
会社の位置づけ(何が評価の核か)
Evommune は、慢性炎症(皮膚・アレルギー・自己免疫)を狙う臨床バイオで、当面の価値ドライバーはほぼ 2本です。
「EVO756(経口 MRGPRX2 拮抗)」CSU / AD の Phase 2b(会社の“主役”)
「EVO301(注射の IL-18 中和フュージョン蛋白)」AD Phase 2、さらに UC Phase 2 を 2026 に計画
William Blair は主力「EVO756」を「経口で差別化できる multi-blockbuster ポテンシャル」と位置づけ、CSU+AD で 2035年ピーク売上$5Bという強気シナリオを置いています。
EVO756(MRGPRX2拮抗)の “キモ”
作用機序:マスト細胞+感覚神経を同時に叩く、という思想
EVO756 は MRGPRX2(主にマスト細胞、末梢感覚神経にも関与)を標的にする経口小分子で、会社は 「炎症を下げつつ、痒みの“速効”も狙える二重メカ」を強調しています。 ここが、既存の注射薬中心の市場(CSUなら抗IgE等、ADなら生物学的製剤等)に対する“差別化ストーリー”の中核です。
開発ステージ:いま一番重要なのは CSU の Phase 2b
会社開示ベースでの直近ロードマップはこうです:
・CSU(慢性特発性蕁麻疹)Phase 2b:トップラインが 2026年上期(1H26)
・AD(アトピー性皮膚炎)Phase 2b:トップラインが 2026年下期(2H26)
William Blair は CSU で「完全奏効(complete response)25%+」のような強い目線を置いており、ここを満たせるかが株の分岐点になりやすいです。
PoC はどこまで出てる?
公表の詳細データとして目立っているのは “慢性誘発性蕁麻疹(CIndU)” の Phase 2です(EADV 2025 での発表)。William Blair 自身も「ヒトチャレンジ試験+CIndU Phase 2が CSU を de-risk している」というロジックで語っています。
つまり現状は、“CSU そのものの決定的な Phase 2 成績” というより、近縁疾患でのシグナルを根拠に CSU 2b を待っている局面、という理解が安全です。
EVO301(IL-18)=“もう1本の読み出し”
「EVO301」は IL-18 経路を中和する注射製剤で、AD の Phase 2 トップラインが2026年上期(1H26)予定。さらに UC の Phase 2 を 2026 に開始予定とされています。
「EVO756(経口)」とは “勝ち筋” が違うので、片方が外れてももう片方で生き残る(あるいは両方当たれば評価が跳ねる)構図になっています。
なぜ M&A 連想が出るのか(比較取引と注意点)
MRGPRX2 は実際にディールが出ています。
・Incyte による Escient 買収($750M):MRGPRX2 系のパイプラインを取り込んだ例
・Novartis × 杏林(KRP-M223):$55M upfront + 最大 $777.5M マイルストン(MRGPRX2 拮抗、前臨床)
そのため「EVO756 の Phase 2b が強ければ strategic interest」という連想は自然です。
一方で重要な注意点:Incyte 側の MRGPRX2 候補は毒性などで開発が揺れた経緯もあり、“クラス全体が楽勝” というより分子ごとのPK/安全性の出来が勝敗を分ける可能性があります。
直近の見取り図(カタリストをQで)
2026年上期(1H26):EVO756(CSU)Phase 2b トップライン
2026年上期(1H26):EVO301(AD)Phase 2 トップライン
2026年下期(2H26):EVO756(AD)Phase 2b トップライン
資金面は、IPOで総額 $172.5M 調達(グリーンシュー含む)を会社が明記しており、少なくとも「読み出しまで走る」体制は整っている、という説明です。
大株主の RA Capital の評価
Evommune の Series C($115M、2024/10/31)は RA Capital が共同リードで、RA Capital の Derek DiRocco(Partner)が取締役会入りしています。
その際の DiRocco のコメントとして、「EVO756 の PoC が非常に有望で、Evommune が免疫領域の先端企業として進む強い基盤」という趣旨が述べられています。
つまり、RA の公開スタンスは「EVO756(MRGPRX2阻害)のPoCに強い手応え」+「ボードで伴走する価値がある」というものです。 同じ 13D の Item 3 では、RA は IPO 前に Series C 優先株を取得しており(IPO時に普通株へ自動転換)、加えて IPO で $20M($16/株)を追加購入したことが記載されています。
