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【PASG】Passage Bio カタリストとロードマップ

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ハイライト

ざっくり言うと、今の PASG は「FTD-GRN / C9orf72 向けの PBFT02 1本にかなり集中+HD 前臨床」で、LSD(GM1 / Krabbe / MLD)は GEMMABio に出してキャッシュを節約しつつ、将来のマイルストン/ロイヤルティだけ残した形になっています。

2024年8月:3つの小児遺伝病プログラム(PBGM01 / PBKR03 / PBML04)をGEMMABioにアウトライセンス。開発コストを抑えつつ、マイルストン+ロイヤルティのオプション資産として残す構造へ転換。
2025年1月:PBFT02(FTD-GRN)Dose 1 コホートの初期データ(CSF PGRN 上昇・NfL 低下トレンド)をアップデート。
2025年上期:FTD-C9orf72 コホートの初回投与開始予定。Dose 2(低用量)で NfL・PGRN・臨床指標を評価。
2025年下期:PBFT02 Dose 1(高用量)の12ヶ月データと Dose 2 中間解析を予定。バイオマーカーと臨床アウトカムの関係性が焦点に。
2027年Q1:現行計画ベースのキャッシュランウェイの目処。2025後半〜2026年前半のデータとレジストレーション・パス議論が「増資前の勝負所」。

承認済み製品 / 現状

承認済み製品:なし(開発中)

主力候補:PBFT02(AAV1-GRN 遺伝子置換)— GRN 変異による FTD-GRN、および C9orf72 変異を伴う FTD-C9orf72 を対象。

補足:Huntington 病(HD)向けの gene therapy プログラムが前臨床で進行中。小児リソソーム病プログラム(PBGM01 / PBKR03 / PBML04)は GEMMABio にライセンス済みで、PASG は将来のマイルストン&ロイヤルティのみを受領するオフバランス型のオプション資産となっている。

主要臨床成績
2025年Q1
PBFT02 Dose 1(FTD-GRN)6ヶ月データ更新:CSF PGRN が 13–27 ng/mL に上昇、NfL は自然歴に対し低下トレンド

2025年Q4
PBFT02 Dose 1 12ヶ月データ&Dose 2 中間解析:PGRN・NfL・初期臨床アウトカムの関係性を評価

2026年Q1–Q2
FTD-GRN における pivotal 試験デザインについて規制当局と協議(レジストレーション・パス議論)

2027年Q1
運転資金の目処(現行ガイダンス上のキャッシュランウェイ)

臨床試験パイプライン
Phase 1/2
PBFT02(FTD-GRN / FTD-C9orf72)

対象:GRN 変異による FTD-GRN、および C9orf72 変異を有する FTD-C9orf72

作用:AAV1 ベクターを intra-cisterna magna(ICM)投与し、GRN 遺伝子を中枢全体にデリバリー。progranulin(PGRN)を増加させ、リソソーム機能回復と神経変性(TDP-43 病理など)の抑制を狙う。

進捗:upliFT-D(NCT04747431)Phase 1/2 試験中。FTD-GRN に対する Dose 1 コホートで PGRN の持続的増加と NfL 低下トレンドを確認済み。FTD-C9orf72 コホートは 2025年上期に Dose 2(低用量)で初回投与予定。
安全性/PD:7例中5例は軽度〜中等度 AE。静脈洞血栓症(VST)+肝毒性の SAE を認めたが、免疫抑制レジメンの調整と抗凝固療法で対処。DRG 毒性や ICM 手技由来の重篤合併症シグナルは現時点で報告なし。
次読出し:2025年Q4 に Dose 1 12ヶ月データ、Dose 2 中間解析。2026年Q1–Q2 にレジストレーション・パス議論(Type B meeting 想定)。

Phase 1/2(GEMMABio 主導)
PBGM01(GM1 gangliosidosis)

対象:GM1 gangliosidosis(乳児型・若年型など)

