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【DNLI】Denali Therapeutics カタリストとロードマップ

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承認済み製品 / 現状

承認済み製品:なし(開発中)

主力候補:Tividenofusp alfa(DNL310 / ETV:IDS)— MPS II(ハンター症候群)。BLA 受理・優先審査中PDUFA:2026年Q1(1/5)

補足:DNL126(ETV:SGSH/MPS IIIA、Ph1/2 登録完了間近P3 計画中)、BIIB122/DNL151(LRRK2阻害/パーキンソン、LUMA Ph2b・BEACON Ph2a 進行中)、DNL593/TAK-594(PTV:PGRN/FTD-GRN、Ph1/2)。

主要臨床成績
2026年Q1
DNL310(tividenofusp)PDUFA(加速承認可否)

2026年
BIIB122(LUMA Ph2b)トップライン読出し(見込み)

2025年Q3–Q4
TV系 1–2件で IND/同等申請 予定

2025年Q2時点
現金等 約 $977M(商用化準備・製造体制整備進行)

臨床試験パイプライン
BLA 受理・優先審査中
DNL310(ETV:IDS/MPS II)

対象:MPS II(ハンター症候群)— 中枢症状を含む患者

作用:ETV(Enzyme Transport Vehicle)により BBB 通過する IDS 置換

進捗:Ph1/2 データを基に BLA 提出・受理。COMPASS Ph2/3 継続
安全性/PD:全身・中枢のバイオマーカー改善を伴う概ね良好な忍容性(会社開示の範囲)
次読出し:2026年Q1 PDUFA(1/5)

Phase 1/2(登録完了間近)→ Phase 3 計画中
DNL126(ETV:SGSH/MPS IIIA)

対象:MPS IIIA(サンフィリッポ症候群A)

作用:ETV による BBB 通過型 SGSH 補充

規制:FDA と加速承認(AA)パス整合。CSF 中ヘパラン硫酸をサロゲートとして受容可
体制:Ph1/2 拡大データ→P3 開始の正式化を準備
次読出し:Ph1/2 拡大更新および P3 デザイン詳細(時期未開示)

Phase 2b(LUMA)/ Phase 2a(BEACON)
BIIB122 / DNL151(LRRK2阻害/パーキンソン)

対象:散発性PD(LUMA)/遺伝性PD(BEACON)

作用:LRRK2 キナーゼ阻害による疾患進行抑制の検証

進捗:LUMA は 2025年Q2 に組入完了、2026年 トップライン見込み
並行試験:BEACON Ph2a 進行中(生物学的整合を補強)
次読出し:2026年 LUMA トップライン

パイプライン早見表
パイプライン 対象 臨床フェーズ 規制デザイン 安全性(AESI) 用法・用量 / 併用戦略 市場規模イメージ ポイント(市場評価)
DNL310(tividenofusp, ETV:IDS) MPS II(ハンター症候群) BLA 受理・優先審査(PDUFA:2026年Q1) 加速承認(AA)ルート。COMPASS Ph2/3 が確認試験 ERT/輸注関連、免疫反応のモニタリング(会社開示の範囲で概ね良好) 静注・週1想定。商用化準備(供給/アクセス)進行 希少だが高未充足。中枢症状カバーで価値高い 初の BBB 通過型 ERTとして差別化。承認可否が企業価値の最大トリガー
DNL126(ETV:SGSH) MPS IIIA Phase 1/2(登録完了間近)→ Phase 3 計画 AA 整合済(サロゲート:CSF ヘパラン硫酸) 輸注・免疫関連事象を中心に継続監視 静注。Ph1/2 拡大→P3 の三位一体で進行 超希少疾患だがサロゲート整合で開発実現性高い レギュラトリーの見通し前進。P3 開始の正式化がバリューアップ要因
BIIB122 / DNL151(LRRK2阻害) パーキンソン病(散発/遺伝性) Phase 2b(LUMA)/ Phase 2a(BEACON) 疾患修飾の確証へ P2b 設計(共同:Biogen) LRRK2 クラス特有の安全性を包括監視 経口。長期投与で進行抑制の一貫性を評価 大:PD 全体の高未充足 2026年の LUMA トップラインがクラス全体の評価を左右
DNL593 / TAK-594(PTV:PGRN) FTD-GRN Phase 1/2 武田との共同開発 免疫関連・神経系 AESI の継続評価 静注。用量反応とバイオマーカーで証拠積み上げ 中〜大:希少神経変性 クラス初期の安全・PD 一貫性が鍵
DNL952(ETV:GAA)/ DNL111(ETV:GCase)/ DNL622(ETV:IDUA) ポンペ/PD/ゴーシェ/MPS I IND 前後(2025年Q3–Q4 に 1–2件申請予定) TV 系の継続臨床入り方針 酵素補充に伴う既知 AESI を想定 静注主体。中枢到達・全身制御の両立を狙う 中:適応により差 毎年 1–2 件の臨床入りでプラットフォーム価値を段階的に実証
DNL921(ATV:Aβ)/ DNL628(OTV:MAPT)/ DNL422(OTV:SNCA) アルツハイマー/パーキンソン 前臨床〜IND 前 ATV:Aβ の前臨床成果が Science に掲載(2025年8月) 抗体/オリゴ由来のクラス AESI を想定 ATV/OTV による BBB 通過設計 大:神経変性メジャー領域 ARIA 低減仮説など差別化の理論補強が進展

