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Regulus Therapeutics : 買収前にファンドが動いたタイミングとは?

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Regulus Therapeutics (RGLS) は、ADPKD (常染色体優性多発性嚢胞腎) に特化したmiRNA創薬「farabursen(RGLS8429)」で注目を集め、Phase 1b 成功を経て2025年Q3の単一ピボタル Phase 3 に進む直前に Novartis に買収されました。

【RGLS】Regulus Therapeutics のカタリストとロードマップ

私が RGLS を観察していて気づいたのは、以下のカタリストとなる重要なイベントでファンドが大きく買いに動いたことでした。まずは、

・2024年3月12日に発表された「Phase 1b(MAD)第2コホートのポジティブなトップラインを発表(ADPKD:RGLS8429)。同試験の進捗(第3コホート enrollment など)にも言及。」です。

・2025年3月27日、買収1ヶ月前に発表された「farabursen(RGLS8429)の Phase 1b(MAD)試験の完了を発表。安全性・忍容性・PK/PD を評価し、一次評価項目(尿中PC1/PC2の変化)や探索的な htTKV 指標についても概要を報告。

この2つの異なるタイミングで、それぞれのファンドが動いていました。

RA Capital が入ったタイミング

RA Capital が新規で RGLS に入ったタイミングは、2024年3月14日で、RGLS が「Phase 1b(MAD)第2コホートのポジティブなトップラインを発表」した後です。

RA Capital がこのタイミングで購入したのは、「効いている筋道(PoM)と “効きそう” な早期エフェクトが同時に見えた」点を買った可能性が高いです。

Cohort 2(2mg/kg, 3か月)のトップラインには、投資判断で効くサインがいくつも入っていました。

コホートとは?

コホートとは、臨床試験に参加している 患者群(被験者のグループ)のことです。

「Cohort 1」= 最初の試験群(低用量を試すグループ)
「Cohort 2」= 次の試験群(もう少し高い用量を試すグループ)
「Cohort 3」= さらに次の試験群

… というように段階的に進みます。つまり、「Cohort 2(2mg/kg, 3か月)のトップライン」 とは、「2mg/kgを3か月間投与した2番目の被験者群の試験結果(トップライン=主要な速報データ)」を意味します。

RA Capital が出動したポイント

・明確なメカニズム薬理(PoM)
尿中ポリシスチン(PC1/PC2)が用量依存で上昇。2mg/kgで1mg/kg・プラセボより機序指標が強化され、>2.4mg/kgで最適腎曝露が見込めるというPK/PDモデルの示唆が開示。→「さらに上の用量で効力が伸びる余地」がある。

・画像(htTKV)の “早期シグナル”
2mg/kgの4/11例で htTKV が2%以上減少(3か月という短期で)。しかもPC1/PC2上昇が大きい患者ほど htTKV の改善が大きいというバイオマーカー‐アウトカムの連関が示された。→「PoM→臨床に繋がる」線が見える。

・安全性/PKが素直
反復投与でも概ね良好な忍容性、線形に近い曝露。→上の用量コホート(3mg/kg, 固定300mg)に自信をもって進める根拠。

・レギュラトリー設計の見通し
会社側はこの段階で Accelerated Approval(加速承認)を見据えた開発線表を明示(登録試験でhtTKVを主要指標に使う前提)。→エンドポイントが具体で“大手が拾いやすい”案件。

・資金面の地ならし+RAの参加
トップライン同日に$100Mの私募を実行し、RA Capital が投資家の一角として名指し。→「データ良化+資金確保」で開発継続性リスクを同時に圧縮。

投資家目線

・“ハイアー・ドーズでの再現” が読める
PoM(PC1/2)と探索的 htTKV の用量関係が見え、Cohort3/4での上積みが論理的。→イベント前ロングを入れやすい。

・Accelerated Approval/エンドポイントの整合
腎領域で実績のある htTKV を早期アウトカムに据える設計は買い手/査読者に通りやすい。

・需給の好転
大型私募で開発資金が確保され、需給の過度な不安が後退。→臨床イベントに集中できる。

まとめると、Cohort 2 データは、機序(PC1/PC2)→画像(htTKV)への “橋渡し” が用量反応で示されたのが肝。安全性も良好、資金も同時に手当て。RA Capital が新規で入るには十分な “科学+実務” のセットでした。

厳密には、RA Capital は2024年3月14日に新規で5%以上のポジションを持った後に大多数を処分し、2024年9月30日時点には1.2%の保有のみと減少しています。

コーエンの Point72 が入ったタイミング

コーエンの Point72 が新規で入ったタイミングが、RGLS が2025年3月27日に発表した「farabursen(RGLS8429)のPhase 1b(MAD)試験の完了を発表。安全性・忍容性・PK/PD を評価し、一次評価項目(尿中PC1/PC2の変化)や探索的な htTKV 指標についても概要を報告。」のニュースの後、25年4月1日のタイミングです。

これは、「P1b完了で不確実性が一段下がった “リスク低下ゾーン”」であり、その後25年4月30日に発表された Novartis によるM&A前の短い窓です。Point72 が入ったタイミングを分析すると、

・規制の道筋が見えた状態
1/29 時点でFDAと単一ピボタルP3(12か月htTKV→AA、24か月eGFR→本承認)の方向性が公表済み。3/27 のP1b完了で用量・安全性の不確実性がさらに低下。=“設計が見える×データが揃う” のセットが成立。

・市場が織り込む前
Phase 1b 完了は “よいニュース” だが、P3着手までは時間があるためフルにM&Aプレミアムを織り込みづらい局面。そこをパッシブで5–6%だけ素早く押さえるのはPoint72らしいリスク管理。

・戦略的買い手の必然性
腎領域強化の Novartis に戦略的フィット。PoC→P3設計合意→小型(拾いやすい)という三点セットは “買われやすい型”。結果的に約1か月後に買収発表。

まとめると、Point72 の RGLS 新規買い(4/1)は、P1b完了PRでのデリスキング→M&A発表前という “教科書的なイベント前ロング”のタイミング。規制パスの明確化+PoCの質+戦略的買い手の必然性が揃い、短期のプレミアム捕捉を狙ったと解釈できます。

最終的にM&Aの最も恩恵を受けたのは、買収前に入った Point72 でした。RA Capital は入るタイミングが早かったのか?保有数を大分処分していました。