作用:AAVhu68 ベクターを ICM 投与し、GLB1 遺伝子を導入。β-gal 活性を上昇させ、GM1 蓄積を減少させることで神経変性の進行を抑制。

進捗:Imagine-1 Phase 1/2 試験で良好な安全性と初期有効性シグナル(8例中間データ)。2024年8月に GEMMABio へライセンスされ、以降の開発は GEMMABio が主導。
位置付け:PASG にはマイルストン+ロイヤルティを通じたオプション価値のみが残る形で、キャッシュ消費は GEMMABio 側に移転。
次読出し:GEMMABio からの追加データと開発計画アップデート(時期は未定)。

前臨床
Huntington’s disease プログラム

対象:Huntington 病(HD)

作用:gene therapy ベースで、変異 HTT の毒性を抑制・修飾することを狙った設計(詳細は未開示)。

進捗:前臨床で薬効・安全性評価を進行中。upliFT-D アップデートでも「PBFT02 に集中しつつ HD プログラムを前臨床段階で前進」と明記。
次ステップ:IND-enabling 試験完了と IND 申請に向けた毒性・製造スケールアップの整備。タイムラインは現時点で公表なし。

中長期オプション(④ プラットフォーム拡張寄り)

パイプライン早見表
パイプライン 対象 臨床フェーズ 規制デザイン 安全性(AESI) 用法・用量 / 併用戦略 市場規模イメージ ポイント(市場評価)
PBFT02(AAV1-GRN) FTD-GRN / FTD-C9orf72 Phase 1/2 upliFT-D:オープンラベル P1/2(多施設)、3コホートの FTD-GRN(用量探索)+2コホートの FTD-C9orf72。2年+3年の長期安全性フォロー。 静脈洞血栓症(VST)、肝酵素上昇、免疫関連事象(サイトカイン反応・抗 AAV 抗体)、ICM 手技合併症を重点監視。 単回 ICM 投与の one-time gene therapy。免疫抑制レジメンを最適化しつつ、レジストレーション段階で Dose 1 vs 2 を最終確定。 中〜大:FTD-GRN は希少だが高未充足、C9orf72 含めると FTD の重要サブセット。 バイオマーカー(PGRN・NfL)で PoC を取りつつ、2026年のレジパス協議次第で②(レジパス見え始め)寄りに昇格しうる「③ 当たると大きい」枠。
PBGM01(GM1 gangliosidosis) GM1 gangliosidosis Phase 1/2(GEMMABio 主導) Imagine-1:用量漸増 P1/2(ICM 投与)で安全性・β-gal 活性・発達指標を評価。 ICM 手技リスク、AAVhu68 capsid に伴う免疫反応、肝酵素変動など。 単回 ICM 投与。GEMMABio 側で適応拡大・年齢層別の最適化も検討余地。 中:超希少だが、重篤でライフタイムインパクトが大きい小児遺伝病。 PASG にとってはマイルストン+ロイヤルティのオプション資産。キャッシュアウトなく upside に乗れるが、バリュエーションへの反映は中長期。
PBKR03 / PBML04(Krabbe / MLD) Krabbe 病、メタクロマチック白質ジストロフィー Phase 1/2(GEMMABio 主導) ICM 投与の P1/2(用量漸増→拡大)で安全性・酵素活性・MRI 所見などを評価。 髄腔内投与に伴う神経学的 AESI、AAVhu68 由来の免疫反応、肝腎毒性をモニタリング。 単回 ICM 投与。早期介入での効果と既に進行した患者でのベネフィット差を検証。 中:対象患者数は少ないが、重篤で未充足ニーズ大。 こちらも GEMMABio による開発で、PASG 側は③+④ の外部コラボ枠としてオプション価値を保持。
Huntington’s disease プログラム Huntington 病(HD) 前臨床 前 IND 準備(毒性・線条体など標的部位への分布評価、長期安全性データの蓄積後に IND を計画)。 中枢 gene therapy として、DRG・脊髄・基底核領域の安全性、免疫毒性を非臨床で精査。 将来は単回中枢投与(ICM/IT など)を想定。既存 HTT 低下薬との位置付けを意識した開発戦略が必要。 大:HD 全体は希少だが、ライフタイムでの負担が大きく disease-modifying therapy の価値は高い。 完全に④(プラットフォーム拡張)寄りのロングテール・オプション。PBFT02 成功が資金的・規制的な追い風になる構造。

