2025年5月時点で、日本国内における百日咳の感染状況は、過去数年と比較して急増しており、深刻な流行が続いています。
百日咳が……ヤバいよ……
ほぼ垂直に立ち上がっている…… pic.twitter.com/vyDNyfWebF
— 知念実希人【公式】 (@MIKITO_777) May 3, 2025
日本における百日咳流行は、過去最多の報告数、乳幼児の重症化・死亡例、マクロライド耐性菌の増加といった深刻な状況を示しています。2025年の百日咳報告数は、2018年に全数把握疾患となって以降、過去最多を記録しています。
国立健康危機管理研究機構(JIHS)によると、2025年4月20日までの累計患者数は9,336人で、2024年の年間報告数4,054人をすでに大きく上回っています。 特に、4月13日までの1週間で1,222人、4月20日までの1週間で1,884人と、3~4週連続で1週間当たりの報告数が過去最多を更新しています。
日本全国で広がっている
感染は全国的に広がっており、都市部・地方を問わず報告されています。都道府県別では、兵庫県(134人)、新潟県(127人)、東京都(116人)、大阪府(110人)、福岡県(102人)などで報告数が多く、特定の地域に限定されない流行が特徴です。
主に10代の学童期の子どもと乳幼児に感染が集中
百日咳の患者は主に10代の学童期の子どもと乳幼児(特に生後6か月未満)に集中しています。過去のデータでは、5~15歳が全体の40%、6か月~5歳未満が22%を占め、20~30代の成人も15%と報告されています。特に乳幼児は重症化リスクが高く、死亡例も報告されています。
この増加は、COVID-19 パンデミックによる曝露の減少による免疫力の低下、ワクチン接種率の低下、抗生物質耐性株の出現などが要因とされています。この病気は主に子ども、特に乳幼児に影響を及ぼし、主に保育園児と学齢期の子どもたちを中心に広がっています。
日本における百日咳の急増の背景
日本における百日咳(百日咳菌感染症)の急増は、複数の相互に関連する要因に起因しています。小さいお子さんがいる家庭は、次の原因を詳しく理解し、予防して下さい。
・パンデミック後の免疫力の低下
COVID-19 パンデミック期間中、マスクの広範な使用とソーシャルディスタンス措置により、百日咳の患者数が大幅に減少しました。しかし、これに伴い、細菌への自然曝露が減少したため、人口全体の免疫力が低下しました。これらの予防措置が緩和されたことで、感染リスクが上昇し、特に子どもや思春期層で顕著になっています。
・ワクチン接種率の低下
パンデミックにより定期的な予防接種スケジュールが乱れ、接種の遅延や欠落が発生しました。これにより、特に百日咳の重症化リスクが高い乳幼児や幼少児において、免疫力の低下による「免疫の空白」が生じています。
・教育施設での感染拡大
学校や保育施設の再開に伴い、子ども同士の密接な接触が増加しています。この環境は百日咳の感染を促進し、特に予防接種が最新でない場合、感染リスクが高まります。
・抗生物質耐性株の出現
マクロライド系抗生物質 (マクロライド耐性菌 MRBP) など、一般的に使用される抗生物質に対する百日咳菌の耐性株が報告されています。この耐性は治療を困難にし、感染期間の延長を招き、伝播リスクを高める可能性があります。
・世界的にも百日咳が流行っている
同様の傾向は世界的に見られ、米国では2025年初頭に8,485件の症例が報告され、2024年同期の2倍を超える水準に達しています。オーストラリアでも症例数が大幅に増加し、2024年には54,000件を記録しています。
百日咳を予防するには?
百日咳を予防するには、とにかくワクチン接種です。日本では、生後2か月から5種混合ワクチン(ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ、Hib)または4種混合ワクチン(DPT-IPV)の定期接種が行われています。
日本小児科学会は、生後2か月を迎えた乳児に速やかな接種を呼びかけています。ワクチン効果の減衰を補うため、小学校入学前(5~6歳)や11~12歳での追加接種(任意)が推奨されています。
感染予防策
咳エチケットと手洗いが基本です。厚生労働省は、マスク着用や手洗いなどの基本的な感染対策を推奨しています。また2週間以上続く咳や特徴的な咳発作がある場合、速やかに医療機関を受診することが重要です。
家庭内感染の防止としては、乳幼児のいる家庭では、兄姉や成人のワクチン接種状況を確認し、必要に応じて追加接種を検討することが推奨されます。
まとめ
日本における2025年の百日咳流行は、過去最多の報告数、乳幼児の重症化・死亡例、マクロライド耐性菌の増加といった深刻な状況を示しています。
ワクチン免疫の減衰、国際的な流行、COVID-19 後の公衆衛生対策の緩和が主な原因と考えられ、特に乳幼児と10代を中心に感染が拡大しています。
予防策としては、定期接種の徹底、追加接種の検討、咳エチケットの励行、早期受診が重要です。