HOME > 臨床バイオ

【XNCR】Xencor カタリストとロードマップ

【記事には広告を含む場合があります】

XNCR(Xencor)の中核は、抗体の設計・最適化を可能にする技術(IP/ノウハウ)です。代表例として、Fc領域を改変して活性や安全性プロファイルを調整する XmAb®、半減期延長などを狙う Xtend™ などが挙げられます。これらを他社にライセンスし、upfront/マイルストン/ロイヤルティを受け取るビジネスが、いわゆる「技術収益」です。

XNCR は同時に、そのプラットフォームを自社パイプラインにも適用し、二重特異抗体(TCEなど)や免疫領域の抗体を中心に自ら臨床開発を進める、革新的な抗体プラットフォームを有する創薬会社です。

ハイライト

2026年1月8日:2026年のパイプライン・マイルストンと資金状況を更新XmAb819(ccRCC)で2026年中にCRC/NSCLC/pRCCの拡大コホート開始2026年Q3–Q4に「Phase 3用推奨用量を支持する新データ」提示予定。XmAb541(CLDN6×CD3)も2026年Q3–Q4に推奨用量支持データを提示予定。XmAb942(TL1A)で2026年Q1–Q2に健常人P1最終結果XENITH-UCは患者登録進行中。XmAb412(TL1A×IL23p19)2026年Q3–Q4にFIH開始計画。2025年末の現金等は約$611M(暫定・未監査)で、2028年までのランウェイ見込み。

2025年10月24日:XmAb819(ENPP3×CD3、ccRCC)初期データを学会で発表。P1用量漸増/拡大で69例が投与済み(IV 10コホート+SC 5コホート、中央値4ライン既治療)。詳細安全性・有効性をTriple Meeting 2025で提示。

2025年8月6日:2025年Q2決算で事業進捗と資金ガイダンスを更新XmAb942(TL1A)健常人P1で半減期>71日などを示し、XENITH-UC(UC P2b)を開始。plamotamab(RA)は2025年6月に当局許可を得てP1b/2a PoCを推進。年末現金等は$555–585M見込みとガイダンス。

2025年4月29日:XmAb942(高力価・長半減期TL1A抗体)で健常人P1の中間結果が良好。これを受け、潰瘍性大腸炎P2b「XENITH-UC」へ進行決定。

2025年Q4:XmAb657(CD19×CD3:自己免疫)特発性炎症性ミオパチー(IIM)P1 PoCを開始(会社開示)。

2024年:J&J/Janssenがplamotamab権利を返還。一方でCD28二重特異プラットフォームでの共同研究は継続(腫瘍/自己免疫での展開)。

注目ポイント

・“TL1A” クラスが一気に本命化している
メルクが Prometheus 由来の「tulisokibart(MK-7240)」を UC/CD の Ph3 まで進め、さらに他免疫疾患へ拡張中。クラスの成功確度が高まっている。

Sanofi/Teva の共同TL1A抗体(duvakitug)が Ph2b で主要評価項目達成と報じられ、クラスの臨床的妥当性が強く裏付けられた。

・Xencor の TL1A(XmAb942)が “差別化ポイント” を持つ
「XmAb942」は高力価+半減期延長(Xtend Fc)+Fcサイレンシングという設計で、q12週投与まで見据えた使い勝手を狙う設計。FIH(SAD/MAD)の中間結果を出し、UC の Ph2b(XENITH-UC)開始設計を公開しています(12週誘導→40週維持、IV→SC、主要評価は12週mMayo寛解、約N=220)。

これは “クラス内での用量曝露最適化” と “投与負担の軽減” で勝ち筋を作る戦略です。

・複数ショット(腫瘍×自己免疫)の近接カタリスト
腫瘍側では「XmAb819(ENPP3×CD3)」の初回臨床データを今週公表(AACR-NCI-EORTC 2025)。RCC向けの “2+1” T細胞エンゲージャーという独自骨格で、オンコのオプション価値が明確化。

自己免疫側では前述の「XmAb942」Ph2b が動き始める段階。TL1A×IL-23 の次世代二重標的(bispecific)も2026年FIH予定とロードマップが示されています。

