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【IVVD】Invivyd のカタリストとロードマップ

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【IVVD】Invivyd のカタリストとロードマップ

IVVD(Invivyd, Inc.)は SPAC(特別買収目的会社)由来の銘柄です。

元の会社名は Adagio Therapeutics というCOVID-19向け中和抗体を開発していたバイオ企業でした。その後、2022年に企業再編が行われ、Adagio Therapeutics が Invivyd, Inc. へ社名変更。

上場の形態は SPAC との合併を通じた上場(いわゆる「de-SPAC」)で、ティッカーは現在の IVVD に変更されています。形式的には SPAC 上場銘柄ですが、既に事業会社として再編されており、今は通常のバイオ株と同じ扱いで取引されています。

現在は「COVID-19抗体(PEMGARDA®)」と「次世代長寿命抗体(VYD2311)」を主力に、RSVや麻疹など感染症領域のパイプラインを拡大中です。

コロナ予防薬、モノクローナル抗体の「PEMGARDA」

IVVD のコロナ予防薬「Pemivibart (PEMGARDA™)」は、FDAによるパンデミック由来の「緊急使用許可(EUA)」の下でのみ販売されており、フル承認(BLA)はまだの状況です。

緊急使用許可により、2024〜2025初めにかけて売上着実に増加(Q2: 418% YoY 成長)しており、反ワクのロバート・ケネディ・ジュニアも勧めているとかいないとか。

バイオファンド主導の公募増資

2025年8月22日には、バイオファンドの RA Capital と Janus Henderson 主導による1株当たり0.5199ドルの公募増資を発表しています。

この資金は、「VYD2311」臨床プログラムの試験プロトコルの開発、計画、推進、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)や麻疹などのパイプライン・プログラムに関する研究開発、ロング COVID および COVID-19 ワクチン接種後症候群に対するモノクローナル抗体治療の効果評価に関するスパイクタンパク除去・回復(SPEAR)研究グループの取り組みの推進、運転資金およびその他の一般的な企業目的に使用する予定です。

バイオファンドの視点

・明確な未充足ニーズ
免疫抑制患者の予防用中和抗体は、変異で代替が効きづらい一方、必要患者は一定数いる“粘り強いニッチ”。

・製品が既に走っている
pemivibart(通称 Pemgarda)は米国で予防のEUAを取得済み。処置は外来インフュージョンで運用可能、需要は季節波動+変異状況に連動しやすい。

・更新可能なプラットフォーム性
株の回避変異に応じて次世代抗体へアップデートできる設計・体制を整えつつある点は、バイオファンドが好む “継続的改良” の絵に合う。

・経済性の読みやすさ
mAbはCOGS/供給計画が読みやすく、粗利が立ちやすい。一方で在庫・耐変異リスクのマネジメントが勝負。

ハイライト

2026年4月9日:VYD2311 の Phase 3「DECLARATION」で、事前規定の sample-size re-estimation により約500例の追加組み入れを決定。これに伴い、トップライン時期は従来のmid-2026 目安から Q3 2026 見込みへやや後ろ倒し。あわせて、FDA と 小児BLA支持試験「DRUMMER」の initial Pediatric Study Plan で整合し、measles 抗体候補「VMS063」の前進も公表。

2026年3月5日:Q4 / 通期 2025 決算で、PEMGARDA 売上 $17.2M(Q4)$53.4M(通期)年末現金 $226.7Mを報告。2025年後半に確保した資金を背景に、VYD2311 のピボタル開発、商業化準備、RSV / measles / Long COVID 展開を継続。

2026年2月3日:LIBERTY試験について FDA と整合。VYD2311 vs mRNA COVIDワクチンの安全性・免疫学比較、および併用投与を評価する Phase 3 として設計。FDA は本試験で mRNAワクチン関連AESI(心筋炎 / 心膜炎など)の特定モニタリングを要求。

2026年1月20日:SPEAR Study Group とともに、Long COVID / COVID vaccine injuryを対象とした VYD2311 Phase 2mid-2026 開始予定と公表。

