
24年〜25年、これまでを振り返り
2024年〜2025年前半:
伝染性軟属腫(モルスクム)向けの HCP 施行型トップカル治療薬「YCANTH」承認済みだけど、立ち上がりが想定より地味 + OrbiMed のデット(コベナンツ付き)+追加資金需要への懸念で、3〜6ドル台レンジをうろうろしていた時期が長い。
2025年秋〜初冬にかけて、ポジティブ IR が連続:
・9/19:鳥居薬品が日本で「YCANTH」承認(TO-208)
・10/20:EMA が「追加 Ph3 なしで EU MAA 出せる」と前向きフィードバック
・11/10:VP-315 Ph2 BCC データを SITC で発表(高い完全クリアランス+安全性)
・11/14:Q3 2025 決算で「YCANTH」の出荷アプリケーター数が前年から大きく伸長
そして 11/24:$50M PIPE を発表
・OrbiMed ローンを $35M で全額返済+コベナンツ解消
・キャッシュ・ランウェイを2027年半ばまで延長と明言
・このニュースで、発表当日に株価 +8〜9% くらい急伸したと報道されています。
以上のように、24年7月以降くすぶっていた株価が、2025年11月の $50M PIPE+デット返済で、「資金・バランスシート懸念が一気に剥がれて再評価され始めた」という段階です。
10〜11月は「日本承認」「EU 規制パス」「VP-315 データ」「Q3 決算」→「PIPE」と、好材料ラッシュの “最後のピース” として PIPE が乗ってきた形です。
特に OrbiMed のデット+コベナンツは中小バイオにとってかなり重いので、それが一気に消えたインパクトは大きいです。
「FDA 承認薬ゼロ市場+7年独占」と商業フェーズ評価
モルスクムは患者数多いのに “FDA 承認薬ゼロ” だった領域で、「YCANTH」は初の FDA 承認治療。しかも HCP 施行型のドラッグ・デバイス製品で、従来の “院内コンパウンド cantharidin” より規格化・再現性・保険償還の点で圧倒的に扱いやすいポジション。
「YCANTH」は NCE(New Chemical Entity)ステータス取得済みで、→ 最低 5 年間の規制独占を確保。さらに pediatric exclusivity(+6か月)を狙える構造、かつオレンジブック上の特許は2034–2041年頃まで残る見込み。
売上のある皮膚科スペシャリティファーマ
・2023年7月:YCANTH 米国承認・ローンチ
・2024–2025年:YCANTH 売上が四半期ごとに積み上がり、
・2025年はアプリケーター出荷数が前年から 2倍以上に増加。
・2025年9月:日本承認(鳥居経由)で ex-US 商業化スタート。
・2025年10月:EU MAA 申請に向けて EMA からゴーサイン。
以上のように、VRCA はすでに「売上のある皮膚科スペシャリティファーマ」 +「common warts Ph3 & VP-315 BCC pre-Ph3」という商業フェーズ+レイトステージ開発のミックスに入っている会社です。
投資家の見方
ベースライン:
・YCANTH モルスクム(US/JP→将来EU)の売上トラジェクトリ
オプション価値:
YCANTH common warts(巨大未充足市場のラベル拡張)
・VP-315 BCC(オンコリティックペプチドで “皮膚がん版 YCANTH” のようなポジション狙い)
YCANTH の商業性:
・“承認薬ゼロ”のモルスクム市場における 初の FDA 承認薬。
・5〜7年規模の規制独占+2030年代半ばまでの特許バリアで、きれいな商業ウィンドウが見えるプロファイル。
・すでに米国・日本で売上が立っており、
あとは、「モルスクム売上がこのままどこまで伸びるか」、「common warts / VP-315 のどちらが先に大きめのバリューメイクをするか」をどう織り込むかで、バリューのレンジが決まってきます。
common warts:本当に “爆発” するのはこっちかも
・米国で年間 ~2,200万症例と言われる巨大市場
・FDA 承認薬ゼロという点ではモルスクム以上においしい
・しかも「YCANTH」と同じカンタリジン 0.7% プラットフォームでいける
もし「common warts」でも「YCANTH」がラベルを取ると:
医師側から見ると
→ 「ウイルス性いぼ系は YCANTH ファミリーでほぼ全部カバー」
Verrica 側から見ると
→ 1つのセールスフォースで複数適応を売れるレバレッジ
投資家から見ると
→ モルスクム売上に “pure upside” で common warts が乗る構造
になるので、「モルスクム市場で強気」どころか、“ウイルス性いぼ全体で「YCANTH」がプラットフォーム化する” シナリオには
相当なアップサイドがあります。
リスク
「common warts」Ph3 がきちんと成功すること、保険償還・価格・実際の処方習慣が想定通り動くこと、という実行リスクはまだ残っているので、「ストーリーとしてはかなり強いが、valuation ではちゃんとディスカウントを置いておく」ことを忘れずに。
2025年11月:$50M のプライベート・プレースメントを発表し、OrbiMed からのデットを全額返済。キャッシュランウェイを2027年半ばまで延伸。
