Zoomy

FDA の新薬開発パス・プログラムについて

FDA の新薬開発パス・プログラムについて

下記のポストの画像は、FDA (アメリカ食品医薬品局) の様々な開発パスウェイと特別指定についての進行が記されています。これは、有望な新薬候補、特にアンメットニーズのある重篤な疾患や希少疾患の開発を促進・迅速化することを目的とした様々なプログラムを理解する上で、非常に有益な情報です。

FDA (アメリカ食品医薬品局) の開発パス

この画像のプログラムは、FDAの新薬開発における各種指定制度と、それに伴う開発プロセスの違いについて説明しています。FDA では疾患の重篤度や有効性の期待値などに応じて、様々な支援制度や開発の柔軟性を設けることで、革新的な新薬開発を積極的に促進しています。FDA の開発パスは、以下のように6つ存在します。上から順に詳しく見ていきましょう。

1. 標準指定 (Standard Designation)

前臨床試験と安全性と有効性を徹底的に評価する3段階の臨床試験を含みます。これは一般的な新薬開発の標準的な経路です。Discovery&Pre-clinic から始まり、Phase 1、2、3 と段階を経て、最終的に FDA Review を受けます。この過程で FDA とのコミュニケーションは通常レベルです。

ポイント

– 対象疾患の重篤度を問わない標準的な審査手続き
– 開発企業とFDAとのコミュニケーションは通常レベル
– 新薬申請データ(臨床試験など)の一括提出が原則
– 審査期間は標準的(新医薬品は通常10ヶ月程度)
– 優先審査の対象とはならない

標準指定は、希少疾病用医薬品指定やファスト・トラック指定などの優先的な指定を受けない一般的な新薬開発における審査プロセスを指します。

この標準的な審査では、十分な有効性と安全性を示す大規模な臨床試験データの提出が義務付けられています。開発初期段階からのFDAとの密なコミュニケーションは特に想定されていません。

一方で、重篤疾患向け新薬など一定条件を満たせば、希少疾病用医薬品指定、ファスト・トラック指定、早期承認といった優先審査制度を利用できますが、標準指定の新薬はそうした特別な措置は講じられません。

従って標準的な審査期間や、申請データ提出の要件を満たす必要があり、開発コストや期間がかかる可能性があります。しかし、最終的には十分な臨床データに基づいた、慎重な有効性/安全性の審査がなされることになります。

2. 希少疾病用医薬品指定 (Orphan Designation)

希少疾病用医薬品の指定 (ODD) とは、希少疾患を対象とした新薬開発では、この指定を受けることができます。開発の各ステップで税額控除、助成金、試験デザインの調整など、様々な支援措置が講じられます。さらに、承認後は7年間の市場独占権が付与されます。

ポイント

– 税制上の優遇措置
– 開発の各段階でのFDAによる助言
– 競合品に対する7年間の独占的販売権
– 申請手数料の免除など

この制度の目的は、一般的にメーカーが開発インセンティブが低い希少疾患領域での新薬開発を後押しすることにあります。患者数が少ないため、開発コストに見合う十分な利益が見込めない可能性があるためです。

希少疾患とは、通常は患者数が20万人以下の疾患をさしますが、FDAは場合によってはこの定義を柔軟に運用しています。

希少疾病用医薬品の指定を取得するためには、所定の基準を満たす必要がありますが、一度指定を受けると上記の特典が得られるため、希少疾患領域の新薬開発を大きく後押しすることになります。

3. ファスト・トラック指定 (Fast Track Designation)

ファスト・トラック指定 (FTD) は、アンメット・メディカル・ニーズのある重篤な疾患向け新薬で、既存治療を上回る有効性が期待できる場合、この指定を受けられます。開発の初期段階から FDA との頻繁なコミュニケーションが可能となり、ロールングレビューによる迅速な審査が行われます。承認後はフェーズ4試験に移行します。

FTD のポイント

ファスト・トラック指定 (FTD) は、FDAが重篤な疾患を対象とする医薬品の開発を促進するために設けた制度です。この指定を受けると、以下のような特典が得られます。

– 開発の早期段階からFDAとの頻繁な打ち合わせ
– ロールングレビュー(申請データを分割して順次提出可能)
– 優先審査対象

つまり、開発プロセス全体を通してFDAとのコミュニケーションを密にでき、審査期間の短縮が期待できるのが大きなメリットです。ファスト・トラック指定 (FTD) の対象となるのは、以下の条件を満たす医薬品です。

– 重篤な疾患を治療する
– 未だ充分な治療法がない
– 既存治療法と比べて有効性が期待できる

実際の指定にあたっては、初期段階の臨床試験データなどに基づき、FDAが総合的に判断します。一度指定を受けると、上記特典により開発が加速されるだけでなく、最終製品の審査における優先審査権の付与により、早期の上市実現につながります。

このように、ファスト・トラック指定 (FTD) は、重篤な疾患に対する新規治療薬の迅速な開発を後押ししています。

4. 早期承認 (Accelerated Approval)

早期承認 (AA) とは、こちらも重篤疾患向けの新規治療薬が対象です。臨床エンドポイントではなく、代替エンドポイントに基づいて早期の条件付き承認が可能となります。しかし、最終的な有効性の実証が必要です。

