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Kelonia の in vivo BCMA CAR-T データで ACLX が急落

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Kelonia の in vivo BCMA CAR-T データで ACLX が急落

2025年11月24日、Kelonia Therapeutics が米国血液学会(ASH)2025年次総会で最新口頭発表した in vivo BCMA CAR-T データを受けて、同じ領域の Arcellx (ACLX) の株価が急落しました。

この背景には、「将来、こういう in vivo CAR-T が主流になったら、ACLX みたいな従来型 BCMA CAR-T の旨味が削られるんじゃ…?」という未来の競合不安に、一気に市場がビビったからです。

Kelonia の in vivo BCMA CAR-T データ

Kelonia の「KLN-1010」は BCMA を標的とする in vivo CAR-T です。点滴で薬を入れるだけで、体の中で勝手に BCMA CAR-T が作られるタイプ。

ASH の late-breaking で出てきた初期データは、再発・難治 MM の最初の3例全員が1か月で MRD ネガティブ、しかもリンパ球除去(LDC)なし、アフェレーシスなし、ex vivo 製造なしと、従来 CAR-T の一番 “重い” 工程を全部スキップしています。

さらに J&J がパートナーであり、つい最近 J&J が Kelonia と in vivo CAR-T で提携しており、「メガファーマも本気で in vivo カードを買いに来た」と受け止められています。

これらがセットで出て、「BCMA 領域で、Kelonia + J&J(& 既存の in vivo CAR-T 各社) vs 従来型 BCMA CAR-T(ACLX 含む)」という構図を意識させた結果、市場で ACLX 13%急落、という流れになりました。

なぜ ACLX が真っ先に売られたのか?

Arcellx (ACLX) はご存知の通り、BCMA 向けの “従来型” ex vivo CAR-T(CART-ddBCMA / anito-cel) がメインです。そこに Gilead/Kite との大型提携が乗っている、というストーリーです。

Kelonia の in vivo BCMA は、まさに 同じ BCMA マルチプル・マイローマ市場を将来取りにくる “次世代技術” とマーケットに映ります。

投資家の頭の中では、今次のようなロジックが起きています:

in vivo CAR-T が「同等以上の有効性+圧倒的な簡便さ・コスト安」まで行ったら?アフェレーシス・LDC・製造工場・入院管理 etc. が要らない世界になると、現在開発中の多くの ex vivo CAR-T が「古い技術」になるリスクが出てくる。

ACLX はそのど真ん中(BCMA)にいる。BMS/J&J/Kite などの既存 BCMA CAR-T に加え、Kelonia みたいな in vivo 組まで来ると、「5年後・10年後の BCMA マーケットで、ACLX の取り分がどれだけ残るの?」という疑念。

しかも今の ACLX はまだ商用前で、“これから” バリュエーションを取りに行く段階です。将来キャッシュフローに対するディスカウントが大きいので、「将来キャッシュフローの不確実性がちょっと増えただけで株価がドカッと動きやすい」タイプ。

その結果、「Kelonia in vivo BCMA + J&J」、BCMA 領域に新たな強敵出現、まだ売上が立ってない ACLX から一旦逃げる … という典型的な “競合ショック” の売られ方になっています。

とはいえ、どこまで本質的なリスクか?

ここは少し落ち着いて、臨床バイオ投資で大切な時間軸を整理しておきましょう。

1. Kelonia データは「超初期・n=3」

現時点のデータは Phase 1 の最初の 3例。MRDネガ全員はインパクト大ですが、長期追跡(12–24か月)大規模コホート、安全性プロファイル(遅発毒性・免疫原性 etc.)はまだ全く見えていません。“概念実証としてはすごい” が、“従来 CAR-T を即座に置き換える” までは距離がある段階です。

2. 規制・製造・商業インフラは、既存CAR-T側にアドバンテージ

現在の MM 治療アルゴリズム(IMiD/PI/抗CD38 → BCMA CAR-T/ADC)は、既に ex vivo CAR-T を組み込んだ形で確立しつつあります。病院側のインフラ/治療パスも ex vivo モデル前提。

in vivo CAR-T は規制当局から見ても「全く新しいクラス」なので、長めのフォロー、慎重な評価が入る可能性が高い。Safety signal 一発で一気にトーンダウン、というリスクも。→ 中期的(〜2030)の実需で見ると、“既存&開発中の ex vivo CAR-T が MM 領域を支配する期間がかなり残る” 可能性は高いです。

3. ACLX 自体の差別化ポイントもまだ生きている

ACLX の ddCAR プラットフォームは、抗原密度の低い細胞にも効きやすい設計です。既存 BCMA CAR-T より CRS/ICANS を抑えつつ高反応を狙うといった “同クラス内での差別化” をストーリーにしているはずです。こうした “クラス内ベスト” の価値は、in vivo が立ち上がるまでの数年〜10年で十分モネタイズ可能です。