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同じ領域を、同じ領域のバイオが買う流れが増えている (SMIDが買い手に回る)

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同じ領域を、同じ領域のバイオが買う流れが増えている (SMIDが買い手に回る)

2025年下半期のバイオセクターでは、「同じ領域を、同じ領域のバイオが買う」動きが目立っています。

これまでのように Big Pharma が主役のM&Aだけではなく、上場の小〜中型(SMID-cap)が “買い手” に回り、自社の得意分野(または隣接分野)で買収するケースが増えている――いわゆる “XBIトレンド” です。

直近では、2025年12月8日に希少疾患薬メーカーの Mirum Pharmaceuticals(MIRM)は、非上場のスタートアップ Bluejay Therapeutics を買収すると発表しました。

取引規模は、条件次第で最大8億2,000万ドルに達する可能性があります。Bluejay は、D型肝炎の治療薬を開発している企業です。

つまり今回の買収は、Mirum が自社の強みがある領域で “勝ち筋のある資産” を取り込みにいった例であり、SMID-cap が「買われる側」ではなく「買う側」になっている流れを、さらに分かりやすく示しています。

同様の流れとして、以下のような事例も注目されています。

$DAWN × $MRSN
$BCRX × $ATXS
$ALKS × $AVDL

なぜ今「同じ領域のバイオをバイオが買う」のか?

ここ1〜2年のバイオM&Aで目立つのは、大手製薬(Big Pharma)が全部を飲み込む、だけではなく小〜中型(SMID)の上場バイオが、同じ治療領域・同じ商業インフラで回せる案件を買うという構図が増えている点です。

背景には、上場バイオの株価/バリュエーションが長く抑えられ、資金調達が難しい局面が続いた一方で、一部の SMID は「売上(製品)や十分なキャッシュ」を持ち始めたことがあります。

マーケット環境の悪化とM&A増加の関係は、取引動向レポートでも言及されています。

具体例で見る「得意領域内M&A」

$MIRM × Bluejay(Private)—「希少×肝臓」ど真ん中の補強

【MIRM】Mirum Pharmaceuticals カタリストとロードマップ

Mirum は Bluejay を最大$820M(現金$250M+株式$370M+売上連動マイルストーン最大$200M)で買収し、D型肝炎向けの後期抗体薬「brelovitug」を獲得します。

最終結果は2026年後半、承認・米国ローンチは2027年の可能性、クローズは2026年Q1見込みと報じられています。

→ “希少×肝臓” という専門領域内での拡張で、買収の論理が分かりやすいタイプ。

$BCRX × $ATXS — HAEフランチャイズを「経口+長期作用型注射」に拡張

【BCRX】BioCryst Pharmaceuticals カタリストとロードマップ

BioCryst は Astria を約$700Mで買収し、HAE(遺伝性血管性浮腫)の後期資産「navenibart(長期作用型・注射)」を取り込みます。

BioCrystはすでにHAEで経口薬「Orladeyo」を販売しており、買収で「経口+注射」の両面展開を狙う構図です。データは2027年前半想定、クローズは2026年Q1見込み。

→ 同じ疾患・同じ処方医の“販売バッグ”を厚くする、典型的な同領域ボルトオン(bolt-on)。

$DAWN × $MRSN — オンコ領域で「資産を安く、後ろ重心で」取り込む

【DAWN】Day One Biopharmaceuticals のカタリストとロードマップ

Day One は Mersana を最大$285M($25/株の現金前払い+CVRで最大$30.25/株)で買収。主にADC資産(Emi-Le)を獲得し、オンコのパイプラインを増やします。

→ 前払いを抑え、成功時の対価をCVRへ寄せるのは、SMIDが “財務リスクを抑えて後期価値を取りにいく” 時の典型設計。

$ALKS × $AVDL — 神経領域(睡眠)で「商業資産+将来適応のオプション」を買う

Alkermes は Avadel を最大$2.1Bで買収する合意(その後、競合提案を受けて条件を引き上げ)。中核はFDA承認済みの睡眠障害治療薬「Lumryz」。

当初の条件は$18.50/株+追加$1.50/株(将来の適応拡大が条件)で、のちに$21/株+最大$1.50/株の形に修正されています。クローズは2026年Q1見込み。

→ これは「同じ領域」というより “隣接する神経・睡眠フランチャイズを商業資産で一気に作る” タイプ。SMIDが買い手に回る流れの代表例。

こういうM&Aが増える「3つの理由」

1. 「分野内買収」は統合が速い
同じ診療科・同じKOL・同じ患者導線なら、統合コストが低く、営業効率も上げやすい(BCRXのHAEが分かりやすい)。

2. “後期資産” を買うほど、買収の説明が通りやすい
Mirum の brelovitug のように後期・明確な開発計画が見える資産は、買収理由を作りやすい。

3. ディール設計が「後ろ重心(マイルストーン/CVR)」になっている
成功したら払う(=買い手の下方リスクを抑える)設計が増え、SMID でも買いやすくなる(Mirumの売上連動、DAWNのCVR、ALKSの将来適応条件)。

投資家が見るべきチェックリスト(“本当に良い買収”か?)

・同じ営業組織で回せるか(診療科・処方医が重なるか)
・買収資産が「後期」「差別化」「適応追加」どれで伸びるか
・対価の形:前払いが軽く、マイルストーン/CVRが厚いと買い手の下方リスクは相対的に軽い
・買収後の資金繰り:追加増資が必要になる設計か、内部資金で走れるか

まとめ

記事で取り上げた4社のバイオ企業は、共通して「得意領域(or 隣接領域)で、SMIDが “買い手” になって成長を作る」という流れを映しています。特に、売上や商業インフラを持つ側が、後期/商業資産を取り込んでフランチャイズを太らせる。この形は、今後もしばらく続くかもしれません。