2025年12月23日:COVID 予防抗体「VYD2311」が Fast Track 指定を取得。

2025年11月24日:RSV 予防向け抗体候補として VBY329 を選定。2H 2026 IND readiness を目標。

2025年10月6日:VYD2311米国INDクリア。FDA と REVOLUTION プログラム(DECLARATION / LIBERTY)で整合し、BLA-directed の開発方針を具体化。

承認済み製品 / 現状

PEMGARDA®(pemivibart)— EUA下で販売継続(PrEP/米国)

現状:PEMGARDA は FDA EUA のもと、中等度〜重度の免疫不全を有し、COVID-19ワクチンに十分な免疫応答を得にくい成人・青年に対する 事前予防(PrEP) で使用。Q4 2025 売上は $17.2M、通期 2025 売上は $53.4M。EUA 製品であり、正式承認品ではない点に注意。

主力開発候補:VYD2311(次世代長寿命mAb;IM)— Fast Track 指定取得済み。REVOLUTION プログラムの中核である DECLARATION は BLA-directed の pivotal Phase 3。2026年4月の増例決定により、トップラインは Q3 2026 見込みLIBERTYDRUMMERLong COVID / SPEAR まで含めると、単なる1本足ではなく「COVID予防の横展開」を狙う構図になっている。

補足:PEMGARDA はPrEP 限定の EUAで、治療 / PEP は対象外。会社開示ベースでは、JN.1 / KP.3.1.1 / XEC / LP.8.1 / XFG など主要変異に対する in vitro 中和活性を示している一方、使用継続の前提は今後も変異カバー維持に依存する。

主要臨床成績
84%
有症状COVID-19相対リスク低減
CANOPY Cohort B(探索解析)

$17.2M
Q4 2025 PEMGARDA売上
(YoY +25%, QoQ +31%)

$226.7M
2025年末現金
Q4 / FY2025時点

76日
VYD2311 IM半減期
Phase 1/2既報

Q3 2026
VYD2311「DECLARATION」
トップライン見込み

臨床試験パイプライン
EUA / Phase 3 follow-through
PEMGARDA(PrEP/CANOPY)

対象:COVID-19の事前予防(中等度〜重度の免疫不全者)

投与:静注の長寿命mAb

主要所見:CANOPY Cohort B の探索解析で有症状COVID-19相対リスク 84%低減を示唆
現状:米国EUA下で販売継続。Q4 2025売上 $17.2M、通期 $53.4M
留意点:EUA維持・販売継続は変異株カバーと実需に依存

Phase 3(進行中)
VYD2311(REVOLUTION)/DECLARATION

対象:COVID-19予防(成人・青年、リスク因子の有無を問う広い集団)

所見:VYD2311 は Fast Track 指定取得済み。DECLARATION は BLA-directed の pivotal 試験。

設計:

三重盲検・プラセボ対照。単回IM投与群月1回IM投与群を含み、主要評価は90日以内のPCR-confirmed symptomatic COVID発症率
進捗:

2026年4月に事前規定の sample-size re-estimation を実施。初期 1,818例に加え約500例追加し、統計的頑健性を補強。トップラインはQ3 2026 見込み
PK:IM半減期約76日。長間隔予防の実装可能性が差別化要素

Phase 3(開始準備中)
VYD2311/LIBERTY

対象:VYD2311 と mRNA COVID ワクチンの安全性・免疫学比較、および併用投与

所見:FDA とは CDER / CBER joint feedback ベースで整合。Q2 2026 開始目安

設計:約210例、二重盲検。VYD2311 / mRNAワクチン / 併用の3アーム設計
AESI:FDA は心筋炎 / 心膜炎など mRNAワクチン関連 AESI の特定モニタリングを要求
役割:DECLARATION の efficacy を補完し、安全性・実臨床ポジショニングを厚くする試験

Phase 2(予定)
VYD2311/Long COVID・COVID vaccine injury(SPEAR)