ポイント

早期承認 (AA) とは、FDAが重篤な疾患に対する治療薬について、通常より早期に条件付き承認を与える制度です。従来の承認プロセスでは、有効性と安全性を示す大規模な臨床試験データが必要でしたが、早期承認 (AA) では、代替エンドポイント(中間的な臨床所見)に基づいて、より早期に条件付き承認を受けることができます。

この制度の対象となる医薬品は、以下の条件を満たす必要があります。

– 重篤な疾患を治療する
– 未だ充分な治療法が無い
– 代替エンドポイントで有効性が示唆される
– 臨床上のベネフィットが期待できる

承認後は、製造販売後にさらなる臨床試験を継続し、最終的な有効性を実証する必要があります。有効性が実証できない場合は、承認取り消しの可能性もあります。

早期承認 (AA) の大きなメリットは、重篤な疾患に対する新規治療薬を一般の患者に可能な限り早く提供できる点にあります。一方で、最終的な有効性が確認できないリスクもあります。

5. 優先審査 (Priority Review)

優先審査 (PRV) は、重篤な疾患に対して既存の治療法よりも大幅な改善をもたらす医薬品に適用され、FDAの審査を6カ月以内に完了することを目指し、有望な治療法へのアクセスを促進する。

ポイント

具体的には以下の特典があります。

– 審査期間が6ヶ月に短縮されます(通常10ヶ月)。
– 審査チームがプロジェクトに専従し、優先的に審査が行われます。
– 申請資料が受理されると同時に審査が開始されます(通常は受理後60日後)。
– FDAからのアドバイス、疑問への回答が優先的に行われます。
– 必要に応じて、FDAによる臨床現場の調査が迅速に実施されます。

つまり、優先審査 (PRV) の最大のメリットは、新薬審査期間の大幅な短縮です。ただし、付与の要件は厳しく、根拠となるデータから、既存薬を明確に上回る有効性や安全性が示される必要があります。

FDAとしては、このように優先審査制度を設けることで、ブレークスルー薬や大幅に改善された新薬を一刻も早く患者に提供できるようにしています。重篤な疾患に対する新たな治療選択肢を迅速に実現することが、この制度の主な目的です。

優先審査は通常の審査と同等の厳格さを持ちながらも、恩恵を受ける新薬のスピーディな承認を可能にする重要な制度だと言えるでしょう。

6. 画期的治療薬指定 (Breakthrough Therapy Designation)

画期的治療薬指定 (BTD) は、既存の治療法より大幅に改善された医薬品に与えられます。画期的治療薬指定は、FDAのガイダンスに従って開発を促進し、革新的な治療法をより早く患者に提供することを目指します。

BTD のポイント

画期的治療薬指定 (BTD) は、FDAが付与できる最も有利な指定の一つと考えられています。BTD は、重篤な病状を対象とし、既存の治療法と比較して、有効性において大幅な改善があると予測される、新規の治療薬に対して付与されます。

この指定を受けた治療薬は、開発段階から特別な体制の下で審査が行われます。具体的には以下の特典があります。

– 開発初期からFDAとのミーティングが頻繁に行われ、効率的なプロジェクト設計や試験計画のアドバイスを受けられます。
– より柔軟な臨床試験設計が認められ、小規模な探索的試験で有効性を示すことができれば、優先的に承認审査が進められます。
– 従来よりも迅速な審査プロセスが約束されており、通常の新薬承認申請よりも早く承認が下りる可能性があります。
– 承認審査の際に、従来の最終製品品質データに代えて、製造工程の中間データをもとに条件付き承認が可能です。
– 製造施設の事前査察の簡素化など、製造面でも優遇措置があります。

BTDの付与要件は非常に厳しく、FDAが期待する大幅な有効性改善に値するかどうかを、早期の臨床試験データから判断します。一方で、この指定を得ることができれば、FDAの全面的な支援を受けて、革新的な治療薬を最短距離で患者のもとへ届けることが可能となります。

つまり、BTDは開発リスクを最小限に抑え、新薬を加速度的に承認へと導く、最も有力な制度と言えるでしょう。FDAとしては、こうした制度を通じて、アンメット・メディカル・ニーズに応えていくことが重要な使命であると考えています。

まとめ

標準指定は、ほとんどの医薬品が承認前に安全性と有効性を徹底的に確立する、従来型の数年にわたる経路を表しています。希少疾病用医薬品指定、ファストトラック指定、早期承認、優先審査、画期的治療薬指定はすべて、対象となる医薬品の開発と審査を加速させる特別な指定です、

これらの特別指定は、主に適切な治療法がない重篤な疾患に対する治療法を対象としたものであり、迅速な承認が患者に有意義な利益をもたらします、FDA との緊密な連携、審査の迅速化、代替エンドポイントの使用、画期的な治療薬をより早く患者に提供することに重点を置くなど、その内容はさまざまである。

しかし、その資格を得るにはまだ厳しい基準があり、一部の早期承認では臨床的有用性を確認するために市販後試験がしばしば必要とされます。このように多様な可能性のあるパスウェイと指定を持つことは、安全性と有効性に関する高い基準を維持しながらも、重要な柔軟性を提供する。これによって FDA は、アンメットニーズの高い分野の有望な治療法を、必要な場合にはより速いペースで進めることができます。

臨床段階のパイプラインを開発するバイオテクノロジー銘柄をトレードするには、このような FDA の新薬開発パス・プログラムについて熟知していることが求められます。しっかりと理解しておきましょう。

【関連記事】バイオテクノロジー株のライフサイクル投資について

バイオテクノロジー株のライフサイクル投資について