大株主 RA Capital が関与する理由
RA Capital は「筋(と心筋)に “届く” ASOデリバリー技術(EDO)と、それをヒトで裏づけた強いPDシグナル(DM1のスプライシング補正)」に賭けており、ボード参加で実行をコントロールしながら “疾患横展開できるプラットフォーム” としての価値を取りに行っている、という見立てです。
・プラットフォームの本丸=“筋に届く”
PepGen の EDO(Enhanced Delivery Oligonucleotide)は、改良 CPP で骨格筋・心筋への取り込みを高める設計。前臨床/解説でも筋・心への分布と取り込み向上を強調しています。AAV を使わず反復投与可能なASOで、筋/心に実効濃度を届ける点は差別化の芯。
・ヒトでの “機序近接” エビデンス
DM1(PGN-EDODM1)単回15mg/kg で平均53.7%のスプライシング補正という、同領域で過去最高水準のPD改善を示したのは決定打級。プラットフォームの効果がヒト筋で再現された意味が大きい。ここが臨床機能アウトカムへの橋渡しの起点に。
・資本配分の柔軟性(ピボット)
会社は2025年に DMD(EDO51)を整理し、DM1へ集中。失敗作の延命より勝ち筋への資源集中を選んだ判断は、投資家主導の資本効率として好感
・“モダリティ×適応群” の拡張ポテンシャル
DM1での実証は他の筋疾患(筋ジス、筋病変を伴う神経筋疾患)や中枢/心筋適応への外挿余地を示唆。デリバリー技術に賭ける RA のお家芸的テーマでもあります。
・関与の深さ(ガバナンス+歴史)
RA は創業期から関与(2020年の Series Aリード)し、13D提出の大口株主。さらに RA のMD(Josh Resnick)が取締役に入っており、戦略・開発・資本政策に実質関与できる体制。過去には RA のベンチャー・パートナー出身者が経営参画の例も。
アップサイド
– DM1で反復投与→持続的PD→機能指標の改善(握力、6MWT、PROなど)を示し、準登録的試験設計へ。
– 安全性/肝酵素・免疫対応の最適化を確認しつつ、心筋・中枢適応の拡張(パートナー含む)。
– プラットフォーム価値(複数適応)×資金調達/提携マイルストンでディスカウント修正。
リスク
– PD→臨床機能の“変換効率”:高いスプライシング補正がどの程度の機能改善に結びつくかは未確定。
– 長期の耐久性と再投与:反復での安全域/肝・免疫、実臨床でのアドヒアランスを詰める必要。
– DMD撤退の傷跡:クラス全体の不信(ASO×筋の難しさ)をDM1で覆せるか。
以上のように、RA Capital は “筋・心に届くASO” という本質的なデリバリーの壁を、EDO で越えつつある点を評価し、DM1の強いPDデータで勝ち筋が見えた今、ボードから実行を利かせてプラットフォーム企業としての価値最大化を狙っている可能性があります。
承認済み製品:なし(開発中)
主力候補:PGN-EDODM1(EDO結合AON)— 筋緊張性ジストロフィー1型(DM1)を対象。
補足:DMD向けPGN-EDO51は2025年5月に開発中止。以降はDM1へ経営資源を集中。
対象:成人DM1(米/英/加)
作用:EDOペプチドによりAONの核内送達を強化し、DMPKミススプライシングを矯正
対象:成人DM1(英/加)
目的:反復投与での持続的スプライシング矯正、安全性、PK/PDの確認
対象:DM1に続く神経筋領域の適応探索
作用:EDOにより骨格筋への取り込み/核内送達を増強
パイプライン | 対象 | 臨床フェーズ | 規制デザイン | 安全性(AESI) | 用法・用量 / 併用戦略 | 市場規模イメージ | ポイント(市場評価) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
PGN-EDODM1(EDO結合AON) | DM1(筋緊張性ジストロフィー1型) | Phase 1(SAD) → Phase 2 準備 | 用量漸増SAD → 反復投与MADへ | 注射部位反応、肝酵素、腎/心電イベント等を重点監視 | 静脈内/皮下の最適化を検討(反復投与での持続性評価) | 希少だが高未充足:機能改善の実証で拡大余地 | 核内デリバリー強化による分子効果の大きさ/持続性が鍵。 次読出し:Q4 2025(SAD) |
FREEDOM2-DM1(MAD) | DM1(成人) | Phase 2 準備 | 反復投与でのPoC(分子→機能ブリッジ) | 長期反復に伴う肝/腎/心血管安全性を継続評価 | 投与間隔/期間の検討、機能評価(筋力/疲労/PRO)導入 | 中:臨床実装に向けた差別化(持続性/利便性) | 初期データ目安:Q2 2026 |
EDOプラットフォーム(次適応) | 神経筋領域(探索) | 前臨床 | 適応横断の前IND/トランスレーショナル | クラス留意:免疫反応、オフターゲット、代謝負荷 | 投与経路/製剤の改良で反復性と安全域の拡大 | 中:プラットフォーム拡張で価値増大 | DM1での臨床実証がレバレッジ |
- 集中戦略:DMDをクローズしDM1に経営資源を集中。開発リスクの一本化と実証スピードを優先。
- 核内デリバリー:EDOでAONの核内到達性を高め、分子効果量と持続性の最大化を狙う。
- 財務余力:Q2’25時点のキャッシュで2026年Q2頃までのランウェイを確保。
主要ファンドのポジションからの考察を加えて
FREEDOM-DM1 初期コホートの所見提示
分子レベルのスプライシング矯正シグナルを確認(次コホートへ拡張)。
FREEDOM-DM1 追加アップデート / FREEDOM2-DM1 開始
SAD追加所見を開示し、MADを英/加で始動・登録を加速。
FREEDOM2-DM1 初期データ
反復投与での分子効果の持続性、安全性、PK/PDの所見を提示し、次段階設計へ。
資金ランウェイ
Q2’25開示ベースで2026年Q2まで運転資金の見通し。
FREEDOM-DM1(SAD)追加データ、FREEDOM2-DM1(MAD)開始・登録状況
FREEDOM2-DM1 初期データ(反復投与での分子→機能ブリッジ)
次段階試験デザイン合意(主要評価/期間/用量)と適応拡張の示唆