VRNA 買収までの軌道
以下は VRNA の上場以降の長期チャートです。
1. 初動のビッグカタリスト(株価が動いた起点)
2022年8月9日 : COPD向けネブライザー製剤 ensifentrine の第3相 ENHANCE-2で主要評価項目達成を発表。肺機能・症状の改善に加え、増悪率/リスク低下も示し、投資家の期待が一気に高まりました(株価はおおむね6→14ドル近辺まで急騰)。
同タイミングで公募増資を実施。公募価格 $10.50(8/10にプライシング、8/15にクロージング)。データで上がった株価の「資金調達での冷やし」を経て、しばらくはモミ合いに。
2. 確証の2発目(P3もう一つの成功)
2022年12月20日 : ENHANCE-1のトップラインも主要達成を発表。これでP3二連勝が確認され、承認見通しが一段と強まり株価は20ドル台へ。
3. 承認までの “待ち時間” と相場環境
その後はNDA~審査~PDUFAの待機局面に入り、金利上昇などマクロ逆風の影響もあり株価は往来(2023年~2024年春は二桁前半まで下押しする場面も)。※この間の会社側の本線は「承認取得に必要な手続きを着実に進める」こと。
4. 2024年6月26日、米FDA承認(製品名 Ohtuvayre®)
適応:成人のCOPD維持療法。世界初の「PDE3/4デュアル阻害×吸入」のコンセプト薬。承認で “ストーリーがリスクから収益へ” と切り替わります。
5. なぜ承認後も Phase 3b / 4 をやるの?(“任意の攻めの臨床”)
必須の追加要件に縛られたものではなく、商用拡大と将来的なラベル強化を狙った実臨床寄りの検証です。
具体的には、ENHANCEで示した肺機能・症状に加えて、増悪抑制・アドヒアランス・併用下の効果・患者報告アウトカム(PRO)など“現場”で効く指標を、P3b/4や追加解析で積み上げる方針。ATS 2025でもENHANCEの解析を多数発表しています。
6. 立ち上がりが好調(商用トラクションが見えた)
2025年Q1の「Ohtuvayre」純売上 $71.3M、約2.5万処方。四半期売上の伸びが確認でき、単なる承認銘柄から “伸びる特許資産” へと評価軸が変化。
7. そこで “メルクが来た”(買収発表)
2025年7月9日 : Merck(MRK)が約$100億での買収を正式発表(ADS $107)。承認・上市後で、初期販売の実績が見え、かつ追加エビデンス創出で更に伸ばせる地合いが整ったタイミングでした。
背景として、メルクは Keytruda 特許満了(2028年頃)に向けた“収益の柱”分散を急いでおり、呼吸器の成長ドライバーを外部調達する戦略が指摘されています(主要メディア解説)。
番外編
後期臨床期以外には、次のようなカタリストに株価は反応しています。
・2018年3月26日 : COPD維持療法向けRPL554(現:ensifentrine)の第2b相試験トップラインを発表
主要評価項目を達成、全用量で肺機能の統計学的かつ臨床的に有意な改善、さらに症状の有意な改善も示した。これが材料視されて株価が急騰しました。
・2020年7月17日 : オーバーサブスクライブ型第三者割当増資と新株引受で2億ドルを調達を発表
COPDを対象としたENHANCE第3相臨床プログラムを支援する資金を獲得。この資金調達には、新規投資家である RA Capital Management、Access Biotechnology、Perceptive Advisors、Acorn Bioventures、PBM Capital、Samsara BioCapital、Foresite Capital、Sphera、Fairmount、Soleus Capital と追加投資家が主導。
既存の投資家である OrbiMed、New Enterprise Associates (NEA)、Vivo Capital、Abingworth、Novo Holdings A/S、Polar Capital、Aisling Capital も参加しました。
→ このニュースで株価は4ドルから15ドルまで急騰しました。
– Phase 3の資金不安を解消
一気に約$2億を調達。使途は明確で、COPD向けensifentrineのP3(ENHANCE)資金に充当=「最後の大規模試験まで走り切れる」見通しが立った。
– オーバーサブスクライブ+一流バイオファンド勢揃い
RA Capital、Perceptive、NEA、OrbiMed、Novoなど“勝ち筋を知る”投資家が新規+継続で参加。この顔ぶれが技術・プログラムの質の裏付けと受け止められた。
