Zoomy

RA Capital が CLYM の持分は維持しつつ、株をワラントに形態変更

【記事には広告を含む場合があります】

RA Capital が CLYM の持分は維持しつつ、株をワラントに形態変更

2025年12月11日、RA Capital が保有していた Climb Bio (CLYM) の普通株 2,044万株を、いったん会社に返して、代わりに同じ2,044万株を買える pre-funded warrant(事前払込型ワラント)に置き換える、という取引を行いました。

Climb Bio (CLYM) 株式交換契約:2025年12月11日、Climb Bio は RA Capital と、普通株式20,440,000株を同数の株式購入権(事前資金調達済みワラント)と交換する契約を締結した。これにより RA Capital は取引後23.0%の議決権を取得する。本届出は同社の資本構成に重大な調整が生じたことを示す。

ポイントとしては、

・株数の “経済的な持分” はほぼ同じ(実質、同じだけ会社に賭け続けている)
・でも持ち方(形式)だけを「普通株 → ワラント」に変えた

ということです。

【CLYM】Climb Bio カタリストとロードマップ

pre-funded warrant とは?

・普通のワラントより特殊で、
・ほぼ代金を先に払ってある(だから “pre-funded”)
・行使価格はすごく小さい(例:$0.01とか)
・RA Capital は必要になればいつでも株に変えられる
・ただし 株に変えるまでは “普通株主” としての扱いが少し違う(ここが狙い)

なぜこんな面倒なことをするのか?

目的はだいたい次の3つです。

1. “支配している”と見られるリスクを調整するため
大株主が普通株をドカっと持つと、将来の提携・M&A・資金調達で「支配株主がいる会社」と見られて手続きが面倒になったり、条件が悪くなったりします。ワラント化すると、その“見え方”をコントロールしやすい。

2. 将来の資本政策(増資・提携)をやりやすくするため
発行済み株式数や議決権の扱いを整理して、次の資金調達や取引の障害を減らす効果があります。

3. RA Capital が「簡単に抜けない」形でコミットするため
普通株を市場で売るより、ワラントの形にしておく方が “持ち続ける前提” のアンカー投資家っぽい構造になります(もちろん売れないわけではないですが、動きにワンクッション入ります)。

「23%の議決権」とは?

取引後も RA Capital は、会社の意思決定に大きく影響できるレベル(約23%)の投票力を持つ、ということです。

つまり、RA Capital は持分を減らしたわけではなく、むしろ「強い立場で長く関与できるように “持ち方” を整えた」というのが一番わかりやすい理解です。

RA が過去に行った pre-funded warrant に置き換える取引

RA Capital が「既存の普通株をいったん会社に戻して(retire/treasury化)、同数の pre-funded warrant に置き換える」タイプの取引は、CLYM が初めてではありません。

以下に、CLYM と同型の “株 → pre-funded warrant への交換” の例をご紹介します。

2024年8月 : Fulcrum Therapeutics(FULC)

【FULC】Fulcrum Therapeutics カタリストとロードマップ

FULC は RA Capital が保有していた普通株 8,500,000株を、同数を取得できる pre-funded warrant に交換したことを開示しています。

これは、CLYM と同じく「経済的エクスポージャーを維持しつつ、株式の形態をワラントに置き換える」構造です。

2024年12月 : 4D Molecular Therapeutics(FDMT)

【FDMT】4D Molecular Therapeutics カタリストとロードマップ

FDMT も RA Capital が保有する普通株(535,000株)を、同数の pre-funded warrant に交換したことが10-Qで明記されています。

まとめ

これらの事例に共通するのは、「経済的な持分は維持したい(=売りたいわけではない)」株を減らすのではなく、“形態” を変えるのが主眼。

大株主としての “扱われ方”(10%/20%/支配・CoC/議決権関連)を調整したいというもの。CLYM では特に*33%上限や比例投票を明示していて、「支配」に見えないように/将来イベントの地雷を踏まないように、を強く意識している形です。

次の資本政策(増資・提携・M&A等)に備えて、資本構造を “扱いやすく” するというのもあります。このタイプは「株価を上げるための小細工」というより、次の手を打つ前の土台整備として出てくることが多いです。