉え、サイクルの好転を待っている。

サイクル構造の把握

株式市場のサイクル、歴史のサイクル、世代のサイクル、巨大地震のサイクルなど、何事もまずはサイクルを理解することから始まります。

飼料(トウモロコシ)価格 → 豚肉価格のラグ

「飼料価格が下がる」
↓(約1年後)
「農家が豚の生産を増やす(経済的合理性)」

「出荷量増加 → 豚肉価格が下落」

ここで語られているのは、リードタイム(約半年)と価格反映のタイムラグ(約1年)です。生産反応には時間がかかるため、価格変動が遅れて波及する構造です。

これは「エッグサイクル」(鶏卵価格と供給のズレ)にも通じる考え方で、農業系コモディティの典型的なダイナミクスです。

エッグサイクルとは、鶏卵の価格と供給の間に時間差(タイムラグ)があることで生まれる価格変動の循環現象のことです。農業経済や畜産分野では古くから知られる代表的な「コモディティ・サイクル」です。

1. 卵の価格が上昇する : 消費増加や供給不足で価格が高くなる

2. 農家が鶏を増やす決断をする : 卵が高く売れるので、採算が合うと判断

3. 鶏の成長には時間がかかる(約6か月〜1年): この間に供給量は変わらない

4. 成長した鶏が産卵を始め、卵の供給が急増 : 市場に一気に卵が出回る

5. 卵価格が暴落する : 供給過剰により価格が下がり、赤字農家が撤退

6. 供給減により再び価格が上昇 : サイクルが再び始まる

気候要因の組み込み(サイクルの変調)

毎年5〜8月に豚肉価格が高騰しやすいという特徴があります。その理由は、暑さで豚の成育が落ちる(供給減)からです。

温暖化による影響 → 過熱的高騰(供給が間に合わない)

一方で、温暖化の「一服」で成育環境が整い、価格は下落へ。これは「季節サイクル × 気温偏差」という、環境変数がコモディティ価格に与えるメタ・サイクル的要素です。投資家が「天候トレンドの転換」も織り込んでいるのがポイントです。

悪い事の連続のあとに、良い事の連続を待つ

高コスト+低価格の苦境時(例:飼料高騰×豚肉安)は、誰もが撤退します。しかしその後、飼料価格下落 → 生産再開 → 価格回復 → 利益増 → バリュエントリーは「冬の底」で行うべし。

「フル回帰に必要なピース」としての豚肉価格下落

今はトウモロコシ価格が下落しているが、豚肉価格が高止まりしています。このギャップが埋まったとき(価格が合理化されたとき)に、「PF(ポートフォリオ)のサイクル回帰」が完了するという認識。

サイクル投資家の視点

このようにバリュー投資家の本質的な強みは、「逆張りの合理性」に対する確信です。

「以前にこういう買い方をしたのは海運不況や鉄鋼の鉄冷えの時でした」

コモディティにおいて、価格が上がると供給が増え、最終的に暴落する。これを「サイクル」と見なし、そのピークとボトムのリズムを定点観測する姿勢です。

コモディティ投資に潜む普遍的法則

こうしたサイクルは豚肉に限った話ではなく、コモディティ全般に共通する普遍的な法則だという。経済的合理性が高まれば生産者は一斉に増産に走り、高値は設備投資の過剰へと転じ、やがて供給過多による長期的な価格低迷(「冬」の時代)が訪れる。

過去には海運不況や鉄鋼の「鉄冷え」の際にも、同様のサイクルに基づいた投資を行った経験があるという。天才バリュー投資家は、豚肉やトウモロコシに加え、気温、天候、原油価格(バイオエタノールとの関連)、その他のコモディティ価格など、複数の要因を考慮して投資判断を行っている。

結果として、ポートフォリオは農業関連のコモディティに深く関連したものとなっている。自身の投資スタイルについては、「ワンパターン」であり、自身が多少なりとも知っている海運、鉄鋼、農業といった限られた一次産業や二次産業の分野で、手持ちの少ないカードを景気循環に合わせて回転させているだけだと謙遜する。

しかし、このスタイルで複数のサイクルを乗り越え、過去15年間で年率24%ほどのパフォーマンスを上げている事実は、よく知らないものに手を出すよりも、よく知る変化しにくい産業、すなわち「狭い池」で投資することの勝率の高さを示唆している。

サイクルの本質を理解し、自身の得意なフィールドで投資を継続することが、長期的な成功の鍵であるという、バリュー投資家ならではの洞察がうかがえる。

ポイント

– コモディティ価格は季節性・生産ラグ・心理で動く
– 価格と供給の時間差=チャンス
– 気候変動も、サイクル投資の重要な因子
– 「過去に成功した型」を繰り返すことが、勝ちパターンになる