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バイオテック業界におけるベンチャーキャピタル投資の行き先

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バイオテック業界におけるベンチャーキャピタル投資の行き先

バイオテック業界におけるベンチャーキャピタル(VC)投資の行き先を知ることは、将来の医薬品イノベーションの「方向性」を知ることができます。

Evercore ISI が発表したグラフ「$M of Deals by Lead Therapeutic Area (per quarter)」では、2023年〜2025年までの四半期ごとに、主要な治療領域にどれだけの資金が投じられたかが視覚化されています。

本記事では、この3年間におけるバイオテック業界VC投資の動向を整理し、業界が注目する疾患領域、浮き沈みの激しい分野、将来のホットスポットを読み解きます。

投資の三本柱:「Solid Tumor Oncology」「I&I」「Neurology」

グラフ全体を通して、また近年明確に見えてくるのは、以下3領域に資金が集まりやすい傾向です。

・Solid Tumor Oncology(固形がん腫瘍学)
四半期あたり最大で $1.8B超(2024 Q1)。がん治療は依然として最大の関心領域。

・I&I(炎症・免疫)
全期間を通して コンスタントに$700M〜$1.5B 程度。慢性疾患/自己免疫治療への注目を反映。

・Neurology(神経)
とくに2024 Q1/Q2の$1.3B超が際立つ。アルツハイマーやパーキンソンへの集中投資と見られる。

これらはいずれも高アンメット・ニーズ / 市場規模の大きさが背景にあり、投資家にとって長期的なリターンが期待できるテーマと言えます。

セクターの浮き沈み:一時的関心と構造的減退

いくつかの治療領域では、急激な資金流入/流出が見られ、VCの関心の「短期性」や試験失敗・規制リスクへの脆弱性がうかがえます。

急伸した領域

・Obesity(肥満)
2024年Q3にかけて急増($289M)→ GLP-1受容体作動薬の流行に連動(Novo, Lillyの影響)

・Cardiovascular(循環器)
2024 Q2に$206Mと過去最大 → 心不全、遺伝性高コレステロール症治療薬の再注目

急落した領域

・Genetic Disease(遺伝病)
2023 Q2に$765M → 2025 Q2に$367Mへ半減 → Gene Therapyの治験失敗や資金調達難が影響

・Rare Disease (希少疾患)
ピークは2023年Q4の$150M → 2025 Q2では$0M表示 → オーファン薬政策の不透明さが背景か

ニッチ分野の台頭:「Metabolic / Liver」や「Ophthalmology」にも光

一部の中小ディールが積み上がることで、特定分野の存在感が高まっています。

・Metabolic / Liver(肝疾患)
2024 Q4に$752Mとピーク。MASH(旧NASH)領域の関心と合致。銘柄的には、MDGL、AKRO、ETNB

・Ophthalmology(眼科)
2025 Q2で$319Mと急伸。遺伝性失明や黄斑変性症の新治療に期待集まる。銘柄的には OCUL、LENZ など

2025年上期:注目すべき「非がん系」投資への転換兆候

2025年Q1〜Q2では、「Solid Tumor Oncology (固形がん腫瘍学)」など従来の王道がやや鈍化し、以下の新興分野が存在感を強めています。

治療領域 2025 Q2 投資額 コメント
I&I $627M 依然として中核、皮膚疾患・自己免疫疾患などが牽引
Neurology $542M 脳疾患治療のイノベーション需要が続く
Ophthalmology $319M ジーンセラピー適応可能な疾患が多く、希少疾患と相性◎
Metabolic / Liver $437M MASH・脂肪肝の注射薬治験が進行中

今後の注目分野と投資家戦略

短期的視点では、「Metabolic / Liver」「Ophthalmology」「Neurology」など非腫瘍系への資金流入が顕著であり、ここが次の成長セグメント。

一方で、Solid Tumor Oncology や I&I は “基盤セクター” として安定感が強く、ディールの規模も依然として圧倒的。