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【NKTR】Nektar Therapeutics カタリストとロードマップ

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【NKTR】Nektar Therapeutics カタリストとロードマップ

ハイライト

2025年11月8日:中等症〜重症アトピー性皮膚炎を対象とした REZOLVE-AD Phase 2b の追加解析データを ACAAI 2025 で発表。16週主要評価項目達成に加え、24週クロスオーバーでも反応の深化を確認。

2025年11月6日:Q3 2025 決算を発表。現金・有価証券残高は約2.7億ドルとされ、現行のバーンレート前提でおおむね2027年頃までのランウェイをガイダンス。

2025年10月22日:REZOLVE-AD Phase 2b 16週結果が EADV 2025 の late-breaking に採択。EASI・vIGA・かゆみ指標など主要/副次評価項目でプラセボに対する有意差を報告。

2025年7月29日:重度〜最重度円形脱毛症を対象とする REZOLVE-AA Phase 2b に対し、FDA が Fast Track 指定を付与。12歳以上を対象としたレジストレーション志向の開発ルートを示唆。

2025年2月24日:国際ネットワーク TrialNet と協業し、新規発症 Stage 3 1型糖尿病を対象とした rezpegaldesleukin Phase 2 試験 を開始する契約を発表。

2025年2月10日:中等症〜重症アトピー性皮膚炎向け rezpegaldesleukin に対し、FDA から Fast Track 指定を取得。AD/AA の両適応で迅速審査ルートが確保される形に。

承認済み製品 / 現状

承認済み製品:なし(開発中)

主力候補:rezpegaldesleukin(REZPEG / NKTR-358、IL-2Rアゴニスト)— 中等症〜重症アトピー性皮膚炎(REZOLVE-AD, Phase 2b)、重度〜最重度円形脱毛症(REZOLVE-AA, Phase 2b)、新規発症1型糖尿病(TrialNet, Phase 2)など複数の自己免疫疾患で開発中。

補足:NKTR-255(IL-15Rアゴニスト、CAR-T/免疫チェックポイント阻害薬併用のオンコロジー・バックボーン:Phase 1/2 & Phase 2/3)、TNFR2関連抗体群(NKTR-0165/0166)および造血CSF改変タンパク(NKTR-422:いずれも前臨床)が続く。

主要臨床成績
2025年Q4
REZOLVE-AA Phase 2b トップライン(重度〜最重度円形脱毛症)読み出し予定

2026年Q1
REZOLVE-AD Phase 2b 52週長期維持パートの主要データ(中等症〜重症AD)

2027年〜
NKTR-255 を用いたオンコロジー試験群(LBCL/NSCLC等)の主要有効性指標読み出しレンジ

2027年目安
Q3’25 時点開示ベースの運転資金ランウェイ

臨床試験パイプライン
Phase 2b(完了)→ Phase 3 計画
rezpegaldesleukin:REZOLVE-AD(アトピー性皮膚炎)

対象:中等症〜重症アトピー性皮膚炎(成人、バイオ/JAK naïve)

作用:IL-2受容体選択的刺激による Treg 増加・機能亢進

進捗:Phase 2b 誘導16週で主要・主要副次評価項目を達成、24週クロスオーバー解析でも反応の深化を確認
安全性/PD:これまでの試験で Treg の用量依存的増加と良好な安全性プロファイルを確認
次読出し:2026年Q1 の52週維持データ → End-of-Phase 2 ミーティングを経て Phase 3 へ

Phase 2b
rezpegaldesleukin:REZOLVE-AA(円形脱毛症)

対象:重度〜最重度円形脱毛症(成人、SALT≧50%)

作用:IL-2R 経路による Treg 拡大を通じた自己免疫制御

進捗:約90例規模で登録完了。36週誘導パートの主要評価(SALT%変化)に向けてフォロー中
規制:2025年7月に 12歳以上対象でFast Track 指定取得
次読出し:2025年Q4 にトップライン想定(その後のレジストレーショナル・プログラム設計の土台)

Phase 2/3 ほか(オンコロジー)
NKTR-255(IL-15R アゴニスト)