ポイント
  • プラットフォームの三本柱:ETV(酵素)/ ATV(抗体)/ OTV(核酸)で毎年1–2件の臨床入りを継続し、BBB通過技術の企業価値を段階的に実証。
  • 規制の前進:DNL310 はPDUFA 2026年Q1、DNL126 はAA ルート整合で P3 設計へ。
  • 大型適応のポテンシャル:BIIB122(LRRK2)で疾患修飾のシグナルを 2026年に検証。
  • 財務余力:2025年Q2 時点のキャッシュ等 約 $977M。商用化準備・製造体制(自社大分子施設)を拡充。

脳内送達プラットフォーム企業

DNLI は “TV(Transport Vehicle)” を核にした多系列(ETV/ATV/OTV/PTV)の “脳内送達プラットフォーム企業” と言えます。

単発品ではなく、同じBBB通過技術を各モダリティ(酵素・抗体・核酸・タンパク)へ水平展開し、毎年1–2件を臨床入りさせる開発ケイデンスまで会社方針として明示しています。

・共通の中核技術=TV(TfR経由のBBB送達)
Enzyme向けのETV、抗体のATV、オリゴのOTV、タンパクのPTVなどに同じ送達論理を組み込む設計。企業の公式サイエンスページや過去のコーポレート資料でも“TVプラットフォーム”として定義。

・臨床~規制の“縦”での実証が進行
代表例のDNL310(ETV:IDS)はBLA受理・優先審査(PDUFA:2026/1/5)。ETV系列の規制ハードルを越えれば、同系列の横展開にレバレッジが効きます。さらにDNL126(ETV:SGSH)はCSF中ヘパラン硫酸をサロゲートとする加速承認パスでFDAと整合を得ており、ETVの “二品目目” として規制前例の積み上げを狙う構図。

・外部バリデーション(共同開発)
Biogen との LRRK2阻害(BIIB122/DNL151)でP2b(LUMA)を進行、TakedaはPTV:PGRN(DNL593)の共同開発権を行使。他社が自社技術にベットしている点はプラットフォーム性の裏づけ。

・学術的裏打ち(ATVの一般化可能性)
ATV:Aβの前臨床論文(Science, 2025)では、広範な脳内分布・ARIA様所見の低減など、“運び方を変えると抗体の質が変わる”**ことを示唆。ATV概念の汎用性を学術面から補強。

・開発ケイデンス(量産体制)
2025年以降「毎年1–2件を臨床入り」の方針を公式に掲げ、Q2’25のIRでも複数TV案件の継続投入を示す。単発ではなく、連続投入できる設計・体制が“プラットフォーム会社”の条件を満たす部分。

プラットフォーム企業としての “勝ち筋”

・規制の前例化→横展開の加速
DNL310/126でETV×希少疾患の規制パスを固める。次にATV/OTVへ “運び方の前例” を移植。

・共同開発の輪
Biogen(PD)や Takeda(FTD-GRN)など領域大手の巻き込みで適応幅と商業化の地力を補完。

・学術×産業の往復
ATV論文のように学術確証を積み増し、投資家・規制当局・パートナーの納得感を強化。

プラットフォームだからこそのリスク

・“送達” の共通リスク
TfR依存のターゲティング強度・安全域が系列横断の相関リスクになり得る。

・全勝は難しい
過去、他社共同の一部プログラム停止などもあり、全案件が同じ歩調で成功するわけではない(例:サノフィ共同の中止ニュース)。ポートフォリオ運用が前提。

