Intellia Therapeutics(NASDAQ: NTLA)が開発中のCRISPRベースの遺伝子治療薬「Nexiguran Ziclumeran(nex-z、旧称NTLA-2001)」が、2025年5月に開催された Peripheral Nerve Society(PNS)年次会議で発表された第1相試験の2年間のフォローアップデータにより、大きな注目を集めています。
この成果は、遺伝性トランスサイレチンアミロイドーシス(ATTRv-PN)に対する治療法として、CRISPR技術の可能性を示す重要なマイルストーンとなっています。
研究の概要と成果
・治療効果の持続性と深さ
TTRタンパク質の持続的な抑制:0.3 mg/kg以上の単回投与を受けた33人の患者において、投与28日目に平均90%の血清TTR濃度の減少が確認され、その効果は24か月間持続しました。
・臨床的な改善
神経障害の改善:18人の患者のうち14人が、24か月時点で修正神経障害スコア(mNIS+7)において4ポイント以上の臨床的に有意な改善を示しました。特に、従来の治療薬パチシランで進行していた6人の患者のうち5人が改善を示しました。
・安全性
良好な安全性プロファイル:治療関連の副作用は、軽度から中等度の輸液関連反応が主であり、重篤な副作用は報告されていません。
– 単回投与で血清TTRを90%以上減少させ、効果は24か月持続。
– 神経障害の臨床的改善も確認(mNIS+7スコアで有意な改善)。
– 副作用も限定的で、“in vivo CRISPR” の新たなゴールドスタンダードと評価。
投与一回で長期効果という “一撃治療” の現実性を証明。CRISPRはもはや試験室の技術ではなく、「持続性がある治療法」へ。
CRISPR技術の革新性
「nex-z」は、CRISPR/Cas9技術を用いて、肝臓でTTR遺伝子を直接編集し、異常なトランスサイレチンタンパク質の産生を抑制します。このアプローチは、従来のRNA干渉療法とは異なり、単回投与で長期的な効果が期待される点で革新的です。
今後の展望
Intellia は現在、「nex-z」の有効性と安全性を評価する第3相試験が進行中であり、2028年までに生物製剤承認申請(BLA)を目指しています。
まとめ
Intellia の「nex-z」に関する最新の臨床データは、CRISPR技術が遺伝性疾患の治療において実用化の段階に近づいていることを示しています。
特に、従来の治療法で効果が限定的だった患者においても改善が見られたことは、CRISPRベースの治療法の可能性を強く示唆しています。
今後の第3相試験の結果が、CRISPR技術の医療応用における重要な指標となるでしょう。