これは「上場の流動性イベントで軽く利確」ではなく、上場時点でも資金を追加している動きです。
2025年11月7日:Evommune, Inc.(EVMN) が NYSE に上場、約$150M IPO を完了。慢性炎症疾患パイプライン加速の資金を確保。
2025年9月22日:EVO756 の慢性誘発性じんましん(CIndU)Phase 2 試験フルデータを EADV 2025 の Late-breaker で発表(有意な臨床活性を確認)。
2025年4月15日:中等度〜重症慢性特発性じんましん(CSU) を対象とした経口 MRGPRX2 拮抗薬 EVO756 のグローバル Phase 2b 試験(EVO756-CSU001)を開始。
2025年3月17日:中等度〜重症アトピー性皮膚炎(AD) を対象とした IL-18BP 融合タンパク EVO301 の Phase 2a 試験(EVO301-AD001)を開始。
2025年5月:symptomatic dermographism を対象としたCIndU Phase 2 試験を完了。FricTest スコア・かゆみ NRS 改善を含む PoC を獲得し、CSU/AD プログラムの生物学的妥当性を補強。
承認済み製品:なし(開発中)
主力候補:EVO756(MRGPRX2 拮抗・経口小分子)— 慢性特発性じんましん(CSU)、アトピー性皮膚炎(AD)、慢性誘発性じんましん(CIndU)など肥満細胞・神経原性炎症ドライバー疾患を対象。
補足:EVO301(IL-18BP-SAFA 融合タンパク・静注)— 中等度〜重症 AD で Phase 2a 進行中、2026年以降に潰瘍性大腸炎(UC)など IL-18 ドライバー疾患への展開を計画。
対象:中等度〜重症 慢性特発性じんましん(CSU)成人
作用:MRGPRX2 拮抗・経口小分子(肥満細胞脱顆粒+神経炎症を同時抑制)
対象:中等度〜重症 アトピー性皮膚炎(AD)成人
作用:MRGPRX2 拮抗・経口小分子
対象:中等度〜重症 AD(成人)、今後 UC・Crohn 病など IL-18 ドライバー疾患へ拡大予定
作用:IL-18BP-SAFA 融合タンパクによる IL-18 中和(バリア機能・サイトカインネットワーク是正)
| パイプライン | 対象 | 臨床フェーズ | 規制デザイン | 安全性(AESI) | 用法・用量 / 併用戦略 | 市場規模イメージ | ポイント(市場評価) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| EVO756(MRGPRX2 拮抗)CSU | 中等度〜重症 慢性特発性じんましん(CSU) | Phase 2b | 多施設ランダム化・二重盲検・プラセボ対照 Phase 2b(EVO756-CSU001) | クラス留意:血管浮腫、アレルギー反応、消化器症状、肝酵素変動を重点監視 | 1日1回経口単剤。将来的には抗ヒスタミン薬・生物学的製剤からのステップダウン/ステップアップ戦略と併用最適化の余地。 | 中〜大:CSU はグローバルで数百万人規模、経口 first-in-class による置換余地大 | 肥満細胞+神経炎症を同時に叩く MoA で差別化。 主要データ読み出し:2026年 Q2 |
| EVO756(MRGPRX2 拮抗)AD | 中等度〜重症 アトピー性皮膚炎(AD) | Phase 2b | ランダム化・二重盲検・プラセボ対照 Phase 2b(EVO756-AD001) | そう痒関連 AESI(頭痛・めまい・眠気)、感染症、肝酵素をモニター | 1日1回経口単剤。既存のデュピルマブ系/JAK 阻害薬からの切替や併用も将来仮説。 | 大:グローバル AD 市場(経口剤ニーズが強い) | かゆみ+炎症の両方を狙う新規 MoA。 トップライン:2026年 Q4 |
| EVO756(MRGPRX2 拮抗)CIndU | 慢性誘発性じんましん(symptomatic dermographism) | Phase 2 完了 | ランダム化・プラセボ対照 Phase 2(PoC 試験) | CSU 同様のアレルギー/皮膚関連イベント、肝酵素等 | 経口単剤。CSU/AD への read-through を狙った“生物学的 PoC”位置づけ。 | ニッチ〜中:患者数は CSU より小さいが、高未充足領域 | FricTest・かゆみ NRS の改善で PoC を確立済み。 CSU/AD 開発のリスク低減に寄与。 |