・資金体力(下値クッション)と非希薄化の手当て
2024年末時点で現金等$706.7Mを掲示(FIHアップデート資料)。23年には Ultomiris/Monjuvi の一部ロイヤルティをOMERSに売却し$215M受領、一方で将来の一部ロイヤルティ/マイルストンは継続する旨が開示されており、開発資金の見通しと “希薄化耐性” が評価されやすい構図。

・“Ph1 が多い→バリュエーション抑圧” ゆえの非対称性
目先は Ph1 主体でディスカウントされがちですが、クラス全体の追い風(他社のP2b/P3成功)×自社の差別化設計(曝露・投与間隔)×腫瘍の初期シグナルという “外部検証+内部カタリスト” の組み合わせ。

技術収益

抗体医薬をより良くする設計技術(IP/ノウハウ)をライセンス供与して対価を得るモデルです。XNCR の代表的な “技術/プラットフォーム” は次の2系統です。

・XmAb®(抗体Fc工学)
抗体のFc領域を改変して、免疫細胞との相互作用(ADCC等)や安全性/活性のプロファイルを最適化する設計技術(特定の結合性を上げたり下げたり、など)。

・Xtend™(半減期延長Fc)
抗体の血中滞在時間を伸ばす“Fc設計”で、投与間隔や曝露を改善し得る技術。

これらを提携先の抗体に組み込ませることで、XNCR は (1) upfront/ライセンス料 → (2) 開発・承認などの節目でマイルストン → (3) 上市後は売上ロイヤルティという形で収益を得ます。

「Monjuvi」追加承認でロイヤルティ/マイルストン拡大

Monjuvi/Minjuvi(一般名 tafasitamab)は、もともと XNCR で創製され、XmAb Fc技術が入っている薬です。提携先(当時MorphoSys、のち Incyte 等)が開発・販売し、XNCRは契約に基づき収益を受け取ります。

実際に、2025年の適応拡大(濾胞性リンパ腫:FL)に関連して、XNCR は2025年2月:sBLA受理で $12.5M マイルストン、2025年6月:FDA承認で $25.0M マイルストンを受領したことが開示されています。

さらに、適応が増える=薬の売上母数が増える可能性があり、ロイヤルティ(売上連動)も増え得る、という意味で「追加承認などで拡大」と表現されます。

自社プラットフォーム

XNCR は、Fc工学(XmAb/Xtend)に加えて、自社開発でも

・二重特異抗体(T cell engager 等)
・共刺激(CD28系など)を含む設計コンセプト

など、抗体を “モジュール的に設計する” 領域に強みがあります(社内パイプラインもこの延長線)。

パートナー/ロイヤリティ
パートナー プログラム XmAb技術 適応(例) ステータス ロイヤルティ目安 潜在マイルストン(最大) XNCRの見え方(要点)
Alexion(AstraZeneca) Ultomiris® Xtend™ PNH / aHUS / gMG / NMOSD Marketed Low SD All milestones paid 上市済みの安定ロイヤルティ(“年金”)。マイルストンは受領済み。
MorphoSys(※現Novartis傘下) Monjuvi® Cytotoxic DLBCL / FL Marketed High SD to Low DD Undisclosed 既存収益源。売上規模は限定でも継続ロイヤルティが入る。
Amgen Xaluritamig 2+1 Bispecific Prostate cancer Phase 3 Mid SD $225 million P3~承認で大きめのマイルストン+ロイヤルティ。上方オプションの柱。
Zenas BioPharma Obexelimab Immune Inhibitor IgG4-RD / RMS / SLE Phase 3 Mid SD to Mid Teen $460 million* 売上がニッチでも「承認=大型マイルストン」が効く。ロイヤルティレンジも高め。
VIR Tobevibart Cytotoxic & Xtend Hepatitis Delta Phase 3 Low to Mid SD $75 million P3段階でイベント近め。中規模だが“現金化”が見える案件。
Astellas ASP2138 2+1 Bispecific Gastric/GEJ cancer Phase 1 High SD to Low DD $232.5 million 早期だが当たれば取り分が大きい(高めロイヤルティ+大型MS)。
Johnson & Johnson Innovative Medicine JNJ-9401 Bispecific PSMA × CD3 (Prostate cancer) Phase 1 High SD to Low DD Undisclosed; $440 million (under collaboration) “非開示=天井が高い”タイプ。J&J案件は長期オプションとして価値。
Johnson & Johnson Innovative Medicine JNJ-1493 Bispecific CD20 × CD3 (Heme-Onc) Phase 1 High SD to Low DD Undisclosed; $363.3 million (under collaboration) J&Jの2本目オプション。分散が効き、成功時のアップサイドが大きい。

