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Merck のフェーズ2 CADENCE 試験から TENX を読み解く

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Merck のフェーズ2 CADENCE 試験から TENX を読み解く

2026年3月29日に発表された Merck の CADENCE は「CpcPH-HFpEFで sotatercept が効く可能性」をかなり強く示したニュースです。

CADENCE は CpcPH-HFpEF を対象にした Phase 2 で、主要評価項目のPVR低下を両用量で達成し、0.3 mg/kgで -1.02 Wood units(p=0.004)、0.7 mg/kgで -0.75 Wood units(p=0.024) でした。

二次項目では、6MWD は 0.3 mg/kg で +20.3m、一方 0.7 mg/kg は +5.8m で有意差に届かず、Merck 自身も 0.3 mg/kg の方が benefit-risk を最適化しそうと述べています。

さらに clinical worsening は0.3 mg/kgでHR 0.18、0.7 mg/kgでHR 0.59 と、方向性は悪くありません。Merckはこのデータをもって registrational Phase 3 へ進める方針です。

CpcPH-HFpEF に大手が本気で入るだけの価値がある

ここで大事なのは、このデータは “Merck の薬がすごい” というより、“Group 2 PH、とくに CpcPH-HFpEF に大手が本気で入るだけの価値がある” ことを示した点です。

Merck は CpcPH-HFpEF を、HFpEF 単独より予後が悪く、承認薬がない distinct population と明確に位置づけています。TENX もまた、PH-HFpEF には承認薬がないという前提で oral levosimendan を Phase 3 まで進めており、会社はこの領域を最も一般的な PH の一つとして開発しています。

つまり、市場の “パイの大きさ” とアンメットニーズの大きさという点では、MRK ニュースは TENX に追い風です。

エンドポイントの違い

ただし、TENX の成功確率にそのまま強い readthrough があるかというと、そこは限定的です。理由は、対象患者と主要エンドポイントが違うからです。Merck の CADENCEは CpcPH-HFpEF に絞り、主要評価項目は PVR です。

これに対して Tenax の LEVEL / LEVEL-2 は PH-HFpEF 全体を対象とする registrational Phase 3 で、主要評価項目は 6MWD です。

Tenax は2025年12月に、LEVEL が25mの6MWD差を検出するのに90%以上の power を持つと示し、LEVEL トップラインを2026年後半に見込んでいます。

つまり、Merck は “より肺血管病変寄りの狭い集団でPVRを見る” 試験、TENX は “より広い PH-HFpEF で機能改善を見る” 試験です。そのため、MRKデータは TENX の PoS を直接押し上げる証拠とまでは言えません。

readthrough は TECX の方が強い

むしろ、この MRK ニュースの直接的な readthrough は TECX の方が強いです。Tectonic の TX45 / APEX は PH-HFpEF だが CpcPHにenrich していて、PVR ≥3 WUの CpcPH 集団が主要評価対象です。

会社は明確に、APEX の一次評価項目が CpcPH 集団のPVR変化だと説明しています。これは、CpcPH-HFpEF でPVRを主要軸に見たCADENCE とかなり近い設計思想です。

だから、MRK が CpcPH-HFpEF でPVR中心のパッケージを registrational に進めるのは、TECX には相対的にポジティブ、TENX には主に “市場と疾患重要性のバリデーション” という読み方が自然です。

MRK の 6MWD が “圧倒的” ではなかったこと

TENX 側に引きつけて一番重要なのは、MRK の 6MWD が “圧倒的” ではなかったことです。Tenax の Phase 2 HELP では、levosimendan は 6MWD で placebo 比+29.3m(p=0.033)を示し、exercise-PCWP の主要評価項目自体は未達だったものの、全運動段階でのPCWP低下は示しました。

もちろん、HELP は open-label lead-in 後のランダム化 で、IV levosimendan の小規模試験なので、CADENCE と単純比較はできません。ですが、少なくとも Merck の sotatercept が機能面で “50m級の圧勝データ” を出したわけではないため、将来 TENX が商業的に完全に押し潰される、という読みにはなりません。

MRK の逆用量反応は素直にはきれいではない

一方で、MRK の逆用量反応は素直にはきれいではないです。高用量の方がPVRも6MWDも見栄えが悪く、AEによる中止も高用量群で多かったので、これは確かに “傷” です。ただ、Merck はもともと CADENCE を proof-of-concept かつ用量探索の Phase 2 として走らせていて、最終的に 0.3 mg/kg を Phase 3 候補にする姿勢を明確にしています。

そのため、これは 「薬効がない」より「この患者集団では高用量が最適でなかった」と読む方が近いです。TENX 文脈では、sotatercept の MOA が Group 2 PH 全体を独占するほど強いとはまだ言えない、という意味でやや安心材料です。

まとめ

MRK ニュースは TENX にとって “市場バリデーションとしては明確にプラス”、でも “成功確率の直接 readthrough としては限定的” です。たの同じ領域では、このニュースは TENX より TECX に強く効く、という見方がいちばんしっくりきます。

そのうえで、MRK の 6MWD が平凡で逆用量反応だったことは、TENX が将来勝負できる余地を残したとも言えます。