
2026年上半期、期待のオンコロジー企業の IPO
2026年上半期の米国バイオIPOの中でも、オンコロジー領域の「期待度が高い大型IPO」の一つと見てよいです。
ただし、期待の中心は「すでに臨床効果が証明された後期案件」ではなく、放射性医薬品のプラットフォーム、複数の大手製薬会社による技術評価、強力なバイオファンド、2本の臨床パイプラインです。
大手製薬会社の参加は、かなり意味がある
Aktisには以下の製薬系戦略投資家が参加しています。
・Eli Lilly
・Bristol Myers Squibb
・MRL Ventures Fund/Merck
・過去ラウンドでは Novartis 系資金も参加
特に重要なのは、Lilly は単なる少額出資者ではなく、実際の創薬提携先でもあることです。Aktis は2024年に Lilly と放射性医薬品の創薬提携を締結し、
・契約一時金:6,000万ドル
・同時株式投資:1,000万ドル
・開発・承認・上市マイルストーン:最大5億2,500万ドル
・売上マイルストーン:最大6億3,000万ドル
・ロイヤルティ:最大で売上の低二桁台
・合計潜在価値:約11.55億ドル+ロイヤルティ
という条件を獲得しています。Aktis が初期のヒト画像試験まで担当し、その後の臨床開発・承認・商業化を Lilly が担う構造です。
さらに Lilly はIPO時にも最大1億ドル分を購入する意向を示しました。これは「取引関係があるから形式的に参加した」という規模ではなく、IPOのアンカー投資家としてかなり大きな役割を果たしています。
ただし、区別は必要です。
・Lilly:出資+実際の創薬・開発提携
・BMS、Merck/MRL Ventures、Novartis:主に戦略的株式投資
・BMSやMerckとの個別パイプライン提携は、現在公表されていない
したがって、最も強い技術的な外部検証は Lilly との提携です。
ファンドの顔ぶれも非常に強い
2024年の1億7,500万ドルの Series B は、
・RA Capital Management:主導
・RTW Investments:共同主導
・Janus Henderson Investors:共同主導
・T. Rowe Price
・Avidity Partners
・MPM BioImpact
・Vida Ventures
・EcoR1 Capital
・Blue Owl Capital
というシンジケートでした。さらに RA Capital の Andrew Levin が取締役に入り、RTW と Janus Henderson もボードオブザーバーとして参加しました。単なる資金提供ではなく、臨床開発・資本政策・事業開発に踏み込んだ支援体制です。
放射性医薬品の弱点を改善する設計になっている
Aktis の核心は、独自の miniprotein radioconjugate です。一般的な大型抗体型の放射性医薬品では、
・腫瘍への浸透が遅い
・血中や正常組織に長く残る
・骨髄、腎臓、肝臓、唾液腺などへの被曝
・安全性によって投与量が制限される
といった問題があります。Aktis の miniprotein は、小型の結合分子を利用することで、
1. 腫瘍へ速く浸透する
2. 標的に結合して細胞内に取り込まれる
3. 腫瘍内に放射性同位元素を保持する
4. 未結合薬は正常組織から速く排出する
という設計になっています。治療用には強力なα線を放出する Actinium-225 を使用します。つまり Aktis の投資仮説は、放射性医薬品を前立腺がんや神経内分泌腫瘍だけでなく、より広い固形がんへ拡張できるのではないかというものです。
ここが、単一アセットのオンコロジー企業ではなく、プラットフォーム型オンコロジーIPOとして評価されている理由です。
2026年1月13日:IPOクローズ($18.00/株)。取引開始は2026年1月9日(NASDAQ: AKTS)。
2026年1月8日:IPO価格決定($18.00/株、upsized)。
2025年12月:[225Ac]Ac-AKY-1189 Phase 1b(用量漸増)で最初の用量レベルを完了、次用量レベルの登録へ。
2025年4月:[225Ac]Ac-AKY-1189(Nectin-4)IND クリア、米国でPhase 1bを開始。
2024年5月:Eli Lillyと探索提携(自社パイプライン外の標的)。Upfront $60M+株式投資、マイルストン最大$1.2B+ロイヤルティ。
承認済み製品:なし(開発中)
主力候補:[225Ac]Ac-AKY-1189(Nectin-4標的 miniprotein radioconjugate:画像同位体で結合確認→α線治療)— 局所進行/転移性 尿路上皮がん(UC)ほか Nectin-4陽性固形がん。
補足:[225Ac]Ac-AKY-2519(B7-H3標的、IND準備〜2026年後半P1b開始計画)、探索パイプライン(複数標的)+Lilly提携(探索標的)を並走。
