
KCC2 の “凄さ” は本物
Ovid の KCC2 は、神経の抑制(GABA の抑制性)を効かせる上で重要な KCC2 を “直接活性化” して、過興奮を落ち着かせるという発想です。学術的にも KCC2 はてんかん領域で有望な標的として議論されています。
直近アップデート(ポジティブ寄り)
・OV350(IV)Ph1:健康成人で 安全性/忍容性/PK の主要目的は達成、qEEG で中枢作用を示唆する所見、そしてこの結果が 経口KCC2(OV4071など)を前に進める根拠という位置づけ。
・会社は OV4071(経口)を2026年Q2に臨床入りさせるガイダンス。
ただし注意点(ここが投資のキモ)
・OV350 は “道具(tool program)” 扱いで、これ自体を前に進めないと言っています。
・Ph1で見えた有害事象として 頭痛が多く、頭痛に伴う悪心/嘔吐が一部あり、「OV350固有のオフターゲットっぽい」との説明。
・何より まだ患者での有効性はゼロ。KCC2 が “ゲームチェンジャー” になるかは、OV4071(経口)の患者PoCが出るまで保留です。
「てんかんゲームチェンジ」狙いなら、実はもう1本の柱がある:OV329
Ovid のパイプラインを見ると、てんかん(薬剤抵抗性の局在発作)に直球なのは OV329(GABA-aminotransferase阻害)で、すでに Phase 1 にあります。
一方 KCC2 の臨床上の “当面の主戦場” は、会社の記載上は パーキンソン病/レビー小体型認知症の精神病症状、統合失調症、不安障害やRett症候群など(まず精神・神経症状を狙う構図)。
投資家目線
・強気シナリオ
OV4071 が「中枢で効いてる」だけでなく、患者で症状/客観指標の改善を示す。KCC2 が “新しいクラス” として成立 → 他適応へ水平展開(ここがプラットフォーム価値)
・弱気シナリオ
OV4071 で 安全性/忍容性が詰まる、あるいは 患者PoCが弱い。S-3オーバーハングで株価が上に行きにくいなど。
・2026年が勝負年
会社自身が、OV4071(経口KCC2)と OV329(てんかん)の臨床マイルストンを2026に並べているので、2026年のデータが勝負になります。
2025年11月12日:Q3 2025決算&事業アップデートを発表。パイプライン(OV329 / OV350 / OV4071)の節目を更新、資金繰りは2028年後半(2H 2028)までの見通しを提示。
2025年10月3日:次世代 GABA-AT阻害薬 OV329のPhase 1トップライン(バイオマーカー&安全性)を発表。2026年Q2のPhase 2a開始に向け前進。
2025年3月11日:OV350(KCC2 direct activator)のPhase 1(FIH)開始を含む事業アップデートを発表。
2025年1月30日:武田が soticlestat(TAK-935)の開発中止を発表(Ovidは過去に経済的持分を保有していたが、現在の価値ドライバーは自社パイプライン側に集中)。
承認済み製品:なし(開発中)
主力候補:OV329(GABA-AT阻害・抗てんかん)+ KCC2 direct activator ポートフォリオ(OV350/OV4071/OV4041)。
補足:旧プログラム soticlestatはパートナー側で開発中止(2025年1月)。現在は 「てんかん」×「KCC2(神経過興奮のブレーキ再構築)」に集中するCNSバイオ。
対象:薬剤抵抗性・成人焦点発作(FOS)
作用:GABA-aminotransferase(GABA-AT)阻害(抑制性神経伝達GABAの“最適化”を狙う)
対象:健常人(FIH)
作用:KCC2 direct activation(神経の興奮/抑制バランスを“ブレーキ側”へ)
対象:精神病性症状(Parkinson’s disease psychosis / Lewy body dementia / schizophrenia 等を想定)
作用:KCC2 direct activation(経口)
対象:全般性不安障害(GAD)、Rett syndrome など(会社記載の想定)
作用:KCC2 direct activation(経口)
| パイプライン | 対象 | 臨床フェーズ | 規制デザイン | 安全性(AESI) | 用法・用量 / 併用戦略 | 市場規模イメージ | ポイント(市場評価) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| OV329(GABA-AT阻害) | 薬剤抵抗性・成人焦点発作(FOS) | Phase 1 → Phase 2a 準備 | Phase 1(HV)→ Phase 2a(患者、抗発作効果の初期検証)を 2026年Q2 目安で開始 | クラス留意:GABA系の中枢副作用(眠気/めまい等)と、既存GABA-AT(vigabatrin)で問題となった眼科安全性は重点監視 | 経口(QD想定)。標準ASMに対する上乗せ/置換の探索余地 | 大:てんかん(薬剤抵抗性は未充足が大きい) | 「新規MoA×安全性差別化」が通ると評価が変わる。 Phase 2a開始目安:2026年Q2 |
