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Novo Nordisk のCEO、肥満薬の市場シェアを失い退任へ

Novo Nordisk (ノボ ノルディスク) のCEOであるラース・フルーアゴー・ヨルゲンセン氏が退任することが決定した。この退任の主な理由は、同社の株価が2024年半ば以降に約50%下落し、肥満治療薬市場での競争激化により市場シェアを失ったことです。

肥満ブームに沸いていた2024年の春以降には素晴らしい業績と株価で1株140ドル以上で取引されていましたが、この分野での競争激化、供給体制の問題が重なってしまいました。

ヨルゲンセン氏は2017年にCEOに就任し、在任中に売上や利益、株価を大きく伸ばし、同社を欧州で最も価値のある企業の一つに押し上げました。しかし、近年では肥満治療薬「Wegovy」の供給不足や、競合他社であるイーライリリーの「Zepbound」に市場シェアを奪われるなどの課題に直面していました。

これらの市場の課題や株価の下落を受けて、ノボ ノルディスクの支配株主であるノボ ノルディスク財団がCEO交代を提案し、取締役会とヨルゲンセン氏が合意に至ったと報じられています。

株価の下落

ノボノルディスクの株価は、2024年半ばから約50%下落しています。主因は、肥満治療薬「Wegovy(ウゴビー)」の供給制約と市場シェアの低下です。

株価低下は、機関投資家や支配株主(ノボ財団)からのプレッシャーを強めることになりました。

ライバル、イーライリリーの急台頭

Eli Lilly (イーライリリー) の肥満治療薬「Zepbound(ゼップバウンド)」が2024年後半に本格展開し、米国市場でノボのシェアを奪う形になりました。

Zepbound は GLP-1+GIP のデュアルアゴニストであり、臨床データ・体重減少効果・供給体制の面で Wegovy を上回ると評価されました。

これにより、ノボの将来成長シナリオに対する投資家の期待値が急速に下落しました。

供給体制の問題

ノボノルディスクは肥満治療薬の急激な需要増に対応しきれず、製造能力の拡大が後手に回ってしまいました。特に2023年末~2024年前半にかけては、米国での薬局在庫不足が続出します。

「売りたくても売れない」状況が長らく続き、投資家に強い不安感を与えることになりました。

HIMS との提携

ノボ ノルディスクは一連の株価下落を受けて、2025年4月29日に Hims & Hers Health(HIMS)との戦略的パートナーシップを発表しました。

この提携は、肥満治療薬「Wegovy(ウゴビー)」のアクセス性と価格の改善を目的としています。Hims のデジタルヘルスプラットフォームを通じて、米国の消費者が Wegovy をより手軽に利用できるようになります。

Hims は、以前からGLP-1受容体作動薬であるセマグルチド (Wegovy の有効成分) の調剤版を提供していましたが、2025年2月にFDAが Wegovy の供給不足の解消を発表したことにより、調剤版の提供が制限されました。

これを受けて、Hims はノボ ノルディスクとの正式な提携を結び、正規の Wegovy を提供することとなりました。

まとめ

ラース・ヨルゲンセンCEOの退任は、ノボ ノルディスクが「GLP-1バブル」から「グローバル製薬企業」としての成熟へ転換するタイミングでの戦略的な交代といえます。

彼の退任は失敗というより、「成功の次の段階へのバトンタッチ」とも受け取ることができます。ただし、イーライリリーとの熾烈な競争に打ち勝つには、後任CEOの手腕が試される局面です。