2025年11月:VP-315(ruxotemitide)Phase 2 BCC 試験の詳細データを SITC 2025 で発表(組織学的 CR 51%、ORR 97%、安全性良好)。
2025年11月:FY2025 Q3決算と事業ハイライトを公表(YCANTH 出荷 37,642 アプリケーター、前年比 +120%、YCANTH Rx 計画、common warts Ph3 の進捗など)。
2025年9月:日本でモルスクム向け YCANTH(TO-208)が承認され、鳥居薬品から $10M のマイルストン受領。
2023年11月:common warts 向け pivotal Phase 3 の開発デザインについて FDA Type-C ミーティングで合意。
2023年7月:YCANTH(VP-102)が米国で伝染性軟属腫(モルスクム)向けに FDA 承認(2歳以上対象・初の HCP施行型治療)。
承認済み製品:あり
主力製品:YCANTH(VP-102:カンタリジン 0.7% 外用)— 伝染性軟属腫(モルスクム)向けの HCP 施行型トップカル治療薬。
補足:2023年7月に米国で FDA 承認・上市済み、2025年9月に日本(鳥居薬品 TO-208)でも承認。欧州は既存 Ph3 データでの MAA 申請準備段階。一方で、VP-315(ruxotemitide:腫瘍内投与オンコリティックペプチド)は非メラノーマ皮膚がん向けに Phase 3 直前フェーズ。
対象:伝染性軟属腫(molluscum contagiosum)— 2歳以上の小児・成人
作用:カンタリジン 0.7% 外用(HCP施行型ブリスター形成薬)
対象:尋常性疣贅(common warts)— 小児・成人のウイルス性いぼ
作用:カンタリジン 0.7% 外用(YCANTH と同一成分を common warts に適応拡大)
対象:基底細胞がん(Basal Cell Carcinoma)など非メラノーマ皮膚がん
作用:腫瘍内投与オンコリティックペプチド(免疫原性細胞死を誘導し TME を “ホット” 化)
対象:外陰部疣贅(HPV 関連)
作用:カンタリジン 0.7% 外用
対象:足底疣贅(plantar warts)
作用:第2世代カンタリジン製剤(足底向け改良フォームを想定)
| パイプライン | 対象 | 臨床フェーズ | 規制デザイン | 安全性(AESI) | 用法・用量 / 併用戦略 | 市場規模イメージ | ポイント(市場評価) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| YCANTH / VP-102(モルスクム) | 伝染性軟属腫(molluscum contagiosum)— 小児・成人 | 承認済み(US/JP)・EU は MAA 準備 | US/NDA 承認済み、JP/承認済み、EU は既存 Ph3 データ+安全性パッケージで MAA 提出予定 | 主に局所反応(紅斑、水疱、疼痛)。全身性 AESI は限定的 | HCP施行のスポット塗布(カンタリジン 0.7%)。将来的には common warts 等へのラベル拡張を想定 | 中〜大:モルスクム患者は米国だけで数百万人規模 | 既に売上立ち上がり中で、YCANTH Rx・地理拡大(EU)が中期のバリューアップ要因 |
| YCANTH / VP-102(common warts) | 尋常性疣贅(common warts) | Phase 2 完了 → Global Phase 3 準備 | pivotal Phase 3 を 2 試験実施予定(US/JP を含むグローバル試験、FPI 目標:2025年Q4) | モルスクム適応と同様に局所反応が中心。小児患者での安全性・忍容性を継続監視 | HCP施行の外用単剤。将来的に他の局所治療(凍結療法等)との使い分けやシークエンシャル使用が検討余地 | 大:米国で年間 ~2,200万症例と推定される最大級の未充足ニーズ領域 | YCANTH の “第2の柱”。Phase 3 成否が中期の株価レバーになる可能性が高い |
| VP-315(ruxotemitide:BCC) | 基底細胞がん(Basal Cell Carcinoma)など非メラノーマ皮膚がん | Phase 2 PoC 完了 → Phase 3 直前 | FDA とプラセボ対照 Phase 3(2 試験×各 ~100 症例、主要評価項目:Week14 CR 率)で合意 | 治療関連 SAE なし。局所投与に伴う疼痛・炎症反応を中心にモニタリング | 腫瘍内投与。将来的には皮膚科外科治療とのシークエンス、免疫チェックポイント阻害薬との併用などを検討 | 中:NMSC(BCC/SCC)は発生数が極めて多い一方、外科治療が標準のためポジショニング次第 | 高い CR/ORR に加え、美容・機能面のアウトカムが差別化キー。成功時にはニッチだが高単価市場を狙える |
| YCANTH / VP-102(external genital warts) | 外陰部疣贅(HPV 関連) | Phase 2 完了(追加開発検討中) | CARE-1 Phase 2 でポジティブデータ。現時点で Phase 3 の具体的スケジュールは未公表 | 局所反応に加え、粘膜領域特有の疼痛・刺激感が AESI としてフォーカスされる可能性 | HCP施行外用単剤。既存治療(イミキモド、冷凍療法など)との比較で利便性・有効性の優位性を示す必要 | 中:既存治療があるが再発・忍容性の課題が残る領域 | 開発優先度は現状低めだが、YCANTH プラットフォーム活用による中長期オプション |
