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FDA に Accelerated Approval された新薬上市の流れとその後について

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FDAに Accelerated Approval (迅速承認) された新薬上市の流れとその後について

Verastem Oncology(NASDAQ: VSTM)の新薬「Avmapki Fakzynja Co-Pack(avutometinib + defactinib)」は、フェーズ 1/2 試験(RAMP 201 試験)のデータをもとに、FDAの「Accelerated Approval(迅速承認)」制度に基づいて2025年5月に承認されました。

そして第2四半期2025業績発表では、新薬「AVMAPKI FAKZYNJA™(avutometinib + defactinib)」の純売上高は、発売から約6週間で210万ドルを計上しました。

この場合、まだフェーズ3試験が残っているにも関わらず、Verastem の「Avmapki Fakzynja Co-Pack(avutometinib + defactinib)」はなぜ上市できたのでしょうか?

また新薬承認のゴールであるFDA承認に得たのにも関わらず、なぜフェーズ3試験をしなければいけないのか?これらの点について、この記事で詳しく解説します。

まず解答として、Verastem の「Avmapki Fakzynja Co-Pack(avutometinib + defactinib)」は、Accelerated Approval(加速承認)されているものの、最終的な承認(full approval)を得るには、フェーズ3試験の完了が必要です。

Accelerated Approval(加速承認)とは?

まず Accelerated Approval(加速承認)とは、重篤または命に関わる疾患に対して、新薬を早期に市場に届けることを目的としたFDAの承認制度です。

この制度では、通常の新薬承認に必要とされるフェーズ3臨床試験の完了を待たずに、患者にとっての治療選択肢を早期に提供することが可能となります。

具体的には、奏効率(ORR)やバイオマーカーなどの代替的な評価指標(surrogate endpoint)に基づき、治療効果が見込まれると判断された場合に承認が与えられます。

ただし、Accelerated Approval はあくまで「条件付き承認」であるため、承認後には有効性と安全性を最終的に検証する追加試験(confirmatory trial)の実施が義務付けられています。

この試験で効果が確認されれば本承認(Full Approval)へと移行しますが、結果が不十分であれば、承認の取り消しが行われる可能性もあります。

「Avmapki Fakzynja Co-Pack」のケース

Avmapki Fakzynja Co-Pack(アブトメチニブ+デファクチニブ併用療法)は、再発または治療抵抗性のRAS変異陽性固形がん(特に低グレード漿液性卵巣がん)を対象とした新薬です。

本剤は、Phase 1/2試験(RAMP 201)において示された奏効率(ORR)や奏効の持続期間(DOR)といった中間データに基づき、2025年5月に Accelerated Approval(加速承認)を取得し、商業販売がすでに開始されています。

ただし、これは条件付きの承認であり、現在は Phase 3 confirmatory trial(RAMP 301)が進行中です。この試験で有効性が明確に確認されれば、本承認(Full Approval)に移行することになります。

一方で、試験が完了しない、または有効性が不十分であると判断された場合、FDAによって承認が取り消されるリスクも依然として存在しています。

疾患対象:卵巣がんなどのRAS変異陽性固形がん患者(治療抵抗性)
承認時点の根拠:Phase 1/2 試験での奏効率(ORR)やDORなどの中間データ
現在の状況:商業販売は開始(2025年5月〜)

「Avmapki Fakzynja Co-Pack」を販売できるのはなぜ?

Accelerated Approval(加速承認)は、あくまで “条件付き承認” という位置づけであるものの、FDAによって正式に承認された医薬品であるため、市販・処方が可能となっています。

この制度は、重篤な疾患に対して有効性が示唆され、なおかつ既存の治療法が限られている場合などに、患者にとっての治療上のベネフィットが大きいと判断されれば、フェーズ3試験が完了していない段階でも実際の医療現場で使用することが認められます。

そのため、「Avmapki Fakzynja Co-Pack」も同様に、承認後すぐに販売が開始され、医師の判断により患者への処方が行われているのです。

「Avmapki Fakzynja Co-Pack」は現在、オフラベル使用(薬が公式に承認されていない適応症への使用)が行われています。通常、保険償還(reimbursement)は承認された適応症に限られますが、本剤は例外的にオフラベルでも償還が認められています。

また、本剤はがん治療の標準指針である NCCN(National Comprehensive Cancer Network)ガイドラインの正式推奨リストにはまだ掲載されていないものの、発売からわずか約6週間で210万ドルの売上を記録しました。

これは、たとえニッチな領域であっても確かな需要が存在することを示しています。今後、ガイドラインに正式掲載されれば、使用機会と償還対象がさらに拡大する可能性は高いでしょう。

類似ケース

Accelerated Approval(加速承認)制度を活用して販売された薬剤には、これまでにもいくつかの著名な事例があります。

たとえば、がん免疫療法薬の Keytruda(ペムブロリズマブ)は、非小細胞肺がんやメラノーマなどの治療において、早期段階で加速承認を取得し、その後の追加試験で有効性が確認されたことにより、本承認に移行し、複数の適応症に承認が拡大されました。

一方で、アルツハイマー治療薬の Adulhelm(アデュカヌマブ)のように、加速承認を受けた後、有効性や費用対効果に関する議論が続き、最終的には製造・販売が中止されたケースもあります。

このように、Accelerated Approval 制度のもとで承認された医薬品は、その後の試験結果によって将来が大きく左右されるため、常に注意深く見守る必要があります。

また類似ケースとして、2024年4月に小野薬品工業に買収された Deciphera Pharmaceuticals (DCPH) のがん治療薬「Qinlock(リポラフェニブ)」の上市とも重なります。

この薬は承認適応のほか、オフラベル使用(未承認のがん種・遺伝子変異への処方)が早期から広がりました。その後、保険償還が承認適応外でも通ったことで、正式なガイドライン掲載前から売上が安定的に積み上がる状況に

その結果、売上成長と市場シェアの拡大を背景に企業価値が上昇し、最終的に1株当たり25.60ドルで買収されています。