バイオ業界で「ゾンビ企業」とは、臨床試験の失敗や商業化の失敗で資金が枯渇し、株価が暴落したものの、現金だけがわずかに残り “死にきれない” 状態にある企業を指します。
こうした企業は株式併合(reverse split)で延命し、上場維持を試みますが、投資家からは見放されがちです。
XFOR の失敗と転落
X4 Pharmaceuticals(XFOR)は、その典型例でした。特にクソ過ぎる経営陣が率いる臨床バイオ株の典型的な事例です。
X4 Pharmaceuticals は、2023年末~2024年に希少疾患(WHIM症候群)向けの治療薬でFDA承認を獲得しました。しかし、経営陣は販売戦略を誤り、市場浸透が進まず、資金難に直面します。
結果、株価暴落、株式併合による延命という投資家にはクソの極みのような展開です。私は X4 Pharmaceuticals をロングしていましたので、もろに影響を受けました。
投資家の間でも「クソ経営陣」と話題になります。正にせっかくのFDA承認を “宝の持ち腐れ” にした好例です。
復活のシナリオ ― 経営刷新と PIPE 調達
早く経営陣が退任しないかな?と思っていましたが、ようやく転機は2025年夏に訪れました。
経営刷新を図り、旧CEO/CFOを退任させ、CTI BioPharma 出身の Adam Craig 氏らを新経営陣に迎えることになりました。資金調達として、約6,000万ドルの PIPE(私募増資)を実施。
その際に大手ベンチャーキャピタルの NEA (New Enterprise Associates / 過去にもNEAが資金を入れて「ゾンビ状態のバイオ株」を立て直した事例がある) や、Bain Capital Life Sciences が参加したようです。
他にもこのタイミングで、バイオファンドの Deep Track Capital、Biotechnology Value Fund など5つのファンドが 9% ぐらいの新規購入をしています。
これは「再建シナリオ」へのベットだと思います。
臨床バイオ投資家が学ぶべきポイント
X4 Pharmaceuticals の事例から学べる教訓は次の通りです。
・経営陣の質は生命線
臨床バイオ投資において、経営陣がクソ過ぎるとPRや資金集めに失敗し、投資家は大損害を被ります。この XFOR や直近では BCYC などがその実例です。バイオ企業は科学だけでなく「資金調達と商業化力」が欠ければ破綻します。
・有力ファンドの参入はシグナル
NEA や Deep Track が「ゾンビ株」に資金を入れるとき、それは単なる救済ではなく「勝ち筋」を見込んでいる可能性が高い。
・“承認後のゾンビ化” はチャンス
多くの投資家は承認=ゴールと考えるが、実際はその後の商業化で失敗する企業も多いのです。逆にいえば、承認薬を持ちながら経営刷新で蘇る企業は、割安で仕込める好機になる場合もあります。
まとめ : ゾンビバイオからの脱却
X4 Pharmaceuticals のケースは、「クソ経営陣 → 失敗 → ゾンビ化 → 経営刷新 → 有力ファンド参入」という典型的な復活劇です。
投資家にとっては、一度死に体になった銘柄でも、承認薬という資産を持ち (X4 Pharmaceuticals の場合は超ニッチですが)、ファンドのバックアップと新経営陣が揃えば、ゾンビからの脱却への転換が起きる可能性がある、という強い示唆を与えてくれます。