ポイント
  • フォーカスの明確化:小児 LSD(GM1 / Krabbe / MLD)を GEMMABio に出し、PASG 本体は 成人ニューロデジェ(FTD-GRN / C9 + HD) に集中。リソース配分とキャッシュ消費をスリム化。
  • バランスシートの軽量化+オプション維持:LSD 群をアウトライセンスしたことで、開発費負担は軽くしながら、成功時のマイルストン+ロイヤルティを通じた非希薄的アップサイドを残している。
  • あなたの①〜④での位置付け:PBFT02 は 「③(当たると大きい)」寄りで、2026年の規制ディスカッション次第で②(レジパス見え始め)寄りに昇格しうるポジション。HD は④ プラットフォーム拡張寄り、GEMMABio 3本は③+④の外部コラボ枠として扱うイメージ。

ファンドのポジション

投資家目線では、PASG は「PBFT02 1本で FTD-GRN / C9 の disease-modifying therapy を狙う中期バリュー+、HD/小児LSDがロングテールのオプション」という構造に整理できます。ランウェイは2027年Q1 までとガイダンスされているため、2025年後半〜2026年前半にかけての PBFT02 データ(Dose 1 12ヶ月・Dose 2 中間)とレジパス議論が、増資前の勝負所になりやすいと考えられます。機関投資家としては、

  • PBFT02 のバイオマーカー/NfL/臨床スコアの一貫性
  • 規制当局が pivotal デザインにどこまで前向きか
  • LSD 群・HD プログラムに対する“オプション価値”をどう評価するか

といった観点でポジションサイズを調整していくフェーズにあります。

開発ロードマップ
完了:2024年Q3

PBGM01 / PBKR03 / PBML04 を GEMMABio にライセンス

小児リソソーム病3本を GEMMABio にアウトライセンスし、PASG 本体は FTD / HD へフォーカス。以降はマイルストン&ロイヤルティのみ取得。

完了:2025年Q1

PBFT02 Dose 1(FTD-GRN)6ヶ月データ更新

CSF PGRN が 13–27 ng/mL に上昇し、最長18ヶ月で維持。NfL は自然歴に対して低下トレンドを示し、悪化傾向の反転シグナルを確認。

2025年Q1–Q2

FTD-C9orf72 コホート初回投与 / Dose 2 立ち上げ

upliFT-D で FTD-C9orf72 コホートを Dose 2(低用量)で開始。FTD-GRN Cohort 2 でも Dose 1/2 を使い分けながら安全性・PGRN・NfL を評価。

2025年Q4

PBFT02 Dose 1 12ヶ月データ&Dose 2 中間解析

FTD-GRN Dose 1 の12ヶ月フォローで PGRN・NfL・臨床スコアの持続性を確認。Dose 2(低用量)での安全性/バイオマーカーを中間解析し、pivotal 用量選択の材料を蓄積。

2026年Q1–Q2

レジストレーション・パス協議(FTD-GRN)

規制当局との Type B meeting 等で、主要評価項目(バイオマーカー vs 臨床アウトカム)、対照(自然歴 vs プラセボ)、Dose 1 vs 2 の選択を含む pivotal 試験デザインを協議。

2027年Q1〜

ランウェイ終盤での資本戦略・pivotal 実行

2027年Q1 までのランウェイを踏まえ、PBFT02 pivotal 試験の進捗と並行して、追加資金調達(公募・パートナー拡大など)や HD プログラムの開示タイミングを含めた中長期戦略を更新。

注目すべきカタリスト
短期(〜2025年Q4)
PBFT02 Dose 1(FTD-GRN)12ヶ月データ、Dose 2(低用量)の安全性&バイオマーカー中間解析、FTD-C9orf72 コホートの立ち上がり状況。

中期(2026年)
FTD-GRN でのレジストレーション・パス協議(Type B meeting 等)、18〜24ヶ月フォローでの NfL・臨床スコアのトレンド確認、pivotal 試験開始可否の判断。

長期(2027年〜)
PBFT02 pivotal 試験の進捗と結果、FTD-C9orf72 コホート 12〜24ヶ月データによる適応拡大ポテンシャル、HD プログラムの IND・初期データ開示、小児LSD(GEMMABio)のマイルストン発生。