| OV350(IV / KCC2 direct activator) | FIH(健常人) | Phase 1 | Phase 1(安全性/忍容性/PK)→ KCC2機序の臨床土台づくり | 中枢ターゲット:鎮静、神経学的所見、心電/肝酵素など一般項目を広く監視 | IV。まずは安全性/PK→次に適応別の開発戦略を構築 | 中〜大:中枢領域(適応でレンジが大きい) | KCC2ストーリーの“最初の人データ”。 トップライン:2025年Q4 |
| OV4071(oral / KCC2 direct activator) | PDP / LBD / SCZ ほか精神病性症状 | 前臨床 → Phase 1(計画) | 規制当局提出&クリアランス(2026年Q1)→ Phase 1(HV、2026年Q2)→ PoM(ketamine、2026年Q3)→ 患者Phase 1b(2026年Q3) | 抗精神病領域:鎮静、認知/運動機能、QTc、代謝イベント等を重点監視 | 経口。単剤PoC→将来は標準治療との併用/差別化を探索 | 大:精神疾患(適応が当たると巨大) | 「機序が臨床で刺さるか」を示せると提携/再評価が起きやすい。 トップラインPoC:2027年Q1 |
| OV4041(oral / KCC2 direct activator) | GAD / Rett syndrome など | 前臨床(IND-enabling) | IND-enabling(2025年Q4目安)→ IND提出(2026年Q4目安) | 慢性投与前提:中枢AESI(鎮静/耐性/離脱など含む)を非臨床から精査 | 経口。慢性疾患での適応拡張の“横展開”要員 | 中〜大:不安/希少神経(適応別) | KCC2ポートフォリオの厚みを作る2本目以降の弾。 IND提出目安:2026年Q4 |
- 価値の芯:KCC2 direct activator(OV350→OV4071→OV4041)の「人データでの成立」。まずは 2025年Q4 のOV350が土台。
- 2つの時間軸:短期は OV350(Q4 2025)、中期は OV4071(2026年〜2027年Q1)、並走で OV329(2026年Q2〜)が“てんかん側の再評価”を狙う。
- 資金面:私募の初回資金等を加味したうえで、会社は 2H 2028 までのキャッシュランウェイを見込む(開発が長いCNSでは重要)。
- 旧収益権の扱い:soticlestatはパートナー側で開発中止(2025年1月)。今後の株価ドライバーは自社パイプラインの進捗が中心。
直近は「私募など資金調達でランウェイを延ばし、複数の臨床カタリスト(OV350→OV4071→OV329)を並走させる」設計になっています。
主要ファンドの保有状況(13F/13G)は四半期で大きく変わるため、直近の私募参加者・増減(新規/買い増し/売り抜け)・イベント前のポジションサイズを軸に見ていくのが実務的です。
OV350(IV / KCC2)Phase 1 初回投与開始
FIHで安全性/忍容性/PKの骨格を作るフェーズへ。
OV350 Phase 1 トップライン(目安)
安全性・忍容性・PKが最重要(KCC2ストーリー全体の土台)。
OV329(7mg)所見まとめ/OV4071 規制当局提出&クリアランス
OV329は次の患者試験へ向けた用量・曝露の整理、OV4071は臨床開始のゲート通過。
OV329 Phase 2a 開始/OV4071 Phase 1 開始
てんかん側は抗発作効果の初期シグナル、KCC2側は経口の安全性/PKへ。
OV4071 PoM(ketamine)/患者 Phase 1b 開始
「機序がヒトで刺さるか」を早期に確認し、次の投資/提携の材料へ。
OV4071 トップラインPoC(目安)
PDP/LBD/SCZのいずれかで“臨床的に意味ある動き”が出ると評価が変わりやすい。
OV329 Phase 2a トップライン(目安)
抗発作効果(差別化)×安全性プロファイルで、商業性の議論に入れるかが焦点。
OV4041 IND提出(目安)
KCC2ポートフォリオの“適応拡張・厚み”を作る次の弾。
OV350(KCC2)Phase 1 トップライン(安全性/PK)
OV329(7mg所見→Phase 2a開始)、OV4071(規制クリア→Phase 1→PoM/患者Phase 1b)
OV4071 トップラインPoC/OV329 Phase 2a トップライン/OV4041 IND→臨床入り