対象:CD19 CAR-T 後の再発/難治LBCL、局所進行NSCLC、膀胱がん 等

作用:IL-15Rα/IL-2Rβγ複合体を介して NK 細胞・CD8+メモリーT細胞を増強し、CAR-T や抗PD-1/ADCC抗体とのシナジーを狙う

進捗:Phase 1/2 試験で安全性と免疫活性を確認済み、LBCL では CR 持続率改善のシグナルあり
レジメン:CAR-T 投与後+14日から最大5か月間の反復静注など、アジュバント的ポジションで検証中
次読出し:ASH/ASCO/ESMO などでの継続アップデートに加え、2027年〜に主要試験の長期アウトカムが集約してくるレンジ

CAR-T / ICI / ADCC抗体との「バックボーン免疫賦活薬」として位置付け

パイプライン早見表
パイプライン 対象 臨床フェーズ 規制デザイン 安全性(AESI) 用法・用量 / 併用戦略 市場規模イメージ ポイント(市場評価)
rezpegaldesleukin(REZOLVE-AD) 中等症〜重症アトピー性皮膚炎(成人・12歳以上) Phase 2b 完了 → Phase 3 計画 誘導16週+維持52週の二部構成。Fast Track 指定済みで EoP2 後に登録試験へ これまでの試験で重篤な免疫毒性は目立たず。感染症・悪性腫瘍等の長期安全性は52週データで確認中 自己投与可能な皮下注レジメン(24µg/kg q2w が Phase 3 候補)。将来的に他の生物学的製剤・JAK阻害薬とのシーケンス/併用を議論 大:AD一市場だけでも数十億ドル級ポテンシャル EASI/かゆみで競合と同等〜一部差別化の可能性。
Fast Track+Treg 機序の“新しい生物学”としてバリュー再評価中
rezpegaldesleukin(REZOLVE-AA) 重度〜最重度円形脱毛症(SALT≧50%) Phase 2b 36週誘導の PoC Phase 2b(Fast Track)。結果次第でレジストレーショナル intent のPhase 3 へ JAK阻害薬とは異なる免疫調整機序。長期投与時の感染・悪性腫瘍・自己免疫変調を重点監視 皮下注自己投与を想定。JAK阻害薬不耐/不応患者での単剤、あるいは減量・維持療法としてのポジションが検討対象 中〜大:既存JAK市場に追加するメカニズムとして拡張余地 2025年Q4 の Phase 2b トップラインが評価の分岐点。
ADと同一分子でラベル拡張できればプラットフォーム価値が上乗せ
rezpegaldesleukin(T1D TrialNet) 新規発症1型糖尿病(Stage 3、成人・小児) Phase 2 TrialNet 主導の二群無作為化二重盲検 P2。約70例で安全性とβ細胞機能温存効果を探索 小児を含むため感染症・膵炎・重度低血糖などを広くモニタリング 皮下注投与。インスリン療法に上乗せする免疫調整薬として位置付け 大:T1D 初期介入市場(予防〜進行抑制) 長期テーマ。
自己免疫プラットフォームとしての“横展開”を投資家に示すポジショニング
NKTR-255(IL-15Rアゴニスト) LBCL(CD19 CAR-T後)、NSCLC、膀胱がん など Phase 1/2 + Phase 2/3 CAR-T/ICI/ADCC抗体との併用試験群。LBCL ではアジュバント的にCR率/持続の改善を狙う Phase 2/3 デザイン クラス留意:血球減少、サイトカイン変動。これまでのデータでは CRS/ICANS の顕著な増加は報告されておらず、骨髄抑制を中心に監視 静注反復投与。CD19 CAR-T や durvalumab、cetuximab など既存製品の“バックボーン強化剤”として開発 中〜大:既存CAR-T/ICI市場にレバレッジをかける付加価値戦略 パートナー試験が中心で、成功時はロイヤリティ+マイルストン型の価値創出。
オンコロジー面でのアップサイド・オプションと捉えられている
NKTR-0165 / 0166 / 422 ほか TNFR2経路を標的とする自己免疫疾患、造血・炎症性疾患 等 前臨床 IND 申請に向けた GLP 毒性・候補選定段階。2026年以降の First-in-Human を視野 TNF/TNFR2 軸に固有のリスク(感染症・悪性腫瘍シグナル)や造血系への影響を非臨床段階で精査 経路選択的な免疫制御薬として、将来的には rezpegaldesleukin と補完関係を構築し得るポジション 中:自己免疫・炎症市場の拡張オプション 現時点ではバリューは織り込み軽微だが、IND受理や初期安全性データが出ればストーリーの“第2波”として注目

