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【SRPT】Sarepta Therapeutics のカタリストとロードマップ

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【SRPT】Sarepta Therapeutics のカタリストとロードマップ

Sarepta Therapeutics (サレプタ・セラピューティクス / SRPT) は緊急のミッションに取り組んでいます。希少疾患による命を奪い、未来を断つ疾患に対し、精密な遺伝子医療をエンジニアリングすることです。

Sarepta Therapeutics はデュシェンヌ型筋ジストロフィー(デュシェンヌ)においてリーダーシップポジションを占め、筋疾患、中枢神経系疾患、心臓疾患の分野で多様なプログラムポートフォリオを構築しています。

承認済み製品

ELEVIDYS、Exondys 51、Vyondys 53、Amondys 45

主力パイプライン:ELEVIDYS(遺伝子治療)、RNA系(Exondys 51 / Vyondys 53 / Amondys 45)、siRNA群(SRP-1003ほか)、DANYELZA(神経芽腫)

提携先:Roche(ELEVIDYS共同販売)

承認済み・販売中

臨床試験パイプライン
市販後 / 規制審査中
ELEVIDYS(delandistrogene moxeparvovec)

対象:DMD(歩行可・不可)

状況:2024/6 米FDA適応拡大承認済。2025/6以降、急性肝不全関連死亡例により出荷停止中。FDA評価・EU CHMP陰性見解を受け再審査手続きへ。

米国:出荷再開可否はFDA判断待ち
EU:CHMP陰性見解(再審査申請予定)

規制評価中

販売中
Exondys 51 / Vyondys 53 / Amondys 45

対象:DMD(エクソンスキッピング)

状況:米国で承認済み、販売継続中。

承認済み

中止
SRP-5051(PPMO)

対象:DMD(次世代スキッピング)

状況:2024/11に開発中止決定。

開発中止

Phase 1/2
siRNAプログラム(SRP-1003 他)

対象:複数遺伝性疾患(Arrowhead提携含む)

状況:戦略再編でsiRNAに重点化。SRP-1003初期データは2025年H2 readout見込み。

進行中

パイプライン早見表
パイプライン 対象 臨床フェーズ 規制デザイン 安全性(AESI) 用法・用量 / 併用戦略 市場規模イメージ ポイント(市場評価)
ELEVIDYS(delandistrogene moxeparvovec-rokl) デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD, 歩行可能患者) 市販中(米国伝統的承認) 市販後安全性監視(2025年7月の一時的出荷停止→歩行可能群で再開) 急性肝障害/トランスアミナーゼ上昇、免疫関連(ステロイド/免疫抑制管理) 単回静注。免疫抑制レジメン最適化を継続検討 大:希少だが高薬価・継続需要 非歩行群拡大は未了。安全性アップデートと供給再開の軌道が短期の評価軸
SRP-1001(siRNA・DUX4抑制) 顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD) Phase 1/2(進行中, Q3–Q4 2025 初期読出し想定) 用量漸増(SAD→複数回投与へ) 注射部位反応、肝酵素、腎/補体関連事象をモニター 皮下投与。筋力・機能+DUX4関連遺伝子発現をPD指標に最適化 中:希少疾患だが未充足大 DUX4ノックダウンの一貫性が示されればRNAiフランチャイズの“先陣”
SRP-1003(siRNA・DMPK抑制) 筋強直性ジストロフィー1型(DM1) Phase 1/2(進行中) 用量漸増→拡大。初期安全性クリアでマイルストン進捗 肝酵素、注射部位、有害免疫反応リスク 皮下投与。分子/筋機能エンドポイントの相関探索 中:患者数規模はFSHDより広い 初期データのシグナル次第で“次の柱”候補、追加マイルストンの触媒性も
SRP-1004(siRNA・ATXN2抑制) 脊髄小脳変性症2型(SCA2) Phase 1(SAD ランダム化, Q3–Q4 進行) 健常/患者での用量漸増→多回投与へ拡張予定 神経学的イベント、肝/腎、注射部位 皮下投与。神経生理/運動機能+バイオマーカーでPD確認 ニッチ:高未充足 安全性プロファイルの確立が最優先。RNAiの中枢応用の入口
SRP-1005(siRNA・HTT抑制) ハンチントン病(HD) 前臨床 → CTA提出準備(Q4 2025)→ 初回投与 2026年上期 目標 初期は安全性中心のFirst-in-Human設計 神経学的AESI、肝/腎、クラス関連免疫反応 皮下投与想定。CSF/血中バイオマーカー(mHTT 等)でPD評価 中:遺伝性で早期介入価値高い 開発入りの確度・スピードがRNAi拡張の“広がり”を左右
SRP-9003 ほか(LGMD向け遺伝子治療) 四肢帯型筋ジストロフィー(LGMD) 一部プログラム:臨床保留/再設計中 2025年夏の安全性事象を受け試験保留・ポートフォリオ再編 急性肝障害、免疫反応、補体・血栓性微小血管障害 等 単回静注+免疫抑制レジメンの最適化が鍵 中:適応分割・希少群の集合 続行可否と設計変更の明確化が評価の前提条件
(参考)エクソンスキッピング群
EXONDYS 51 / VYONDYS 53 / AMONDYS 45
DMD(特定エクソン変異) 市販中(米国) 市販後安全性・有効性データ更新 注射部位、腎/蛋白尿 等 反復静注。標準治療下の位置づけを維持 中:変異別ニッチの積み上げ 売上の分散源。ELEVIDYS動向のヘッジ的役割