| EVO301(IL-18BP-SAFA)AD | 中等度〜重症 アトピー性皮膚炎(AD) | Phase 2a | IV 投与 PoC Phase 2a(ランダム化・二重盲検・プラセボ対照) | サイトカイン標的に伴う感染症リスク、注入反応、肝機能・血液検査異常 | 12週間で 2回 IV 投与。将来は自己注射型 SAFA など製剤改良の余地。 | 大:重症 AD サブセット(既存バイオで不十分な群) | IL-18 高発現・重症度相関という生物学的裏付け。 初期データ:2026年 Q2 |
| EVO301(IL-18BP-SAFA)UC | 中等度〜重症 潰瘍性大腸炎(UC) | Phase 2 計画 | 経静脈投与の PoC Phase 2 を 2026年に開始予定 | 腸管/全身炎症に伴う感染症・悪性腫瘍リスク、肝酵素変動を長期的にモニター | IV 単剤 → 既存の抗 TNF/IL-23/JAK 阻害薬とのシークエンシャル/併用戦略を検討 | 大:IBD 市場(高価格生物学的製剤市場) | IL-18 軸を直接叩く first-in-class でポジショニング。 Phase 2 開始:2026年 Q2–Q4 を想定。 |
- 二本柱の炎症バイオ:経口 MRGPRX2 拮抗薬 EVO756 と IL-18BP 融合タンパク EVO301 の 2 本柱で、CSU / AD / CIndU / UC といった皮膚炎・IBD 領域をカバー。
- PoC 済み+Phase 2 カタリスト集中:CIndU で Phase 2 PoC を確立済みで、2026年 Q2〜Q4 に CSU Phase 2b / AD Phase 2b / AD IL-18 Phase 2a の 3 本の読出しが集中。
- 財務面:2025年の IPO で約 $150M を調達済みで、少なくとも主要 Phase 2 読出しまでのランウェイを確保していると見られる(詳細は最新決算・目論見書ベースで要確認)。
大株主には Andera Partners など欧州ライフサイエンス系 VC を含む専門バイオ投資家が名を連ねており、シリーズ C 〜 IPO を通じて長期志向の機関投資家が厚めに入っている構図と考えられます。
IPO 後は、2026年の複数 Phase 2 データに向けて、専業バイオファンド・汎用グロースファンドのポジション変化(新規 13G / 13D、買い増し・利益確定)のモニタリングが重要な論点となります。
RA Capital は、2024年10月31日の Series C ラウンド($115M)を Sectoral と一緒に “co-lead” しています。この Series C 時点で10%超の大株主になっています。
EVO756 CIndU Phase 2 主要結果
symptomatic dermographism を対象とした Phase 2 試験を完了。FricTest スコア・かゆみ NRS 改善により MRGPRX2 阻害の PoC を確立。
EVO756-CSU001 Phase 2b 登録
中等度〜重症 CSU を対象としたグローバル Phase 2b(ランダム化・二重盲検・プラセボ対照)で登録進行中。12週間 1日1回経口投与+2週間フォロー。
EVO756-AD001 Phase 2b 登録
中等度〜重症 AD 成人を対象とした Phase 2b 試験で FPI を完了し、約120例の登録を進行。主要評価項目は EASI 変化率。
EVO756 CSU / EVO301 AD Phase 2 初期データ
EVO756-CSU001(Phase 2b)と EVO301-AD001(Phase 2a)の初期有効性・安全性データを読み出し、Phase 3 / 追加適応戦略を更新。
EVO756 AD Phase 2b トップライン & EVO301 UC Phase 2 開始
中等度〜重症 AD における EVO756-AD001 Phase 2b トップラインを報告し、必要に応じて Phase 2/3 または登録試験の設計へ移行。同時期に EVO301 の UC Phase 2 を開始し、IBD 領域での PoC を探索。
IPO 後の初回決算・ガイダンス、CSU/AD Phase 2b の登録状況アップデート、CIndU Phase 2 フルデータの学会・論文展開。
EVO756 CSU Phase 2b 初期データおよび EVO301 AD Phase 2a 初期データ。MRGPRX2 / IL-18 ターゲットのリスクを大きく左右するバイナリーイベント。
EVO756 AD Phase 2b トップライン、EVO301 UC Phase 2 開始と中間解析、ポジティブであれば Phase 3 デザイン開示・提携/共同開発ディールなど中期バリュー創出イベント。