| VP-103(plantar warts) | 足底疣贅(plantar warts) | Pre-IND / 開発保留 | 現時点で新たな臨床試験開始計画なし(タイミング未定) | 足底の厚い角質層に対するブリスター形成による疼痛・歩行障害などが AESI 候補 | 足底向け改良フォームの外用単剤を想定。物理療法との併用・シークエンスが将来の検討ポイント | 中:患者数は多いが、疼痛・歩行への影響から利便性の高い治療ニーズは高い | 短期のバリューには直結しないが、YCANTH プラットフォームの拡張先としてオプション価値を持つ |
- 2本柱+オプション構造:承認済み YCANTH(モルスクム)による収益基盤と、late-stage の VP-315(BCC)が VRCA の2本柱。VP-103 や external genital warts は休眠中のオプションとして残る。
- 皮膚科特化のレイトステージ・パイプライン:YCANTH common warts はグローバル Phase 3 立ち上がり、VP-315 は Phase 3 直前と、いずれも規制面で前に出ているプログラム。
- 財務余力:$50M PIPE によりデットを返済し、キャッシュランウェイは2027年Q2 頃まで確保とガイダンス。追加エクイティ希薄化リスクが後ろにずれたことで、開発・商業実行に集中しやすい構造。
- リスク:実質的には YCANTH(モルスクム+common)と VP-315 の “2.5 本立て” であり、横方向の分散は限定的。YCANTH モルスクムの売上トレンドが期待を下回る場合、common warts / VP-315 の結果が出るまで「谷」の期間が生じる可能性。
VRCA は既に商業フェーズに入っている小型デジーズ・スペシフィック皮膚科銘柄であり、一般的に以下のような投資家構成になりやすいと考えられます:
- 専門バイオファンド:late-stage / コマーシャルバイオに強いロングオンリーファンドが、中期(2〜4年)スパンで YCANTH の売上成長と VP-315 のオプション価値を評価して入るケースが多い。
- イベントドリブン型:common warts Global Phase 3 のトップラインや VP-315 Phase 3 開始前後で、イベント狙いのヘッジファンドがポジションを積み増す可能性。
- 政策金利環境との関係:キャッシュランウェイが mid-2027 まで確保されているため、マクロ金利による即時の増資圧力は限定的。一方で、売上トラジェクトリや Phase 3 デザインのアップデートによってバリュエーションレンジが大きく振れうる銘柄。
実際の 13F/13G ベースの保有状況は四半期ごとに変動するため、直近のファイリングをチェックし、「誰がどのタイミングで増減しているか」をイベント前後で追うのが有効です。
YCANTH モルスクム(US)FDA 承認
2歳以上の伝染性軟属腫を対象に、初の HCP施行型カンタリジン外用薬として承認。YCANTH ブランドによる商業フェーズがスタート。
YCANTH common warts Phase 3 デザインで FDA と合意
Type-C ミーティングを通じて、pivotal Phase 3 のデザイン(評価項目、試験数など)について FDA とアラインメントを取得。
日本での YCANTH(TO-208)承認 + VP-315 Phase 2 PoC 確立
鳥居薬品との提携下で TO-208 が承認され、$10M マイルストンを受領。VP-315 は BCC を対象とした Phase 2 で高い CR/ORR と良好な安全性を示し、PoC を確立。
YCANTH Rx ローンチ & VP-315 免疫解析データ
YCANTH Rx モデルを導入し、保険確認・PA・コペイ支援などを一括処理することで処方摩擦を低減。VP-315 Phase 2 のゲノム・免疫応答解析もこの時期に詳細開示が見込まれる。
YCANTH common warts Global Phase 3 登録本格化
2025年Q4 までの US FPI を目標とし、その後 2026年を通じて登録・サイト追加が本格化。途中で登録進捗や安全性アップデートが想定される。
VP-315 Phase 3 開始 → トップラインデータ
2026年中の Phase 3 開始を目指し、2 試験×100 症例規模のプラセボ対照試験を実施。主要評価項目は Week14 の完全組織学的クリアランスで、トップラインは 2028年以降の読み出しを想定。
YCANTH Rx ローンチ、VP-315 Phase 2 免疫解析の詳細開示、common warts Global Phase 3 の US FPI 達成
YCANTH モルスクム(US/JP)の売上トレンド、EU での MAA 提出・受理、common warts Phase 3 登録進捗、VP-315 Phase 3 開始と初期安全性アップデート
YCANTH common warts Phase 3 トップライン(2027〜2028年想定)、VP-315 Phase 3 トップライン(2028年以降想定)、それに続く sNDA/NDA 申請・承認と、地理的拡大・パートナーシップによる非希薄化資金流入
