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【SABS】SAB Biotherapeutics カタリストとロードマップ

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【SABS】SAB Biotherapeutics カタリストとロードマップ

SAB BIO (SABS) は、ヒトドナーや回復期血漿を必要とせずに、ヒト由来の多特異性・高力価免疫グロブリン(IgG)を用いて免疫・自己免疫疾患の治療および予防を目指す、臨床段階のバイオ製薬企業です。

同社のリード資産「SAB-142」は、自己免疫性1型糖尿病(T1D)を対象に、疾患修飾を狙う治療アプローチで、発症の遅延や病勢進行の抑制によって T1D の治療パラダイムを変えることを目指しています。

SAB BIO は、先端的な遺伝子工学と抗体科学を用いて、ヒト人工染色体を有する唯一のトランスジェニック動物「Transchromosomic(Tc)Bovine™」を開発。

これにより、回復期血漿やヒトドナーを用いることなく、特異性の高い多様なレパートリーの高力価ヒト IgG を産生できる創薬・生産システムを確立し、幅広い深刻なアンメットメディカルニーズに応えることを可能にしています。

2025年7月の株価急騰

2025年7月21日の $175M のオーバーサブスクライブ私募(Private Placement)発表が直接のトリガーとなりました。発表当日、株価が6ドル半まで急騰しました。

ディールには RA Capital(リード)、Sanofi など著名投資家が参加し、さらに最大$284M相当のワラント条項が付いた “資金面の大型デリスク” として受け止められました。

あわせて、この資金でT1Dの「SAB-142」のP2b(SAFEGUARD)をフルファンド、という使途が明確だった点も好感材料でした(同日付リリース)。

補足として、同年1月28日の「SAB-142」P1トップライン良好の会社開示が “土台” になっており、7月の大型資金調達で「臨床と資金の両輪がそろった」ことが7月急騰の文脈です。

「SAB-142」P2b(SAFEGUARD)のデータは27年末以降

主力「SAB-142」P2b(SAFEGUARD)のデータ時期は、登録プランと主要評価項目(12か月のMMTT刺激CペプチドAUC)から逆算して、会社登録情報ではプライマリ完了は2027年11月、試験完了は2028年12月と見積もられています。

したがってトップラインは概ね2027年末〜2028年初が目安です

承認済み製品 / 現状

承認済み製品:なし(開発中)

主力候補:SAB-142(完全ヒトATG|Tc Bovine™由来ポリクローナルIgG)— 新規発症1型糖尿病(T1D)を対象。

補足:SAB-176(インフルエンザA/B向け 完全ヒトポリクローナルIg、Breakthrough & Fast Track 指定)。

主要臨床成績
Q3 2025
SAB-142 P2b(SAFEGUARD)開始(FPI)

Q4 2025
SAB-142 P1 最終データ(健常+T1Dコホート)公表

Q3 2025
EASD 2025:SAB-142 に関する口演/招待講演を発表

2028
資金の目処(私募調達によりランウェイ延伸)

臨床試験パイプライン
Phase 2b(開始)
SAB-142(T1D:新規発症 5–40歳)

対象:Stage 3 の新規発症 1型糖尿病

作用:完全ヒトATG(多特異性ポリクローナルIgG)

進捗:FDA Type B 面談で設計合意→Q3 2025 に SAFEGUARD 開始
安全性/PD:P1 で免疫学的効果の持続を確認(リンパ球枯渇を伴わない調整)
次読出し:P1 最終データを Q4 2025 公表予定

Phase 1/2(完了)→ 次段階検討
SAB-176(インフルエンザA/B)

対象:インフルエンザによる重症化予防/治療

作用:完全ヒトポリクローナルIg(Tc Bovine™)

エビデンス:P1/2 で良好な安全性・有効性シグナル
規制指定:FDA Breakthrough / Fast Track
体制:当面は SAB-142 を優先、次段階は会社方針待ち

パイプライン早見表
パイプライン 対象 臨床フェーズ 規制デザイン 安全性(AESI) 用法・用量 / 併用戦略 市場規模イメージ ポイント(市場評価)
SAB-142(完全ヒトATG) 新規発症 1型糖尿病(Stage 3, 5–40歳) Phase 2b(SAFEGUARD) FDA Type B 面談で設計合意/ランダム化・二重盲検・プラセボ対照 ATGクラス留意:輸注反応、感染/好中球減少、肝酵素上昇 などを重点監視 短期コース静注(再投与可能性の検討)/既存標準治療との併用管理 大:T1Dは慢性・若年発症で患者数が多い ウサギATG外部P2(MELD-ATG)の陽性でMOA妥当性を補強/完全ヒト化で安全性プロファイルの改善期待
SAB-176(完全ヒトポリクローナルIg) インフルエンザ A/B の重症化予防/治療 Phase 1/2(完了)→ 次段階検討 FDA Breakthrough / Fast Track 輸注反応、過敏症、感染イベントを標準的に監視 静注。高リスク群での季節前投与や早期治療の最適化を検討 大:季節性需要+パンデミック備蓄のポテンシャル プラットフォーム量産性(ドナー不要)で需給対応力に優位性

ポイント
  • 疾患修飾の狙い:ATGクラスの外部陽性試験(MELD-ATG)で概念実証、完全ヒトATGで再投与や安全性最適化の余地。
  • 資金面の明確さ:私募で約$175Mを調達し、2028年までの運転資金目処(P2b 完遂までフルファンド)。
  • 選択と集中:短中期は SAB-142 へリソース集中、SAB-176 は規制指定を背景に選択的に次段階を検討。

ファンドのポジション

公開情報ベースでは大手の持分開示は限定的。一方、戦略投資家(Sanofi)参加の私募は外部バリデーションとして評価材料。必要なら直近の13F/13G更新を追補します。

開発ロードマップ
完了:Q2 2025

FDA Type B 面談(SAB-142)

P2b(SAFEGUARD)の設計・進行に合意。

Q3 2025

SAB-142 P2b 開始(FPI)

新規発症T1D(5–40歳)対象のランダム化二重盲検試験を開始。

Q3 2025

EASD 2025 発表

SAB-142 の免疫学的持続効果などに関する口演/招待講演を実施。

Q4 2025

SAB-142 P1 最終データ

健常者+T1Dコホートの最終結果を公表予定。

注目すべきカタリスト
短期(〜Q4 2025)
SAB-142 P2b 開始進捗、P1 最終データ、学会露出の拡大

中期(2026〜)
SAB-142 の登録状況アップデート/SAB-176 の次段階方針

長期(〜2028)
資金ランウェイ内での主要読出し・パートナーリング機会