GSK、脂肪性肝疾患(SLD)の治療および進行予防を目的とした第III相試験段階にあるベストインクラスの可能性を秘めた Boston Pharmaceuticals の特効薬「efimosfermin (エフィモスフェルミン)」を買収することが、2025年5月14日に発表されました。
世界人口の最大5%が罹患するSLDは、治療選択肢が限られたアンメット・メディカル・ニーズの高い領域です。代謝機能障害に伴う脂肪性肝炎(SLDの一種)において、efimosfermin が肝線維化を回復させる可能性を示す第II相データ、efimosfermin が新たな標準治療薬となる可能性を示すユニークな特性が評価されました。
GSK の肝疾患パイプラインを大幅に拡充し、肝疾患を引き起こす脂肪性疾患およびウイルス性疾患への対処を目指します。本契約に基づき、GSK は契約一時金として12億ドルを支払い、さらに成功報酬として合計8億ドルを支払う可能性があります。
$GSK to acquire efimosfermin, a phase III-ready potential best-in-class specialty medicine to treat and prevent progression of steatotic liver disease (SLD). $1.2 billion upfront + $800M milestones. https://t.co/7uWp1GD4wt
— Michel Doepke (@doepke_michel) May 14, 2025
なぜ非公開企業の が選ばれたのか?
なぜ GSK は、この領域で評価されている上場企業 Akero Therapeutics (AKRO) をスキップし、非上場企業のバイオテック Boston Pharmaceuticals を選んで買収したのでしょうか?
現在、FGF21 (線維芽細胞増殖因子21) に関する注目の大部分は Akero Therapeutics に集まっています。しかし、GSK はプライベート企業の Boston Pharmaceuticals から「efimosfermin(月1回投与のFGF21アナログで第3相臨床試験準備完了)」に対し、12億ドルの一時金を支払いました。
その理由は、スピード
Boston Pharmaceuticals の主力製品「efimosfermin」は2029年までの発売を目指しています。Akero Therapeutics は依然として第3相臨床試験中で、データは2026年以降に予定されています。
GSK はMASH/肝硬変分野で短期的な競争優位性を確保する必要があったため、Akero の長期的なリスク軽減スケジュールを待つことは魅力的ではありませんでした。
投与頻度の優位性
Akero と Boston はどちらもFGF21アナログを開発しています。しかし Boston の「efimosfermin」は月1回投与であるのに対し、Akero の「efruxifermin」は週1回投与です。
月1回投与のメリット
・患者遵守率の向上
・医療提供コストの削減
これが商業的な優位性です。更に組み合わせ療法の容易さとして、GSK が既に肝臓指向型siRNAの「GSK’990」を保有している点も重要です。
月1回投与 + siRNA = 固定月次組み合わせ療法もできます。
シナジーとパイプラインの活用
GSK は単に薬剤を購入するだけでなく、多模態肝疾患プラットフォームを構築しています。「efimosfermin」と「GSK’990」を組み合わせることで、彼らは新規の併用療法を創出します。
MASH、アルコール関連肝疾患(ALD)、肝硬変を同時に標的とする、これは単一の資産への投資ではなく、プラットフォーム戦略です。
コストとクリーンな実行
Akero の$3.2Bの市場資本=プレミアムを含む約$5Bの買収価格。Boston は非上場 → プレミアムなし、公開市場摩擦なし、株主の反対なし。GSK は$1.2Bを前払い—おそらく Akero の価値をはるかに下回る金額で、統合リスクも少ない。
今回の買収のポイント
今回の GSK による Boston Pharmaceuticals の主要製品「efimosfermin」買収のポイントは、”最も有望な分子を選ぶ” ことではなかったことが印象的です。
それとはまた違った、全体的な総評価、タイミング、投与戦略、プラットフォームシナジー、クリーンな取引構造が鍵ということでした。Boston が GSK に提供したものは、次のようなものでした。
・市場投入までの時間を短縮
・商業的に優位な投与プロファイル
・既存パイプラインとの理想的な組み合わせパートナー
・高リスク・高リターンのNASH/MASH分野への低リスク・低コストでの参入