表は、Xencor(XNCR)が自社の「XmAb®」抗体工学(主に Fc 改変)をパートナーに提供し、承認マイルストン+売上ロイヤルティを得る “技術収益モデル” を一覧化したものです。

承認済み製品 / 現状

承認済み製品:なし(開発中)

主力候補:XmAb819(ENPP3×CD3 T細胞エンゲージャー)— 腎細胞がん(ccRCC)を対象。

補足:XmAb808(B7-H3×CD28 共刺激、pembro併用P1)、XmAb541(CLDN6×CD3 TCE)、XmAb942(抗TL1A;UC/CD想定)が続く。

主要臨床成績
Q4 2025
XmAb819 初回P1用量漸増データ(学会)

Q4 2025
XmAb942 UC向けP2b(XENITH-UC)開始

2026
XmAb942 P2b 進捗/トップライン時期ガイダンス更新

〜2028
手元資金ランウェイ見通し(会社開示)

臨床試験パイプライン
Phase 1
XmAb819(ENPP3×CD3|ccRCC)

対象:腎細胞がん(特にccRCC)

作用:2+1型T細胞エンゲージャー(ENPP3標的)

進捗:用量漸増中(拡大型計画)
次読出し:Q4 2025 初回データ(学会)

Phase 1(併用)
XmAb808(B7-H3×CD28|固形がん)

対象:B7-H3高発現固形腫瘍(Keytruda併用)

作用:CD28共刺激付与の二重特異抗体

進捗:pembro併用の用量漸増完了
方針:CD3系TCEとの併用含む次段を評価

Phase 1
XmAb541(CLDN6×CD3|固形がん)

対象:CLDN6陽性固形がん(卵巣がん 等)

作用:CLDN6標的T細胞エンゲージャー

進捗:FIH用量漸増中
次読出し:拡大型初期データの更新に注目(2026想定)

FIH(完了)→ Phase 2b 準備
XmAb942(抗TL1A|UC/CD)

対象:炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎/クローン病想定)

作用:高効力・長半減期TL1A抗体

FIH所見:安全性良好・用量依存PD(循環TL1A上昇)
次ステップ:Q4 2025 UC P2b開始(維持12週間隔を検証)

パイプライン早見表
パイプライン 対象 臨床フェーズ 規制デザイン 安全性(AESI) 用法・用量 / 併用戦略 市場規模イメージ ポイント(市場評価)
XmAb819(ENPP3×CD3) 腎細胞がん(ccRCC) Phase 1 適応探索型 P1(用量漸増→拡大) サイトカイン関連・肝酵素・腎関連イベントを重点監視 単剤→将来はVEGF/IO等との併用探索余地 中〜大:腎がん Q4 2025初期データで活性/安全性のバランスを評価
XmAb808(B7-H3×CD28) 固形がん Phase 1(併用) pembro併用P1(拡大型の新規開始は見送り) 免疫活性化に伴う免疫関連事象を監視 CD3系TCEとの生物学的併用シナジーを検証 中:横断的固形腫瘍 “シグナル2”付与で深い反応を狙う差別化設計
XmAb541(CLDN6×CD3) CLDN6陽性固形がん(卵巣がん 等) Phase 1 FIH P1(用量漸増→拡大) サイトカイン/肝機能/腫瘍炎症反応を監視 単剤→化療/ADC等との併用仮説 中:分子選択適応 患者選抜(CLDN6発現)で有効性最大化に期待
XmAb942(抗TL1A) UC/CD FIH完了 → Phase 2b 準備 UC P2b(XENITH-UC)開始予定(維持Q12週) 感染・肝酵素・消化器症状等を監視 皮下投与想定。生物学的製剤との位置づけ最適化 大:炎症性腸疾患 長投与間隔とPD強度でクラス差別化

