臨床バイオ企業 UroGen Pharma(URGN)の開発する「UGN‑102(ZUSDURI™)」がFDA承認に至るまでの流れをご紹介します。
URGN は2024年6月13日、「UGN‑102(ZUSDURI™)」の Phase 3 ENVISION 試験に関する非常に前向きな臨床データを発表しました。データは、3ヵ月後の完全奏効(CR)率が79.6%と高い結果を記録。
CRを達成した患者の12ヵ月間の奏効維持率が82.3%と、持続的な効果が確認されたました。この好材料により、市場は即時に反応。株価は前日の13ドルから20ドルに大きく上昇しました。
しかし、2024年6月の株価急騰後、URGN の株価は低空飛行となり、FDA承認前の25年5月に開催された ODAC(Oncologic Drugs Advisory Committee)で、5対4という僅差で「承認を推奨しない」という結果になったことで株価は3.4ドルまで暴落しました。
この頃、4月のトランプ関税ショックも引きずっていたため、市場のセンチメントも悪かったことも重なっていると思います。しかし翌月6月にFDAが「UGN‑102(ZUSDURI™)」を承認したことで逆転ホームランとなりました。
1. UGN‑102(ZUSDURI™)のNDA提出と審査プロセス
・2024年1月:UGN‑102(後のZUSDURI™)のNDA(新薬承認申請)のロールリング提出開始
2024年1月、UroGen Pharma は、再発性の低悪性度・中間リスク非筋層浸潤性膀胱がんを対象とする治療薬UGN‑102(後に製品名ZUSDURI™)について、新薬承認申請(NDA)のロールリング提出を開始しました。
・2024年第3四半期:NDAの提出完了を予定
これは、複数のパートに分けて段階的に申請書類を提出する方式で、審査の迅速化を目的としています。その後、2024年第3四半期中にはNDAの提出がすべて完了する見込みとされており、FDAによる本格的な審査に移行する予定となっています。
・2024年10月:同治療薬のPhase 3「UGN‑103」試験で最初の投与実施(同じくmitomycinベースの次世代治療)
また、2024年10月には、同じく mitomycin をベースとした次世代治療薬である「UGN‑103」の Phase 3 臨床試験が開始され、初回投与が実施されました。「UGN‑103」は「UGN‑102」の後継となる新たな製剤であり、より広範な適応に向けた開発が進められています。
2. FDAによる審査と委員会開催
・2025年4月15日:「UGN‑103」の Investigational New Drug(IND)申請がFDAに受理される
2025年4月15日、UroGen Pharma は次世代治療薬UGN‑103について、FDAに対して治験開始届(IND:Investigational New Drug)を提出し、正式に受理されました。
・2025年5月7日:FDAは「UGN‑102」のNDAを受理し、Oncologic Drugs Advisory Committee(ODAC)の開催を5月21日に設定、PDUFA(FDA最終判断期限)日を6月13日と指定
そのわずか数週間後の2025年5月7日、FDAは「UGN‑102(後のZUSDURI™)」に関する新薬承認申請(NDA)を正式に受理。
併せて、5月21日にOncologic Drugs Advisory Committee(ODAC:がん治療薬諮問委員会)を開催し、審査の一環として専門家による意見聴取を行うことが決定されました。また、FDAが最終的な承認可否を下す期限となるPDUFA(医薬品申請審査期限)日は、2025年6月13日に設定されました。
・2025年5月21日:ODACは「UGN‑102」のリスク・ベネフィットについて反対票を多数得て、「推奨しない」と判断(5対4の賛否)
そして5月21日、予定通り開催されたODACでは、「UGN‑102」の有効性と安全性、すなわちリスクとベネフィットのバランスについて議論が交わされました。
その結果、委員の多数が慎重な姿勢を示し、9名中5名が反対票を投じるかたちで、「承認を推奨しない」との見解が示されました(賛成4、反対5の結果)。
このように、一時的に厳しい評価を受けたものの、「UGN‑102」の承認プロセスはその後も継続されていくことになります。
ODAC(Oncologic Drugs Advisory Committee)とは?
ODACは、米国食品医薬品局(FDA)の下に設置されている専門家委員会のひとつで、がん(腫瘍)関連の医薬品の承認に関する助言を行うための組織です。
この委員会は、外部の医師、科学者、統計学者、患者代表などから構成されており、製薬企業が提出した新薬のデータ(有効性・安全性など)をレビューし、「承認すべきかどうか」について科学的・倫理的観点から助言を行います。
ODACの結論は「助言」にとどまりますが、FDAが新薬の承認可否を判断する上で極めて重要な参考意見とされています。ODACの会議は基本的に公開で行われ、企業側とFDA側のプレゼンテーション、委員の質疑応答、一般市民の意見陳述なども含まれます。
委員会の終盤には、特定の質問(例:「本薬剤のベネフィットはリスクを上回るか?」)に対して賛否の投票が行われます。
3. FDA承認および商業展開
・2025年6月12日:FDAが「UGN‑102(ZUSDURI™)」を承認。対象は再発性の低悪性度・中間リスク非筋層浸潤性膀胱がんの成人患者で、初の非外科的治療薬として認可される
2025年6月12日、UroGen Pharma の治療薬「UGN‑102(製品名:ZUSDURI™)」が、米国食品医薬品局(FDA)により正式に承認されました。
対象となるのは、再発性の低悪性度・中間リスク非筋層浸潤性膀胱がん(NMIBC)の成人患者であり、ZUSDURI™ はこの疾患領域で初めての非外科的治療薬として認可される快挙となりました。
・承認の根拠は Phase 3 ENVISION 試験の結果(3ヵ月で完全奏効率78%、そのうち79%が1年間応答継続)
この承認の根拠となったのは、Phase 3 ENVISION 試験で得られた良好な臨床成績です。
同試験では、ZUSDURI™ を投与された患者の78%が3ヵ月時点で完全奏効(腫瘍消失)を達成し、そのうちの79%が1年間にわたって持続的な治療効果を維持したことが確認されました。
この結果は、これまで外科的手法に依存していた膀胱がん治療において、患者のQOL(生活の質)向上に資する大きな進歩と評価されています。
・2025年7月1日:ZUSDURI™ の米国での市場展開開始予定
ZUSDURI™ は、2025年7月1日より米国市場での販売が開始される予定です。これにより、UroGen Pharma は長年にわたる研究開発の成果を商業的に実を結ばせることになります。
・2025年6月30日〜7月3日:承認に貢献した経営幹部への特別ボーナス支給が決定される
また、この歴史的な承認に貢献した経営陣の功績を称え、同社は2025年6月30日から7月3日にかけて、主要な幹部社員に対する特別ボーナスの支給を決定しています。これは、ZUSDURI™ の承認が企業の転換点となる成果であったことを物語っています。
まとめ
承認された ZUSDURI™ は、これまで外科手術に依存していた膀胱がん治療にとって、非手術的な選択肢を初めて提供する画期的な製品です。FDA Advisory Panel(ODAC)は一部反対したものの、最終的には承認が下りた形です。