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ハワード・マークス氏、現在の株価水準は高いが異常ではない

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オークツリー・キャピタルの Howard Marks (ハワード・マークス) 現在の株価水準は高いが、異常ではない。オークツリー・キャピタルの共同会長兼共同創業者であるハワード・マークスが、CNBCの『スクォーク・オン・ザ・ストリート』に出演。最新のメモや市場見通しなどについて議論する。

いわゆる “あの時” に似た状況だと思いますか?

多くの人が今の市場環境を見て、「非常に高いバリュエーション」だと感じています。AIのようなテクノロジーに対する熱狂も強い。今は、いわゆる “あの時” に似た状況だと思いますか?

ハワード・マークス : 確かに熱狂はありますし、バリュエーションも高いです。ただ、私はテック株やAI関連株について十分詳しいわけではないので、それらの評価が「過剰」かどうかを断言することはできません。

これまでの私の見解としては、「バリュエーションは高いが、狂ってはいない」ということです。そして、ものごとが「高すぎる」でも「安すぎる」でもない時は、正確な予測を立てることは難しいんです。

もしかしたら、今が「守りに入るべき時」だと後から言われるかもしれません。「なぜそのときに防御的に動かなかったのか」と。しかし、今の時点でそれを確信をもって言うことはできません。

“割高” と “明日下がる” は同義ではない。25年前に書いた最初の有名なメモを記念して、私は「バブル・ウォッチ(On Bubble Watch)」というメモを書きました。

そこで私はこう述べました。

バブルの主成分は「心理的な過剰」である。「価格が高すぎる」という概念は存在しないのです。

そして今のところ、狂気的な熱狂(mania)のレベルには達していないと感じています。だから、私は今の市場を「バブル」とは呼んでいません。

一部では、AIがドットコム・バブルの再来ではないかという声も

一部では、AIがドットコム・バブルの再来ではないかという声もあります。変革的なテクノロジーであり、チップ株も大きく関わっています。

ハワード・マークス : そうですね。AIが世界を変えるという点には、疑いの余地がほとんどありません。

実際、AI関連は投資としても成功しています。多くの人が「乗り遅れること」を恐れて、資金を投じている。ですが、私の判断では、まだ “熱狂的狂乱” には達していない。

つまり、バブルの臨界点には届いていないと思います。

最近のメモで「バリュー(value)」についても書かれていましたが

最近のメモで「バリュー(value)」についても書かれていましたが、バリュー投資家は何かを見落としているのでしょうか?

ハワード・マークス : それは「小文字のv」か「大文字のV」かによります。大文字の “Value Investing” は一種の「教義」みたいなものです。

厳密なルールがあり、「これをやる・これはやらない」と線引きされている。しかし、私は投資の卓越性の鍵は「柔軟性」だと考えています。だから、あまりに硬直的なスタイルはよくありません。

ただし、自分の得意分野に集中することも重要です。一方で、小文字のvの “value investing” は、「資産の本来価値を見極めて、それを妥当な価格で買う」ことです。

それは非常に理にかなった考え方だと思います。

今のような環境でもそれは通用しますか?

ハワード・マークス : 難しいですね。AI のような推測的な分野では、30年先の潜在価値を現在の割引価値に直して算出することは現実的ではありません。「新しいもの」に投資する場面では、バリュー的な基準で測るのが難しい。

特にスタートアップや若い企業の場合はそうです。伝統的なバリュー投資は、成熟した安定企業を対象にする傾向があります。成長カーブは穏やかでも、安定的なキャッシュフローや利益が見込める企業。

それが「大文字のV」のバリュー投資の極端な形です。ただ、それは少し狭すぎるかもしれません。過去のデータで見れば、S&P500は今、明らかに割高です。

来年予想EPS基準のPERは約24倍。歴史的平均は16倍です。だから「割高でない」とは言えません。しかし、私は最近のメモ「The Calculus of Value」で強気の側面についても触れました。

今のS&P500の企業は過去より質が高い。市場支配力があり、製品も素晴らしく、競争から守る “堀(moat)” も持っている。利益率が高く、成長性も大きい。

つまり、楽観論にも根拠があるということですね

ハワード・マークス : そうです。企業の質が向上しているからこそ、より高い評価倍率(multiple)が正当化される。楽観はある程度妥当です。

私はそれを否定するほどの知識は持っていません。しかし、これは「今回は違う(This time it’s different)」という発想の典型例でもあります。

その言葉、少し不安になりますね

ハワード・マークス : そう、「今回は違う」は、常に “新しいもの” について語られるときに出てくるフレーズです。バブルの最中にもよく聞かれます。

「これは今までにない。歴史に前例がない。だから今回は違う」そういう心理がバブルを生み出すのです。「今回は違う」「これは月まで行くぞ」と言い出したら要注意です。