ポイント
  • 技術収益の安定性:Monjuvi®追加承認などでロイヤルティ/マイルストンが拡大、内部開発の資金基盤を補強。
  • 3軸集中:TCE(819/541)×CD28共刺激(808)×TL1A(942)にリソース配分を最適化。
  • 資金余力:会社ガイダンスで〜2028までのランウェイ見通し。

ファンドのポジション

主要ファンド/戦略保有の動向や売買フローを追記(必要に応じて更新)。

開発ロードマップ
完了:2025年Q1

ポートフォリオ再編(vudalimab 終了)

パイプラインをTCE/共刺激/TL1Aの3軸に集約。

2025年Q4

XmAb819 初回P1データ

安全性・初期活性・拡大型設計をアップデート。

2025年Q4

XmAb942 UC P2b(XENITH-UC)開始

維持Q12週の実用的投与設計を検証。

2026年Q1–Q2

XmAb942(anti-TL1A):健常人Phase 1 最終結果

XmAb942(Xtend™ anti-TL1A)の健常人Phase 1試験について、最終結果を開示(会社計画)。IBD(UC)で進行中のPhase 2b「XENITH-UC」の基礎データとして注目。

2026年Q1–Q2

XmAb412(TL1A × IL23p19):前臨床データ(characterization)提示

TL1A×IL23p19 二重標的のXmAb412について、前臨床での特性評価データを提示(会社計画)。

2026年(Q未定)

XmAb819(ENPP3 × CD3):腫瘍拡大コホート開始

XmAb819(ccRCC向けTCE)で、CRC/NSCLC/pRCCの腫瘍拡大コホートを2026年中に開始(会社計画)。

2026年Q3–Q4

XmAb819(ENPP3 × CD3):推奨Phase 3用量を裏付ける新規臨床データ

ccRCCのPhase 1から、推奨Phase 3用量(RP3D)設定を支える新規臨床データを2H26に提示(会社計画)。安全性レンジと抗腫瘍活性(反応率/病勢制御など)の両面が焦点。

2026年Q3–Q4

XmAb541(CLDN6 × CD3):推奨Phase 3用量を裏付ける新規臨床データ

婦人科がん・胚細胞腫瘍を対象とするXmAb541で、推奨Phase 3用量(RP3D)設定を支える新規臨床データを2H26に提示(会社計画)。

2026年Q3–Q4

Plamotamab(CD20 × CD3):RA Phase 1b 進捗アップデート

関節リウマチ(RA)向けのPhase 1b(PoC)試験について、進捗アップデートを2H26に提供(会社計画)。

2026年Q3–Q4

XmAb657(CD19 × CD3):IIM Phase 1 進捗アップデート

特発性炎症性筋疾患(IIM)向けのPhase 1(PoC)試験について、進捗アップデートを2H26に提供(会社計画)。

2026年Q3–Q4

XmAb412(TL1A × IL23p19):First-in-Human(FIH)試験開始

XmAb412のFIH試験を2H26に開始(会社計画)。IBD/炎症領域での“1剤で2経路”の実臨床適用(用量・併用不要の設計思想)が次の論点。

2026年Q4

XENITH-UC(XmAb942:UC Phase 2b):年末に進捗アップデート

UC Phase 2b「XENITH-UC」について、2026年末頃に進捗アップデートを提供(会社計画)。登録状況・運用上の進捗が主眼になりやすい点に留意。

2027年(Q未定)

XmAb819(ENPP3 × CD3):ccRCC ピボタル試験開始

ccRCCでXmAb819のピボタル試験を2027年中に開始(会社計画)。

2027年(Q未定)

XmAb541(CLDN6 × CD3):ピボタル試験開始

XmAb541のピボタル試験を2027年中に開始(会社計画)。

注目すべきカタリスト
短期(〜2025年Q4)
XmAb819 初回P1データ、XmAb942 UC P2b開始、技術導出によるマイルストン収入の更新

中期(2026)
XmAb942 P2b進捗、XmAb808/541 の開発方針アップデート

長期(2026以降)
XmAb942 P3設計確定、腫瘍領域TCE群の拡大型データ