対象:Long COVID または COVID vaccine injury を有する患者

所見:mid-2026 開始予定。複数の高用量VYD2311を長期投与し、安全性・翻訳生物学・探索的有効性をみる。

設計:二重盲検・プラセボ対照。persistent infection / antigenemia を持つ患者の組み入れを重視
評価:機能評価、PRO、病態仮説検証を含む exploratory Phase 2

新規適応探索

Preclinical
VBY329(小児RSV予防)

対象:新生児・乳児・小児の RSV 予防

所見:2025年11月に候補選定。Invivyd は best-in-class候補 と位置づけ、2H 2026 IND readiness を目標。

差別化:nirsevimab / clesrovimab 比で、高い中和能・耐性バリア・半減期延長を狙う
次ステップ:IND-enabling、CMC、毒性パッケージ整備

ライン拡張候補

Discovery / IND-enabling
VMS063(measles 治療 / 予防)

対象:麻疹の治療および予防

所見:2026年4月に公表された新規候補。measles F protein を標的とする半減期延長mAbで、late 2026 IND readiness を目標。

特徴:複数系統に対し in vitro で広い中和活性。first- / best-in-class を狙うポジション
用途:症候性麻疹治療、曝露前 / 曝露後予防、乳幼児ブリッジ予防などを想定

新規感染症展開

パイプライン早見表
パイプライン 対象 臨床フェーズ 規制デザイン 安全性(AESI) 用法・用量 / 併用戦略 市場規模イメージ ポイント
PEMGARDA(pemivibart) COVID-19 事前予防(中等度〜重度の免疫不全者) EUA / 商業化 米:2024/3/22 EUA
正式承認ではなく、適応は PrEP 限定
アナフィラキシー / 重度過敏反応、点滴関連反応、
変異による中和感受性低下が最大の実務リスク。
ラベル準拠で反復投与。
ワクチンに十分反応しづらい集団の補完的位置づけ。
既存売上を持つ一方、EUA依存
変異株カバーと需要維持が株価材料。
VYD2311(COVID予防) COVID-19 予防(広い集団) Phase 3(DECLARATION / LIBERTY) 米:INDクリアFast Track
BLA-directed pivotal として進行。
mAbクラスとしては過敏反応、注射部位反応、ADA。
LIBERTY ではmRNAワクチン関連AESIも重点監視。
IM投与。単回投与 + 月1回投与を比較。
併用投与・安全性比較まで検証。
IVVD の最大バリュー。
Q3 2026 の DECLARATION トップラインが最重要カタリスト。
VYD2311(Long COVID / vaccine injury) Long COVID / COVID vaccine injury Phase 2(予定) 探索的適応拡張。
規制経路はまだ初期段階。
高用量・反復投与での安全性確認が主眼。 複数高用量の長期投与。
病態仮説検証を含む。
中〜大 成功すれば COVID 予防以外の評価軸を提供。
ただし現時点ではかなり探索的
VBY329 RSV(新生児・乳児・小児) Preclinical 候補選定済み。
2H 2026 IND readiness目標。
mAb共通の過敏反応、注射部位反応。
小児での安全域確認が今後の論点。
単回〜季節性予防を想定。 COVID一本足からの脱却候補。
半減期・耐性バリアが差別化軸。
VMS063 measles(治療 / 予防) Discovery / IND-enabling 2026年4月公表。
late 2026 IND readiness目標。
今後の非臨床 / 初期臨床で安全性プロファイル確認。 単回投与での治療 / 予防を想定。 社会的注目度は高いが、まだ初期。
新しい感染症mAbプラットフォームの象徴的案件。

ポイント

PEMGARDA は EUA 依存の収益基盤だが、Q4 2025 売上 $17.2M、通期 $53.4Mまで積み上がり、単なる「ゼロ売上の開発会社」ではなくなっている。一方で、販売継続の前提は引き続き変異株に対する中和活性維持と実需。

