Zoomy

ステーブルコインの最大のリスクは「銀行」だった?

【記事には広告を含む場合があります】

ステーブルコインの最大のリスクは「銀行」だった?

ステーブルコインの最大のリスクは「銀行」だった?SpaceX (Starlink) のようなグローバルな企業も使う “デジタルドル” の落とし穴についてご紹介します。

ステーブルコインって、そもそも安全なお金じゃないの?

ステーブルコインとは、米ドルなどの法定通貨と価値を連動させたデジタル通貨のこと。たとえば USDC や USDT は「1枚=1ドル」の価値を持ち、価格が安定しています。

多くの人はこう思うかもしれません、「ステーブルコインは米国債などで裏付けされているんだから、安全なはず

たしかに、それは半分正解です。でも、本当に重要なリスクは別のところに潜んでいます。

SpaceX のようなグローバル企業も使う、新しい国際送金手段

たとえば SpaceX やその通信部門である Starlink は、世界中の国々でサービスを提供しており、現地通貨で得た収益をアメリカに送金する必要があります。

でも、そのプロセスは銀行をまたいで複雑で時間もお金もかかる。だからこそ、彼らはステーブルコインを使っています。

1. 各国で現地通貨をUSDCに交換
2. ブロックチェーン上で米国に高速かつ安価に送金
3. アメリカ側で再びドルに戻す

この仕組みによって、手数料削減と送金スピードの高速化を実現できるのです。

本当のリスクは「銀行」にあった

ここで注目したいのが、「その USDC の裏側にあるお金が、どこに保管されているのか?」という問題です。

USDC を発行している Circle は、その裏付け資産として米国債などを使っていますが、一部は現金(ドル)として銀行に預けられています。

そして、この「銀行に預けているお金」が、最大のリスクになるのです。

SVB(シリコンバレー銀行)の破綻

2023年3月10日、アメリカの中堅銀行 Silicon Valley Bank(SVB)シリコンバレー銀行が突然経営破綻しました。この時に、Coinbase と Circle はどのように対処したのでしょうか?

・Circle のケース

このとき、USDC を発行する Circle(CRCL)は、USDCの準備金の一部(約33億ドル)をSVBに預けていたことが判明しました。結果、USDCが1ドルから急落。

・USDCは一時的に0.88ドルまで下落(=ペッグ崩壊)
・市場は「USDCは裏付けを失ったのではないか?」とパニックに
・USDT(テザー)など他のステーブルコインに一時的に資金が流入

Circle(CRCL)は、即日で準備金の構成を公開し、SVBにあるのは全体の一部(約8%)であると説明します。更に、準備金の大部分は米国債にあるため、資産全体の健全性は問題ないことを強調しました。

翌週、米政府が SVB の預金を全額保護することを発表し、市場は安堵します。USDC は数日でペッグ(1ドル)を回復し、信頼も急速に戻りました。

・Coinbase のケース

Coinbase(COIN)は Circle と連携する主要な取引所であり、USDC とドルの交換窓口でもあります。SVB問題発生時には、銀行が閉まっている間は現金化が難しいため「週末中はUSDC→USDの自動コンバートを一時停止」と発表しました。

市場が安定した翌週、通常通りの変換を再開します。なお、この対応は市場の混乱を助長することなく、むしろ「慎重で信頼できる対応」として評価されました

まとめ:透明な仕組みにも “人間的” な弱点がある

ステーブルコインはテクノロジー的に透明で便利です。しかし、「その中身(裏付けの現金)」をどこに置いているかが最大のリスク
とくに、破綻リスクのある銀行に依存していると、ステーブルコインも一時的に危うくなります。

簡単に言うと…ステーブルコイン自体は安全でも、中に入っている「お金の保管先(銀行)」が危ないとアウトになることがある。つまり、デジタルなお金にも “現実世界のリスク” が残っているというわけです。

今後、ステーブルコインを本当に「安全なデジタルドル」として活用していくには、裏付け資産の開示と透明性の強化、預け先銀行のリスク分散、あるいは中央銀行発行のデジタル通貨(CBDC)との併用などが重要になるでしょう。

テクノロジーが進化しても、最後に問われるのは「信頼」。デジタルマネーにおいてもそれは変わらないようです。