ポイント
  • 二層のドライバー:短期はELEVIDYSの供給・安全性管理、中期はsiRNAフランチャイズ(SRP-1001/1003/1004/1005)の連続読出し。
  • リスク管理:遺伝子治療は肝事象が主リスク。免疫抑制レジメンと患者選択の厳格化が株価感応度大。
  • 資本配分:LGMD群の再編により、ヒトデータが近いRNAi群へ開発資源を再集中

上市後の死亡事例とFDA対応の流れ

2025年6月時点:FDAは複数の非歩行(non-ambulatory)患者における急性肝不全による死亡報告を受け、販売および臨床試験に関する安全性調査を開始。

第1の死亡例は非歩行の年少者、第2例も同様であり、立て続けに報告されました。

2025年7月18日:FDAは販売と臨床試験の中止(臨床ホールド)を要求し、AAVrh74プラットフォーム指定も剥奪。

・調査と出荷再開

7月25日:FDAは8歳の患者の死亡(ブラジルにて)を調査中と発表。Sarepta側は治療との因果関係は否定しています。

7月28日:FDAは「歩行可能な患者(ambulatory)」に対しては出荷再開を承認し、それ以外については引き続き保留とする判断を表明しました。

8月13日:Sareptaは追って、歩行可能患者における投与後の死亡例はなく、benefit/riskプロファイルは肯定的との安全性データを発表。

・検証は進行中

非歩行患者対象では、肝毒性リスクが顕在化し、FDAは販売を差し止め、追加安全対策を要求しています。歩行可能患者については死亡例が発生しておらず、FDAは出荷再開を承認する方向に動いています。

ただし、引き続き FDAによる安全性モニタリングと規制判断が続行中です。ラベルにブラックボックス警告の追加も行われました。

siRNAフランチャイズ(Arrowhead 提携群)について

長期の上振れドライバー=siRNAフランチャイズ(Arrowhead提携群)。「SRP-1003(DM1)」H2’25 予備データ、「SRP-1001(FSHD)」H2’25 データが最初の関門。

続いて「SRP-1004(SCA2)」の Cohort 2進行、「SRP-1005(HD)」は2025年内CTA提出→2026年H1試験開始の計画。

・構造改革の実行
7/16 のリストラクチャリングで年4億ドル規模の固定費圧縮(2026年から)、資源をsiRNA中核へ再配分。負債(2027年CB)返済余力の確保も狙い。

・siRNAの初期トラクション
「SRP-1003(DM1)」で安全レビュー・登録進捗→$1億のマイル到達、Sarepta は Arrowhead 株の売却で$1.74億現金化して支払い原資を確保。H2’25に暫定データ予定。

