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金利が低いときに人々は高いリスクを取り過ぎる

金利が低いときに人々は高いリスクを取り過ぎる

2020年のコロナ禍以降、低金利からインフレ、地政学リスク、FRBの利上げと様々な要因から金利は上昇し、2023年10月下旬には遂に米国長期金利は5%の大台を突破しました。

高金利に株式市場も下落を続けていますが、このようなことは金融の歴史において何度か繰り返されています。19世紀の英国の金融界でも現在と同じように、低金利環境では人々はその環境に慣れてしまい欲望に駆られ、リスクを取り過ぎてしまうことが指摘されています。

2022年の著書『The Price of Time』の著者として知られるエドワード・チャンセラー氏は、典型的な英国人ジョンブルを引き合いに次のように指摘します。

【選書】エドワード・チャンセラー著『The Price of Time』

ジョンブルは、2%の金利を耐えられない

John Bull (ジョンブル) は典型的な英国人で、アメリカの Uncle Sam (アンクル・サム) のようなものです。彼は一般的な英国人の象徴とされています。しかし、19世紀の英国の金融界では、市場について書いていたBadger (バジャー) という人物が「ジョンブルは多くのことに耐えられるが、2% (金利) は耐えられない」という言葉をよく繰り返していました。

彼は、収入が減少すると、自分がそれほど裕福ではないことを受け入れるか、より多くのリスクを負う (高いリターンを求めて高いリスクを取って投資する) 必要があると述べています。

この話は、当時の投資家たちが低金利環境にどのように反応していたかを示しています。

彼が言うには、金利が2%のときにジョンブルが取るリスクとは、彼が “カムチャッカの運河” と称するものを追い求めることです。これは18世紀後半の英国の運河マニアを指しています。さらに彼は、”氷河帯へのアイススケートの販売” を引き合いに出します。

「カムチャッカの運河」や「氷河帯へのアイススケートの販売」は、投資家が非現実的なプロジェクトや非常にリスクの高い市場に投資することを風刺しています。

これは、低金利環境下での投資家の行動を風刺的に表現したものであり、投資家が通常ならば避けるようなリスクを取ることで高いリターンを追求しようとする心理状態を示しています。

これは、フランスとの戦争を戦っていた19世紀初頭の非常に低い金利の時期に、金本位制が停止され、イングランド銀行が紙幣を印刷し、金利が低すぎる状態を指しています。

当時の英国は大陸から孤立し、新興市場に非常に興奮して、南アメリカなどへアイススケートを売っていたという都市伝説があります。

19世紀初頭の英国は、ナポレオン戦争(1803-1815)の最中であり、経済的にも政治的にも非常に不安定な時期でした。

金本位制の一時停止(1797-1821)とイングランド銀行による紙幣の印刷は、この時期の経済的な混乱を反映しています。

金利が非常に低い状態は、政府が戦争資金を調達するために債券を発行し、それを支えるために金利を低く保つ必要があったためです。

つまり、彼が言いたいのは、評価を追い求めるだけでなく、金利が非常に低い時期には奇跡的なビジネスベンチャーを追い求めることもあるということです。

Badger が指摘しているように、このような低金利環境では、投資家は通常よりも高いリスクを取る傾向があります。2020年以降のSPAC、グロース株、ハイテク株、債券バブルなど … いつの時代も人々の心理や欲望は変わらないということです。

これは最近数年間に多く見られる現象です。事実、低金利現象は中央銀行の一部の政策として非常に明確に見られます。これは、大金融危機後に金利を低くして投機や富の効果を煽るためのものです。

2008年の大金融危機

このような状況は、2008年の大金融危機後に世界中の中央銀行が採用した金融緩和政策の影響を受けています。金融危機を乗り越えるために、多くの中央銀行が金利を大幅に引き下げ、市場に大量の資金を供給しました。これにより、投資家は低金利環境でリスクを取るインセンティブを受けました。

しかし、このような状況は投資家にとって危険を伴います。リスクの高い投資が成功すれば高いリターンを得ることができますが、失敗すれば大きな損失を被る可能性があります。

また、多くの投資家が同時にリスクを取ることで市場全体のリスクが増加し、バブルが形成されます。投資家は、金利が低い時期でも冷静な判断を保ち、リスク管理を徹底することが重要です。

現代にも通じる低金利環境のリスク

この話は、現代の投資家にとっても教訓となります。金利が低いときには誰もが低金利の環境に慣れきってしまい、投資家は通常よりも高いリスクを取る傾向があります。

これは、低金利環境では安全な投資から得られるリターンが限られているため、より高いリターンを求めてリスクの高い投資に手を出すことが一因となっています。

しかし金利のサイクルの変わり目で、低金利から今度は高金利に振れた時、このような低金利環境で通用した投資戦略は立ちいかなくなってしまいます。