対象:局所進行/転移性 UC ほか Nectin-4陽性固形がん
作用:画像同位体で腫瘍結合を確認→α線(225Ac)治療(高浸透→内部化/保持を狙う)
対象:mCRPC、肺がん(NSCLC/SCLC)ほか B7-H3陽性固形がん
作用:B7-H3(CD276)標的。画像/ドシメトリ→α線(225Ac)治療の流れ
対象:自社パイプライン外を含む複数のがん標的
作用:miniprotein radioconjugate 基盤で、画像同位体による結合確認→治療同位体へ
| パイプライン | 対象 | 臨床フェーズ | 規制デザイン | 安全性(AESI) | 用法・用量 / 併用戦略 | 市場規模イメージ | ポイント(市場評価) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| [225Ac]Ac-AKY-1189(Nectin-4) | UC ほか Nectin-4陽性固形がん | Phase 1b | 画像で結合確認 → 用量漸増 → 拡大(UC+他腫瘍) | 放射性医薬クラス留意:骨髄抑制、腎、肝、消化器、倦怠感等を重点監視(同位体/線量依存) | 最大6サイクル想定。将来はUC標準治療(例:IO/ADC等)とのシーケンス/併用の探索余地 | 大:UC+多腫瘍横断(Nectin-4発現腫瘍) | 画像確認→治療の一体設計が差別化軸。 直近の分岐点:2027年Q1(Part 1) |
| [225Ac]Ac-AKY-2519(B7-H3) | mCRPC、NSCLC/SCLC ほか B7-H3陽性固形がん | IND準備(P1b計画) | 画像/ドシメトリ → IND(2026年Q1–Q2)→ P1b(2026年Q3–Q4、BOIN用量漸増→拡大) | 放射性医薬クラス留意+標的発現部位のオフターゲット(臓器集積)の監視が重要 | [64Cu]Cu(画像/ドシメトリ)+[225Ac]Ac(治療)を想定。拡大はmCRPC/肺がん中心 | 大:mCRPC/肺がんなど高患者数 | 2026年はイベント集中:Q2画像/ドシメトリ→Q1–Q2IND→Q3–Q4P1b開始 |
| Discovery(自社)+Lilly探索提携 | 複数標的(未開示含む) | 探索 | 提携標的はマイルストン/ロイヤルティ型で前進 | 標的×同位体の組合せで安全域を最適化(腎/骨髄がボトルネックになりやすい) | プラットフォームは同位体アグノスティック(画像→治療の一体運用を前提) | 中〜大:標的次第 | 非希薄資金と標的拡張が魅力。自社2本の臨床進捗がベースバリュー |
- 2本柱+探索拡張:臨床はAKY-1189(進行中)とAKY-2519(2026年にIND〜開始計画)。探索はLilly提携で標的拡張。
- 2026年はAKY-2519が主戦場:Q2画像/ドシメトリ→Q1–Q2IND→Q3–Q4P1b開始、イベントが連続。
- 供給(製造)が勝負所:社内cGMP施設を2026年Q3–Q4に稼働予定。放射性医薬のボトルネック(供給/物流/コスト)を緩和する狙い。
- 資金面:IPOで大きく資本を確保。加えてLilly提携(Upfront+マイルストン)で非希薄資金の選択肢。
主要ファンドのポジションからの考察を加えて
- MPM BioImpactのインキュベーション企業であり、上場で資金制約を大きく緩和。
- “データ前”の資本確保(IPO)により、AKY-2519の2026年イベント連鎖(画像→IND→P1b)を遅滞なく回せる体制が整った点が重要。
- Lilly提携は探索標的のアップサイドを追加しつつ、自社の2本(1189/2519)の権利は維持する構造。
AKY-1189:INDクリア(Nectin-4)
米国でPhase 1bを開始。
AKY-1189:用量漸増(最初のDL完了)
安全性レビューを経て次用量レベルへ。
AKY-2519:画像/ドシメトリ評価 結果
[68Ga]Ga / [177Lu]Lu を用いた取り込み・分布評価の結果を報告(mid-2026)。
AKY-2519:IND提出
B7-H3プログラムでFDAにINDを提出(会社計画)。
AKY-2519:Phase 1b 開始
INDクリア後に多施設P1bを開始(mCRPC、NSCLC、SCLC)。
製造(供給体制):社内cGMP放射性医薬施設の稼働
社内施設を2026年後半に稼働予定(供給の柔軟性・コスト/物流改善の狙い)。
AKY-1189:Phase 1b Part 1(用量漸増) 予備的結果
安全性レンジ+初期有効性/取り込み所見が注目点。
AKY-2519:Q2画像/ドシメトリ→Q1–Q2IND→Q3–Q4P1b開始/社内cGMP施設稼働
AKY-1189:2027年Q1 Part 1 予備的結果→pivotal Phase 2(迅速承認を見据えた当局整合)の可否判断