Sarepta と Arrowhead の提携

Sarepta は、米国のRNA干渉(RNAi/siRNA)に特化したバイオ企業 Arrowhead Pharmaceuticals(ARWR)と2024年11月にグローバルライセンス&共同研究を締結。

DM1(SRP-1003=旧ARO-DM1)、FSHD(SRP-1001=旧ARO-DUX4)など複数の臨床・前臨床プログラムを一括供与。2025年8月にはDM1の進捗で Arrowhead への$100Mマイルストンが発生しています。

Arrowhead は、自社のTRiM™(Targeted RNAi Molecule)という送達プラットフォームで、肝臓だけでなく筋肉・中枢・肺など “標的組織別” にsiRNAを届ける技術を武器にしています。

ALNY とのアナロジーは成立する?

・似ている点
明確な遺伝子サイレンシング機序(RNAi)、オーファン複数領域で順次PoC→レジストリ拡大という“多層の成長階段”。

・違う点
パートナー依存度:SareptaのsiRNAはArrowhead TRiMの利用比重が高い(対してALNYは自社ケミストリ/デリバリーの垂直統合)。

・コマーシャル基盤
ALNYはTTRフランチャイズで十分な売上/CFを確立した上で新領域に展開したのに対し、SareptaはELEVIDYSの安全性対応と並走。資本効率の要求水準が高い。

・要するに
「siRNAが揃って良いデータを示す」+「ELEVIDYSの運用が落ち着く」=“ALNY型”の複線グロースに近づく。逆にどちらかがつまずくとディスカウントは残る、という構図です。

2025年後半の「SRP-1001/1003」データが株価の方向を決める最初の検査点。「ELEVIDYS」の “完全正常化” はボラ継続だが、siRNAに良シグナルが複数出れば “ALNY の初期拡張期” に近い再評価レンジが見えてきます。

2025–26の株価ドライバー(優先度順)

・H2’25:SRP-1003(DM1)予備データ—標的DMPKノックダウンの深さ/持続、機能指標の手応え。
・H2’25:SRP-1001(FSHD)データ—DUX4低下と安全性の両立。
・25–26:ELEVIDYSの運用正常化の道筋(ラベル/REMS/モニタリング更新とRWE)。7/28の部分的再開は前進だが、完全正常化は
・26H1:SRP-1005(HD)初期臨床入り—TfR1利用の中枢送達siRNAという新機軸の安全性/PDシグナル。

競合

過去:次世代 exon skipping や gene therapy の台頭でシェア喪失懸念。

現状:競合 (WVE、SLDB、CAPR など) は臨床初期〜中期段階が多く、商業的にはSRPTが数年のリード。ただしこの点は完全クリアではなく「中期的に残る競合リスク」。

年表(ELEVIDYS / SRP-9001)
日付 フェーズ / イベント 内容 所要期間(該当)
2017/12/15 Ph1/2a 登載(Study 101) 初期安全性・発現評価を計画。
2018/01/06 Ph1/2a 初回投与 単回投与で開始。
2020/06/15 Ph1/2a 査読 JAMA Neurology に1年成績掲載。 約29か月(初回投与→査読)
2018/12 Ph2 開始(Study 102) 無作為化/二重盲検/プラセボ対照。
2021/01/07 Ph2 Part 1 TL 主要未達も好ましい傾向。 約25か月(開始→TL)
2022/01/10–11 Ph2 Part 2 TL 発現・機能のシグナルを確認。 約12か月(P1→P2 TL)
2020/11 Ph1b/2 登載(ENDEAVOR/103) 商用品質製剤のブリッジ試験。
2021/09/23 ENDEAVOR 中間 強い発現・安全性をWMSで報告。
2023/08/03 ENDEAVOR 査読 Annals of Neurology に1年成績。
2021/10/04 Ph3 開始(EMBARK/301) 国際二重盲検・二部構成。
初回登録 2021/11/08、最終登録 2022/09/14。
約11か月(初回登録→最終登録)
2023/10/30 Ph3 トップライン 主要未達/副次は好ましい傾向。 約24か月(開始→TL)
2023/06/22 FDA 加速承認 4–5歳歩行可能で承認(確認試験:EMBARK)。
2024/06/20 適応拡大・承認形態更新 4歳以上の歩行/非歩行へ拡大。歩行可能は通常承認に移行。
2024/10 EMBARK 1年査読 Nature Medicine 掲載。