VYD2311 は、Fast Track を取得した IVVD の中核資産。DECLARATION は BLA-directed の pivotal Phase 3 で、2026年4月の sample-size re-estimation により約500例増例、トップラインは Q3 2026 見込みへ。遅延というより、有効性レンジに対する統計的な頑健性を高めるための調整として見るほうが近い。

REVOLUTION は DECLARATION だけではなく、LIBERTY(mAb vs mRNAワクチン安全性比較)、DRUMMER(小児免疫ブリッジ / 安全性)、SPEAR(Long COVID / vaccine injury)まで広がっており、VYD2311 が成功した場合のライフサイクル設計が見え始めている。

パイプライン拡張では、VBY329(RSV)VMS063(measles) が重要。特に VMS063 は 2026年4月に一気に具体化しており、IVVD は「COVID専業」から多ウイルス抗体プラットフォーム会社への転換ストーリーを打ち出しつつある。

開発ロードマップ
完了:2024年Q1

PEMGARDA EUA(PrEP)取得

米国で COVID-19 事前予防向けの EUA を取得。以後、商業展開を継続。

完了:2025年Q4

VYD2311:INDクリア/REVOLUTION具体化

DECLARATIONLIBERTY を中核とする REVOLUTION プログラムで FDA と整合。BLA-directed の開発方針を明確化。

完了:2025年Q4

VBY329(RSV候補)選定

RSV 予防向け候補として VBY329 を選定。2H 2026 IND readiness を目標に前進。

完了:2025年Q4

VYD2311:DECLARATION 開始/Fast Track取得

DECLARATION を開始し、同月に Fast Track designation を取得。IVVD の規制面で最も重要な進展。

完了:2026年Q1

SPEAR:Long COVID / vaccine injury 向け Phase 2 計画公表

mid-2026 開始予定。VYD2311 の探索的適応拡張として位置づけ。

完了:2026年Q1

LIBERTY:FDA整合

VYD2311 vs mRNAワクチンの安全性・免疫学比較、および併用投与の設計で FDA と整合。約210例の Phase 3 として具体化。

完了:2026年Q1

Q4 / FY2025 決算

PEMGARDA Q4売上 $17.2M、通期 $53.4M、年末現金 $226.7M を確認。資金面の不安は大きく後退。

完了:2026年Q2

DECLARATION 増例 / DRUMMER整合 / VMS063前進

sample-size re-estimation により 約500例追加、トップラインは Q3 2026 見込みへ。FDA と DRUMMER の initial Pediatric Study Plan で整合し、VMS063 も IND-enabling 段階へ。

2026年Q2

LIBERTY 開始目安

最終プロトコル提出済みで、会社資料では Q2 2026 の立ち上げ が視野。

2026年Q2

SPEAR Phase 2 開始予定

Long COVID / COVID vaccine injury 向け VYD2311 試験が mid-2026 に始まる計画。

2026年Q3

DECLARATION トップライン

IVVD 最大の株価イベント。成功なら BLA 議論、商業化準備、小児展開 に直結。

2026年後半

VBY329:IND readiness

小児RSV予防候補 VBY329 の 2H 2026 IND readiness が目標。

2026年後半

VMS063:IND readiness 目標

麻疹向け候補 VMS063 は late 2026 IND readiness を目標に前進。

注目すべきカタリスト
短期(2026年Q2)
LIBERTY の開始(安全性比較・併用データの土台)。
SPEAR Phase 2 の立ち上げ
PEMGARDA の四半期売上 と変異株カバー継続の確認。

中期(2026年Q3)
VYD2311「DECLARATION」トップライン(最重要)。
・結果次第で BLA 戦略 / 小児展開 / 商業準備 が一気に具体化。
・成功時には IVVD の評価軸が「EUA売上」から「申請・承認候補」へシフト。

長期(2026年後半〜)
VBY329(RSV)IND readiness
VMS063(measles)IND readiness
・DECLARATION 成功後の DRUMMER(小児) 設計 / 開始タイミングの具体化。