ポイント
  • コアは Treg バイオ・プラットフォーム:rezpegaldesleukin が AD / AA / T1D をまたぐ自己免疫プラットフォームとして位置付けられ、AD・AA ではいずれも Fast Track 指定済み。中核資産が 100% 自社保有である点もエクイティ・ストーリー上の強み。
  • 自己免疫+オンコロジーの二本柱:自己免疫は rezpeg、オンコロジーは NKTR-255 を軸とし、前臨床の TNFR2/CSF プログラムが後続を形成。オンコロは“レバレッジ付きオプション”、自己免疫は“土台となるコア事業”という役割分担。
  • 財務余力:Q3’25 時点で現金等およそ 2.7億ドルを保有。現在の R&D/SG&A 水準を前提にすると2027年頃までのランウェイがあり、rezpeg の Phase 3 着手までは自力+パートナーシップで走り切れる設計。

ファンドのポジション

直近の決算説明や公開されている大株主情報を見る限り、現時点の株主構成はインデックス連動型ETFや汎用株式ファンドがベースとなりつつ、皮膚科/自己免疫テーマにフォーカスした専門ファンドが増えつつある段階と考えられます。今後のポイントとしては、① rezpeg のPhase 3 進捗に合わせた中長期ファンドの新規参入や買い増し、② NKTR-255 データ更新後のオンコロジー特化ファンドの動き、③ 経営陣・取締役会メンバーによるインサイダー買いなどが中長期の信認指標になり得ます。

開発ロードマップ
完了:2025年Q2

REZOLVE-AD Phase 2b 誘導16週トップライン

中等症〜重症ADで主要・主要副次評価項目を達成。Treg バイオとしての PoC を確立し、株価も大きくリレーティング。

完了:2025年Q3

AD/AA に対する Fast Track 指定

2月にAD、7月にAAで Fast Track を取得。レジストレーショナル・プログラムに向けた FDA との早期エンゲージメントが可能に。

2025年Q4

REZOLVE-AA Phase 2b トップライン

SALT スコアの変化量・寛解率・安全性を評価。rezpeg が JAK 以外の新機序としてどこまで存在感を出せるかの最初の“試金石”。

2026年Q1

REZOLVE-AD 52週維持データ

長期有効性と安全性を確認しつつ、EoP2 ミーティングで Phase 3 デザイン(用量・期間・患者背景)を FDA と擦り合わせるフェーズ。

2026年Q2〜

AD/AA Phase 3 着手 & NKTR-255 中期データ

AD で少なくとも1本の Phase 3 が立ち上がる想定。AA でも結果次第でレジストレーショナル試験へ。並行してNKTR-255のLBCL/NSCLC等から中期アウトカムが蓄積し、オンコロジー価値の上振れ余地を検証していく。

注目すべきカタリスト
短期(〜2025年Q4)
REZOLVE-AA Phase 2b トップライン(円形脱毛症)/rezpeg の皮膚科プラットフォーム評価の第2弾。NKTR-255 の学会(ASH/ASCO 等)での追加データ更新も随時。

中期(2026年Q1〜Q4)
REZOLVE-AD 52週維持データ → End-of-Phase 2 ミーティング → AD Phase 3 開始。AA の次ステップ(Phase 3 か追加PoC)の開示、TrialNet T1D 試験の登録・初期シグナルもフォロー。

長期(2027年〜)
rezpeg の Phase 3 読み出し〜承認レンジ(最も楽観的でも 2028〜2029年想定)、NKTR-255 の主要試験アウトカム、TNFR2/CSF 系のIND入りと初期安全性データなど、第2・第3の波となる開発イベント。