「ELEVIDYS」の臨床フェーズ

2017/12/15

Study 101 登載(Ph1/2a;単施設・非盲検)

NCT03375164 を ClinicalTrials.gov に登録。ELEVIDYS(SRP-9001)の初期安全性と発現評価を計画。

2018/01/06

初回投与(Study 101)

4〜7歳の歩行可能DMDで単回静注投与を開始。

2020/06/15

JAMA Neurology 掲載(Study 101 1年成績)

強いmicro-dystrophin発現と機能改善傾向を報告(安全性許容)。

2018/12

Study 102 開始(Ph2;無作為化/二重盲検/プラセボ対照)

臨床プロセス製剤で Part 1 / Part 2 の二部構成デザイン。

2021/01/07

Study 102 Part 1 トップライン

主要(48週NSAA)は達せずも、機能指標で好ましい傾向と安全性一貫性を報告。

2022/01/10–11

Study 102 Part 2 トップライン

12週発現と48週機能で有効性シグナルを確認(安全性は概ね良好)。

2020/11

Study 103 登載(ENDEAVOR;Ph1b/2)

商用品質製剤で12週生検(発現)を主要に評価。

2021/09/23

ENDEAVOR 中間発表

最初の11例で強い発現と良好な安全性を報告(WMS)。

2023/08/03

ENDEAVOR 1年成績(Annals of Neurology)

商用品質製剤での発現・機能の持続を査読公表。

2021/10/04

EMBARK 開始(Ph3;SRP-9001+標準治療の国際二重盲検)

Rocheと共同でグローバル多施設化。初回登録:2021/11/08、最終登録:2022/09/14(公表情報)。

2023/10/30

EMBARK トップライン

主要(52週NSAA)は有意差に至らず。複数の副次/探索で好ましい傾向。

2023/06/22

FDA 加速承認(ELEVIDYS)

対象:4〜5歳の歩行可能DMD。EMBARK を確認試験に指定。

2024/06/20

適応拡大・承認形態更新

4歳以上の歩行/非歩行を含む広範適応へ拡大。歩行可能は通常承認、非歩行は加速承認。

2024/10

EMBARK Part 1 1年成績(Nature Medicine)

試験デザイン/結果の詳細を査読で公表。

開発ロードマップ
2025年 Q3–Q4

ELEVIDYS:米FDA安全性審査結論

出荷再開の可否/条件(REMS、適応制限など)。EU CHMP再審査開始。

2025年 Q3–Q4

siRNA(SRP-1003/DM1)初期データ

標的DMPK ノックダウンの深さ・持続と、筋機能指標の手応えを評価。非GT(遺伝子治療以外)領域の基盤構築に直結。

2025年 Q3–Q4

siRNA(SRP-1001/FSHD)初期データ

DUX4 低下と安全性の両立を確認できるかが焦点。用量反応と多回投与での一貫性に注目。

2025年〜2026年

ELEVIDYS 運用正常化の道筋

ラベル/REMS/モニタリング更新とRWEの積み上げ。2025/7/28 の部分的再開は前進だが、完全正常化は段階的な当局・RWEアップデート次第。

2026年 上期

siRNA(SRP-1005/HD)初回投与

TfR1 利用の中枢送達 siRNAという新機軸。初期安全性と mHTT などの PD シグナルの検出可否を確認。

注目すべきカタリスト
短期(2025年 Q3–Q4)
ELEVIDYS安全性評価結論(FDA・CHMP)、SRP-1003初期データ。

中期(2026年)
ELEVIDYS再上市シナリオ、siRNA次相移行、コスト削減効果の定量化。

長期(〜2027年)
siRNA群の拡張、非GT基盤の柱化。DANYELZAの適応拡大/海外展開。