DNLI は「BBB通過=TV」を核に、ETV/ATV/OTV/PTVへ横展開し、臨床・規制・共同開発・学術の各面で “繰り返し使える設計” を実装しています。短中期の現実的な里程標は「DNL310」のPDUFA(2026/1/5)と「DNL126」のP3正式化、および毎年1–2件の新規臨床入り達成です。これらが継続的に達成されるほど “プラットフォームとしての価値” が企業価値に織り込まれるはずです。

DNLI のアルツハイマー(ATV:Aβ)薬

DNLI のアルツハイマー(ATV:Aβ)は“脳内への届け方(BBB通過×分布)を変えて、ARIA(脳浮腫・微小出血)を減らせそうだ”という強い前臨床シグナルを示しました。ただしまだマウス段階で、ヒトで同じ安全性・有効性が再現できるかは未検証です。

・何が新しいの?

– ATV(Antibody Transport Vehicle)×TfR
抗Aβ抗体にトランスフェリン受容体(TfR)結合ドメインを付けて受容体仲介輸送(RMT)でBBBを通過させ、脳実質全体に広く分布させる設計。従来の抗体より血管壁(脳血管周囲)偏重が少ない=ARIAの主因(血管アミロイドへ過度に当たること)を回避する狙いです。

– Fc改変(cisLALA)
エフェクター活性を弱める改変で炎症・補体活性化を抑制し、ARIA様事象の低減を後押し。

・前臨床で何が起きた?

– プラークはしっかり減るのに、ARIA様所見は少ない

– マウスで広範な実質内分布→プラーク除去を実現しつつ、標準の抗Aβ抗体に比べてARIALike病変や血管炎症が有意に低いと報告。査読誌 Science(2025/8/7)に掲載、FierceBiotech や GEN でも解説が出ています。

ファンドのポジション

上位保有は BlackRock、Baillie Gifford、Vanguard、Wellington、Capital Research 等、過去には Biogen が11%超を保有(提携起点の戦略持分)など、長期系/戦略系が厚い銘柄です。

バイオファンドの参加が少ないように感じられるのは、時価総額が大きく、既に共同開発(Biogen/Takeda)や規制ルートが固まった DNLI では、介入でαを取りにくい=“自分たちの手で変えられる余地” が限定。

・バリュエーション&イベントの性質

2024〜25年は TTR の商業拡大と LRRK2/ETV の規制前進で “プラットフォーム銘柄” としてロングオンリー資金が入りやすい地合い。PDUFA(DNL310は2026/1/5)や LUMA(2026年)といった中期イベント駆動で、短期の構造改革型αより中期のデータ/売上トレンドβが効く局面。

ファンドのポジションからも、DNLI は “プラットフォーム×長期KPI” 型と言える。

開発ロードマップ
完了:2025年Q1

Tividenofusp alfa(DNL310)BLA 提出完了/商業化準備

ハンター症候群向けのBLA提出を完了。2025年末〜2026年初の商業ローンチに向けて準備を進行。ユタ州ソルトレイクシティに臨床用バイオ製造施設を開設。

完了:2025年Q2

BIIB122(LUMA)組入完了

パーキンソン病の疾患修飾検証に向け、2026年のトップライン読出し準備へ。

2025年Q3–Q4

TV系 1–2件の IND/同等申請

ETV/ATV/OTV のいずれかで新規プログラムを臨床段階へ導入。

2026年Q1

DNL310(tividenofusp)PDUFA

加速承認の可否。承認時は中枢症状を含む MPS II で初の BBB 通過型 ERT が商用化。

2026年

BIIB122(LUMA Ph2b)トップライン

疾患進行抑制の有無で LRRK2 クラスの位置づけを確定。

注目すべきカタリスト
短期(〜2025年Q4)
TV プログラムの IND/同等申請(1–2件)、DNL126 Ph1/2 登録完了・拡大データの更新

中期(2026年Q1)
DNL310(tividenofusp)PDUFA(加速承認可否)

長期(2026年〜)
BIIB122(LUMA)トップライン、DNL126 の P3 開始正式化・提出準備、ATV/OTV の臨床入り拡大