– ディスカウントが小さく、条件も良い
ADS $4.50は直近終値から約4.7%の割引にとどまり、需給の強さを示した。さらに90日間の追加発行制限などで “すぐ希薄化を重ねない” 安心感も。
– 経営陣も自腹で参加
CEOほか役員・取締役が同条件で購入=インサイダーの信認が買い安心感につながる。
– FDAと足並み(EOP2後にP3へ)
EOP2の応答に基づきP3を加速と明言。「規制面で大きなハードルは見えている」というシグナルもポジティブ。
承認済み製品:あり
主力製品:Ohtuvayre®(ensifentrine, 吸入/噴霧懸濁液)— 成人COPD維持療法。FDA承認:2024-06-26。
補足:ensifentrine のライフサイクル(増悪抑制などの実臨床/P3b・P4相相当)を進行中。
対象:成人COPD(既存治療併用下の増悪抑制等)
投与:標準ジェットネブライザーで BID
解析:気管支拡張と症状改善、増悪に関する群解析を学会で継続発表
内容:実臨床データの蓄積、併用下でのポジショニング明確化
パイプライン | 対象 | 臨床フェーズ | 規制デザイン | 安全性(AESI) | 用法・用量 / 併用戦略 | 市場規模イメージ | ポイント(市場評価) |
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Ohtuvayre® / ensifentrine(PDE3/4吸入) | COPD維持療法(成人) | 承認済(米) | 承認後の実臨床/補助試験で増悪抑制等を検証 | 消化器系(悪心/下痢)、頭痛、咽喉刺激等(吸入薬一般の留意) | 標準ジェットネブライザーで BID。既存治療と併用 | 大:COPDは高有病率・高再燃 | “気管支拡張+抗炎症”を1分子で提供。 追加エビデンスでポジション強化を狙う。 |
Ensifentrine 実臨床/増悪抑制プログラム | COPD(既存治療併用下) | P3b / P4 | 24週以上・イベントドリブン。増悪率を主要評価 | 上記に同じ(安全性監視継続) | BID継続。前治療層別で効果検証 | 大:増悪抑制はリソース配分の焦点 | 結果次第でラベル/推奨度合いに影響。 |
- 商用立ち上げの加速:Q1 2025で売上と処方が急伸。継続トレンドの確認が重要。
- 差別化の核:PDE3/4デュアル阻害により気管支拡張+抗炎症を同時に提供。実臨床での増悪抑制が鍵。
- 戦略オプション:四半期ごとの拡販指標に加え、買収クローズ(報道ベースでは2025年Q4見込み)後は国際展開・適応拡大に弾み。
ENHANCE-2(Phase 3)トップライン
24週、無作為化・二重盲検・プラセボ対照(ネブライザー 3 mg BID)。主要(Week12の平均FEV1 AUC0–12h)達成、肺機能・症状改善に加え、増悪率/リスクの低下を確認。
ENHANCE-1(Phase 3)トップライン
ENHANCE-2と同等設計の24週P3で主要・重要副次を達成。48週コホートで長期安全性も評価。
NDA 提出(ensifentrine / COPD 維持療法)
用法・用量:ネブライザー 3 mg BID。ENHANCE-1/2 データに基づき申請。
NDA 受理 & PDUFA 設定
PDUFA 目標日を 2024/06/26 に設定(諮問委員会の開催予定なしで通知)。
Ohtuvayre® FDA 承認
成人COPD維持療法として米国で承認取得(吸入・標準ジェットネブライザー、3 mg BID)。
Phase 3b/4 相当の実臨床検証
増悪率・症状(PRO)・肺機能などの補助エビデンスを拡充。学会でのENHANCE追加解析も継続。
国際展開に伴う臨床・規制
EU/UK の薬事準備継続。中国では提携先によるレジストラショナルP3を実施・読出し見込み。
追加解析・学会発表
ENHANCE群解析や実臨床データの外部発表、拡販と償還アップデート。
M&Aクロージング(想定)
Merckによる買収が成立した場合、国際展開・追加適応の戦略更新へ。
実臨床/補助的試験の読出し
増悪抑制などの結果に応じてラベル議論・プロモーション強化を検討。
実臨床/増悪抑制データの外部発表、処方/償還の拡大アップデート、(想定)M&Aクローズ可否
実臨床/補助試験の読出し→ ラベル/ガイダンス議論、国際展開の前進(M&A成立時)
適応拡張や新規剤形・デバイス連携など LCM の拡張